いまや東京の街中では見かけることが少なくなった「コーナーポール」。ドライバーから遠く見えづらいボディ前端のコーナー部の位置を把握するために、フロントバンパーに装着する棒(バー)状の装着品だ。
過去には高級セダンを中心に見かけたものだが、「運転サポート用品」として、たとえ細々ではあっても高齢ドライバーなどに意味のある装備として設定され続けている。
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かつては身近に思えた「コーナーポール」について、いまはどうなっているのか探ってみた。
文/岩尾信哉
写真/トヨタ、日産、ホンダ、スバル、マツダ、三菱、ダイハツ、スズキ、ベストカーweb編集部
[gallink]
■見かけなくなったコーナーポール
かつて高級車にも装着されていたコーナーポール(写真はメルセデス・ベンツ560SEL)
改めて街中の交通量の多い大通りに行き交うクルマのコーナーポールの装着車を、数日にわたってチェックしてみた。想像通りその数はごくわずか。2代目プリウスとエスティマ、タクシーの2台を発見した。どちらもジャパンタクシーで1台は純正品を、もう1台はフロントバンパーに斜めに装着された後付けのコーナーポールが設置されていた。他には日産のNV200バネットやタウンエースといった商用ワゴンを見かけた。
コーナーポールはボンネットの長い中大型セダンに設置されているというイメージがあった。「下手くそ棒」というなんとも品の良くない呼び名を耳にしたことがあるかもしれない。
いっぽうで、運転に慣れていないユーザーが多いせいか、軽自動車やコンパクトカーにも装着されていた印象もあった。現実には、メーカーで純正ディーラーオプションとして現在も設定されていても、都会では路上で見かける機会は少なくなったように思える。
日本メーカーのコーナーポールの設定は2010年代以降から減少し始めたようで、現行モデルからひとつ前の世代あたりから急速に減少してきたようだ。
減少したいくつか理由として考えられるのは。コンパクトカーや軽自動車のフロント部分では、オーバーハングを削り取って角を取ったデザインが施されるように変化してきたこと(取り付けにくくもなったはず)。
技術面でもフロントバンパーなどに装着される超音波ソナーを用いたコーナーセンサーの採用が広がったこと。さらにCCDカメラから得られる画像を合成してモニターに車両周辺の状況を映し出す、いわばアラウンド(ルーフトップ)ビューモニターが普及し始めたことも影響しているだろう。
販売面でも、過去のクラウンなどのセダン系からミニバン、クロスオーバーSUVへとマーケットの主流となる車種が流動していくにつれて、採用が減少していったことは容易に想像がつく。
それでも今でも軽自動車にはしぶとくディーラーオプションとして設定され続けていることを考えると、地方で日常の足として使う高齢ユーザーの需要がまだ残されていて、これを無視できないという事情が想像される。
コーナーポールの本体価格は純正品では1万~2万円超ほど、工賃は5000円超といったところだ。ちなみに、アフターマーケットでは価格の安い(1000円程度から)伸縮しない固定型で本体先端に夜間に光る装置を与えたような製品があり、両面テープなどを使って自前で設置すればもっと安く装着できる、ということになる。
■部品メーカーに聞いてみた
ここからは国内メーカーはいうにおよばず、輸入車インポーターにもコーナーポールを供給している部品メーカーである日本技研工業にコーナーポールのビジネスの現状について訊くことにした。
筆者が見かけた数と共通するように、やはり販売数はトヨタがトップを占めているようで、輸入車ブランドへの納入量もここ数年で少量になってしまったようだ。
コーナーポールの生産量は各種センサーの導入により減少傾向にあると想像されるので、実際の数字の変化などを知りたかったのだが、同社によれば、
「古いデータが存在しないため、ここ10年程度の傾向となる前提では、2015~2020年でおよそ3分1程度に数量は減少しています。センサーの普及により、バンパー内の構造物が増え、物理的に搭載が困難になったことも要因です」としている。
それではコーナーポールが採用されている車種について、現在最も利用が多いのは、どのようなボディ形状の車種なのかと訊ねると、「長年愛用頂いている年齢の高い方のニーズと運転に不慣れな方(初心者)のニーズが現在もあり、セダンとコンパクトカーユーザーのご利用が多いです」との回答が返ってきた。
気になる純正品の価格については、固定式、電動式または手動式の伸縮タイプ、スモールランプと連動して先端が発光するLED式あるいは自光式などがあるが、価格には車種などによって幅があるのだろうか。
これに対して「自動車メーカーの設定価格は弊社ではデータを制作していないため不明」と前置きされたうえで「基本的に同じタイプ(電動式、手動式等)のポールであれば車種による大きな違いはありませんが、クルマの大きさでハーネス類の長さが変わることなどで価格が変わってきます」とのことだった。
■トヨタ、日産、ホンダ、3社それぞれの思惑
それでは基本的にメーカー純正のディーラーオプション品として設定される「コーナーポール」を、日本メーカーが現状でどのようなモデルに採用しているのか調べてみた。なお、ここで取り上げるのは現行車種の純正ディーラーで取り扱われている製品であることを断っておく。ちなみに、各国内メーカーの呼称は以下の通りで、日本技研工業の呼び名でもある「コーナーポール」と呼ぶ例が多い。
・トヨタ(レクサス)/フェンダーランプ
・日産/ネオンコントロール
・ホンダ/コーナーポール
・スバル/フェンダーコントロール
・マツダ/コーナーガイド
・三菱/コーナーポール
・スズキ/コーナーポール
・ダイハツ/コーナーコントロール
●トヨタ
トップメーカーとして、トヨタはラインナップの多さからコーナーポールの採用車種の数も必然的に多くなる。メインとなるセダン系モデルにはしっかりと設定されている。ボディタイプへの配慮とともに、流行した時代を反映しているともいえ、いかにもトヨタらしく、顧客の嗜好をきちんと見極めた採用設定といえる。
トヨタ・ヤリスクロス。フェンダーランプは手動調整可能としてスモールランプに連動して先端がブルーに点灯する
●コーナーポール設定車種
・パッソ、シエンタ、ルーミー、ノア、ヴォクシー、エスクァイア
・カローラ(旧型セダンのアクシオを含む)、プリウス、カムリ、クラウン、センチュリー
・ヤリスクロス、ライズ、プロボックス、サクシード、ジャパンタクシー
●コーナーポール未設定車種
・アクア、ヤリス、ミライ
・アルファード、ヴェルファイア、ハイエース、グランエース
・C-HR、カローラクロス、ハリアー、RAV4、ハイラックス、ランドクルーザープラド、ランドクルーザー
・GR86、GRスープラ
最近発表された車種から見ていくと、ライズやヤリスクロスには設定があっても、後者のベースといえるヤリスにはなく、同じコンパクトカーのアクアは未採用だ。
従来車種では小型ミニバンとセダン系にはしっかり残されているいっぽうで、アルファード、ヴェルファイアといった大型のミニバンやクロスオーバーのカローラクロス、SUV、スポーツ系モデル車種には設定していないのは、トヨタのデザイン性にも配慮した微妙なさじ加減といえる。
特殊なのはタクシー専用モデルのジャパンタクシーで、タクシー車両では事業所、個人ユーザーの要望を取り入れる許容範囲は広いから、過去からの「伝統」とともに採用は残っているのだろう。
ちなみに、これも特注車両といえるセンチュリーだけは呼称が異なり「フェンダーポール」と呼ばれているのは過去の経緯が想像されておもしろい。
トヨタジャパンタクシー。タクシー専用車両として需要が見込まれる
トヨタセンチュリー。手動伸縮式のフェンダーポールは他のトヨタ車とは異なる呼び名をもつ。価格は3万2000円(税別)
●レクサス
プレミアムブランドを謳うレクサスでは、さすがに公用/社用車のニーズがあるLSには当然ながら設定されているが、セダン系のESとIS、クーペのLCやRC、クロスオーバーSUVのUX、NX、RXには用意されておらず、レクサスのエントリーモデルであるCTに設定が残されているのは、あくまで世代の古さの影響と思われる。
レクサスLS。LEDを採用する固定式フェンダーランプ。価格は2万6000円(税別)
設定がないモデルをピックアップすると、おもしろいのはミライには設定がなく、SUV系として、ボディサイズの小さい順から、C-HR、ハリアー、RAV4のクロスオーバーから、ハイラックス、ランドクルーザープラド、ランドクルーザー、ワンボックスのハイエースとグランエースには設定されていない。さらにスポーツ系のGRシリーズのコペン、ヤリス、86、スープラも未設定となる。
●日産
日産はどうやら日産は新規導入車種にコーナーポールを設定する可能性は低いようだ。リーフにしてもモデルチェンジを控えており、設定車種から外れる可能性が高いとみてよいだろう。
日産リーフ。世代の古さからか、数少ないネオンコントロールの設定車種となる。パワースイッチONで連動する
●コーナーポール設定車種
・マーチ、リーフ、シーマ、フーガ、NV200バネット、ルークス、デイズ
●コーナーポール未設定車種
・ノート、オーラ、アリア、スカイライン、セレナ、エルグランド
・エクストレイル、キックス、キャラバン(NV350)
・GT-R、フェアレディZ
同じ電気自動車であっても新世代のアリアに設定はなく、現状でリーフには設定されている。発表時期が関わっているのか、モデルチェンジしたノートにも設定がないように減少傾向が明らかだ。
対して、モデルチェンジから11年を経て旧世代といえるマーチには設定され、商用ベースのNV200バネットには設定があった。いっぽうで軽自動車には抜かりなく設定している。
日産デイズ。軽自動車としてネオンコントロールを設定。日産は基本的に電動格納式を採用するがこちらは固定式
セダンは社用車のニーズがあるシーマとフーガには設定されても、スカイラインには設定されておらず、GT-RやZ、エクストレイルといったスポーツ系やSUVモデルには未設定だ。
日産シーマ。大型セダンとして公用・社用車としてニーズに対応して設定されている模様
●ホンダ
ホンダは車種毎に明確にコーナーポールの設定が施されている印象が強い。軽自動車のNシリーズを除けば、普通車では近い時期に設定が消滅する気配が感じられる。
ホンダアコード。コーナーポールはホンダのセダン系モデルでは唯一の設定となる。固定型の手動伸縮式
●コーナーポール設定車種
・アコード、ステップワゴン、N-BOX、N-WGN、N-ONE
●コーナーポール未設定車種
・フィット、フリード、シャトル、ホンダe
・シビック、インサイト、レジェンド
・オデッセイ、ヴェゼル、CR-V
・N-VAN、S660
・NSX
ミニバンやSUV系で唯一コーナーポールを設定しているモデルが、モデルチェンジが近々予想されるステップワゴン。その他のフリード、シャトル、オデッセイやクロスオーバーSUVのヴェゼル、CR-Vには未設定となっている。
セダンタイプではアコードには設定されていても、レジェンドやシビックやインサイトにはなかった。軽自動車ではNシリーズにはほぼすべて設定されているのだが、なぜかN-VANに設定されていない。
当然ながら、NSXや軽自動車のS660、には未設定。角張ったスタイリングで見通しが利くせいか、ホンダeには用意されない。
ホンダ N-WGN。ホンダは軽自動車にはN-VANを除いてすべての車種に設定
■ 軽自動車にはまだまだ必要!?
他の日本メーカーの各社を辿ってみると、やはり設定の見直しが進んでいるようで、各社でOEM供給されている軽自動車を除いて、設定例は数少なくなっている。
スバルは過去には設定されていたが、現在ではOE供給の軽自動車を除くモデルではすべて未設定となったようだ。マツダはコンパクトクラスのマツダ2のみに「コーナーガイド」が設定されている。
三菱ではeKシリーズなどの軽自動車やミラージュといったコンパクトカーにはコーナーポールの設定があるいっぽうで、エクリプスクロス以外に普通車には設定されていなかった。
マツダ2。コンパクトカーとして、マツダの普通車で唯一のコーナーガイドを設定
三菱エクリプスクロス。数少ないコーナーポールの採用車種。ポジションランプに連動してLEDが点灯する手動伸縮式を用意している
軽自動車を販売の主力とするスズキとダイハツを見ると、スズキではコーナーポールは普通車と軽自動車はすべて設定が見られたが、ジムニーのみには設定がなかった。
同社広報に訊いてみても明確な理由まで辿り着けなかったが、スクエアで見通しのよいスタイリングゆえなのか、それともコーナーセンサーの導入など機能面でのこだわりなのか、機会があれば開発エンジニアに訊いてみたい。
N-BOXのコーナーポール。あればあったで重宝する
スズキワゴンRスマイル。唯一ジムニーを除いてスズキはほぼすべての軽自動車にコーナーポールを設定
対してダイハツは普通車のロッキーやキャスト、軽自動車には設定しているが、リギッドなデザインへの配慮かタフトにはなく、スポーツモデルのコペンも未設定となる。
ダイハツミライース。ダイハツはタフトを除いて、軽自動車のすべてにコーナーコントロールを用意
■輸入車は? BMWとメルセデスにはまだ生存!
ここからは輸入車ブランドについて、ドイツの3大メーカーのコーナーポールへの対応の概要をまとめておく。
●BMW
調べを進めると、輸入車ブランドではコーナーポールの設定が多いのはBMWだ。同社では「ラインコントロール」と呼ばれ、汎用品的に用意されているようだが、取り付け可能かどうかは、ディーラーなどに問い合わせてみるべきだろう。
●コーナーポール設定車種
・3、5、7シリーズ(M系を除く)
・2シリーズ・クーペ、グランクーペ、アクティブツアラー、グランツアラー
・4シリーズ・クーペ(カブリオレ)、グランクーペ
・X1、X2、X3、X5、X6
●コーナーポール未設定車種
・i3、1シリーズ、6シリーズ・グランツーリスモ
・8シリーズ・クーペ(カブリオレ)、グランクーペ
・X4、X7
・Z4
※最新車種のi3X、i4、iXについては未確認
BMW7シリーズ。BMWはセダンを中心にモデル展開した経緯もあって、7シリーズにもラインコントロール(コーナーポールの呼び名)を設定している
基本となるボディ形状やモデル世代の新旧の差の影響が出ているようで、スペシャルティクーペに設定がないのは当然と言え、SUV系も将来モデルチェンジが実施されれば設定が見送られる可能性もある。なお、ミニについては3ドアと5ドアに設定されている。
●メルセデス・ベンツ
メルセデス・ベンツではコーナーポールと呼ばれ、ラインナップの基幹車種であるセダン系モデルにはスリーポインテッドスターの付いた固定式のオプション設定がある。
●コーナーポール設定車種
・Aクラス・セダン、Bクラス、Eクラス・セダン(ステーションワゴン)、Sクラス
・CLA、GLA、GLB、GLE
・メルセデス・マイバッハ
●コーナーポール未設定車種
・Aクラス、Cクラス(ステーションワゴン)、CLAシューティングブレーク
・Eクラス・クーペ(カブリオレ)
・CLS
・Vクラス
・Gクラス
・GT、EQA、EQC
・メルセデスAMG各モデル
メルセデス・ベンツ。固定式のスリーポインテッドスター付きのコーナーポール
メルセデスの新しいモデルでは、たとえばGL系モデルでも、GLEには設定があるが、世代の新しいGLSなどではないなど、新旧世代の違いが影響している。
最後に加えておくと、フォルクスワーゲン/アウディでは、過去には設定があったコーナーポールは、最近登場した車両では基本的にすべて未設定となっている。
■コーナーポールはそれでも生き残る?
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最後にまとめておくと、各日本メーカーや主力の輸入車ブランドでも、最近の新型車では設定されないケースが増えているのは、デザイン上の制約などとともに、センサー類のコスト抑制などによる電子装備類の採用拡大が影響しているはずだ。
軽自動車では依然として設定されているのは、コーナーポールに慣れている高齢ドライバーや初心者が求めるケースなど、確実にニーズがあるからだ。
純正オプションの電動式製品などを自前で取り付けたいとしても、位置決めやバンパー部の加工やライトスイッチとの連動機構も施す必要があるから、ディーラーに依頼したほうが無難だろう。
純正品の設定がなくとも、前述のように量販店などでアフターパーツとして固定式コーナーポールの取り付けを依頼するのも方法のひとつだ。ただし、安全面の配慮として正確に視認できる位置を見定め、落下などを防止できるように設置できるかどうかにはくれぐれもご注意を!
このようにコーナーポールは、旧世代の古典的なパーツであっても、絶滅危惧部品と呼ぶのはまだまだ非礼というべきだ。今後設定が減少することは避けられないとはいえ、ユーザーのニーズがあればなんとかするといった、丁寧なディーラー対応のスタンスとともに生き残ってくれることを願いたい。
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みんなのコメント
だって毎日使ってるであろう車ですら、車幅やら理解してる人ほぼいないし。
コンパクトやミニバンや2t以下トラック(まあ他もいるがこの三つが特に多い)で道のど真ん中走ってイキってるじゃんw
挙句下手だから寄れない発言までする始末だからオワッテル。