欧州でリコールが多かった自動車ブランド
膨大な開発費をかけたにもかかわらず、消費者の手に渡るようになってから製品の欠陥が明らかになることも少なくない。開発現場やコンピューター・シミュレーションから離れた現実の世界で、いくつもの実例報告を経てリコールに至るのだ。
【画像】人気ながらもリコールに悩まされた自動車ブランド【欧州リコール発生件数の上位5社のモデルを写真で見る】 全96枚
欧州には「RAPEX(Rapid Exchange of Information System)」というシステムがあり、EU圏内で販売されるすべての製品について、安全上のリスクを指摘する活動を行っている。自動車もこの対象となり、問題が発見されリコールに発展すると、ほとんどの場合メーカーの費用負担で改善作業が行われる。
Car-Recalls.euというウェブサイトは、RAPEXのデータ解読を専門としており、欧州でリコールが多い自動車メーカーのリストも作成している。今回は、こちらを基に2022年に欧州で最もリコールが多かった30のブランドを取り上げる。
当然ながら、製品ラインナップが大きいブランドほどリコールの数も多くなるので、その点を考慮してご覧いただきたい。また、リコールは広範囲に及ぶことがあるため、対象車種をすべて挙げているわけではない。
30位:フェラーリ – 2車種で1件のリコール
フェラーリは2022年、488 GTB(写真)と458イタリアでリコールを実施した。これは、ブレーキフルードのリザーバーキャップの通気性と圧力に関するもので、ブレーキ能力の低下をもたらす可能性があった。
29位:ミニ – 4車種で1件のリコール
ミニは、コンバーチブル、カントリーマン(日本名:クロスオーバー)、クラブマン(写真)、クーパーに関するリコール1件を発表した。シートベルト・リトラクターの主要部品に不具合があり、拘束機能が損なわれ、事故発生時に傷害を負う危険性が高まるおそれがあった。
28位:テスラ – 3車種で2件のリコール
テスラはまず、モデル3とモデルS(写真)に関するリコール1件を発表。高速走行時にボンネットラッチが損傷し、ボンネットが開いてドライバーの視界が妨げられるおそれがあった。また、モデルYでは、サスペンションアームがステアリングナックルから外れ、制御不能に陥るおそれがあったため、こちらもリコールを実施した。
27位:ポルシェ – 3車種で2件のリコール
2021年モデルから2022年モデルのポルシェ911(写真)は、シートベルトに不具合があり、事故発生時に固定具が外れる可能性があるとしてリコールを実施。2020年モデルのカイエンとタイカンは、リアアクスルに不具合があり、タイヤが不均等に磨耗するためリコールとなった。
26位:レクサス – 4車種で2件のリコール
レクサスは、IS、GS(写真)、RCで、燃料タンクに取り付ける燃料蒸発ガス排出抑制装置のケース形状が不適切なため、燃料漏れが発生するおそれがあるとしてリコール。NXでは、ショックアブソーバ周辺のスポット溶接の欠落が見つかり、ボディパネルにクランクや破断が生じる可能性があるとしてリコールを発表した。
25位:ジープ – 4車種で2件のリコール
2020~2021年モデルのジープ・コンパス(写真)では、運転席と助手席のエアバッグに関する安全性の問題で、さらにグランドチェロキーでは、運転席、助手席、ニーエアバッグの機能を停止させる可能性のあるソフトウェア不良が原因でリコールに至った。
24位:ジャガー – 4車種で2件のリコール
ジャガーは、2022年モデルのFタイプ(写真)、XE、Fペイス、XFについて、衝突時にシートベルトのプリテンションが完全に失われるおそれがあるとして、リコールを届け出た。対象となるのは、2022年1月から3月までに製造された車両。2007年~2018年のジャガーXFは、エアバッグの素材が経年劣化し、金属片がドライバーに当たる可能性があるためリコールとなった。
23位:ホンダ – 4車種で2件のリコール
2005~2014年モデルのシビック(写真)とアコードは、ドライブシャフトの組み付けが不適切な車両があり、強いトルクがかかると折れる恐れがあるとしてリコールを発令した。パイロットとリッジラインは、高速走行時にボンネットが開くおそれがあるとしてリコール。
22位:スズキ – 5車種で2件のリコール
スイフト、イグニスにおいて、12Vのプラスケーブルがショートして出火するおそれがあるとしてリコール。また、2015~2022年モデルのスイフトとバレーノ(写真)については、ブレーキシステムに問題があるとしてリコールを実施した。
21位:ボルボ – 10車種で2件のリコール
ボルボは、内燃機関が始動しないという不具合で、XC90、XC60、V90、S90/S90 L、V60、S60の各車種を対象にリコールを実施した。XC40リチャージ(写真)は、アクセルペダルのケーブルが損傷して意図しない加速につながるとして、2100台以上がリコールされた。
20位:ダッジ – 2車種で3件のリコール
デュランゴ(写真)は、走行中にリアスポイラーが外れる恐れがあるとして、1件のリコールを実施。ラム・トラックでは2件のリコールがあった。1件目は、ホイールナットの締め付けが不適切なため、ホイールが外れる可能性があるというもの。もう1つは、サイドエアバッグの劣化によるものだ。
19位:ルノー – 3車種で3件のリコール
ルノー・アルカナ(写真)は、2019年から2021年に製造されたモデルで、ステアリング・マネジメント・アシストの不具合でリコールとなった。商用車のマスターは、燃料噴射装置の不具合に起因するエンジンルーム内の燃料漏れのリスクによりリコール。EVのゾエは、充電サイクル中の短絡の問題からリコールを実施した。
18位:マセラティ – 4車種で3件のリコール
マセラティは、ギブリ(写真)とレヴァンテについて、燃料パイプ内の圧力・温度センサーの漏れによる燃焼の危険性があるとして、1件のリコールを届け出た。また、レヴァンテのMHEVモデルについては、モーターの電気的不具合により火花が発生し、焦げ臭いにおいがするとしてリコールとなった。
17位:スコダ – 4車種で3件のリコール
2021年モデルのファビア(写真)は、右後部座席背もたれの溶接が不適切だったためリコール。コディアックとオクタビアでは、エンジンカバーの一部が激しい運転操作で緩むことが判明し、リコールとなった。
オクタビアではもう1件リコールが発表された。2019年1月1日から2022年2月28日の間に製造されたモデルで、ヒューズに不具合があり、電気火災につながる可能性があった。
16位:セアト – 5車種で3件のリコール
セアトの数字には、ブランドとして独立したばかりのクプラの車両も含まれている。レオン(写真)とタラッコは、ヒューズの不具合に起因する火災リスクによりリコールを実施。また、タラッコとクプラ・アテカは、兄弟車のスコダ(既述)と同様に、激しい運転操作でエンジンカバーが緩み、火災の危険があるとしてリコールした。また、レオンでは、事故発生時にラゲッジルーム内の荷物が過度に移動するとしてリコールとなった。
15位:フィアット – 4車種で5件のリコール
500ハイブリッド(写真)は、補助バッテリー周辺の火災の危険性によりリコール。また、標準の500もステアリング機構に不具合があるとしてリコールを実施した。商用車のデュカトはサイドマーカーランプの不具合でリコール、2021年3月27日から11月22日に製造されたモデルが対象となる。
スクードは、バッテリーに接続されるケーブルに不具合があるためリコールに。ティーポは、ホイールリムに欠陥があることが判明し、その後リコールとなった。
14位:アウディ – 12車種で5件のリコール
2019年から2021年に製造されたA5、A6、A7、A8、Q5、Q7、Q8、eトロンは、リアアクスルに不具合があり、タイヤが不均等に摩耗するとしてリコールとなった。TTとQ3(写真)は、一部のエンジンカバーが激しい運転操作で緩むことが判明したため、リコールを実施した。
A3 eトロンとQ3 eトロンは、ショートして火災に至る危険性があるためリコールに。A3/RS3は、前席のシートベルトの拘束具に問題があるとしてリコールとなった。
13位:ヒョンデ:7車種で6件のリコール
ヒョンデ・ジェネシスは電子制御ユニットの不具合でリコールを実施。旧型のアイオニック(2016~2019年に製造)は、加速とパワーの問題でリコール。新型のアイオニック(写真)は、パーキングブレーキの問題でリコールとなった。また、i10とi30ではシートベルトテンショナーの不具合でリコールが必要となった。
iX35とサンタフェは、アンチロックブレーキシステムの不具合でリコールに。コナも燃料フィルターの不具合でリコールを余儀なくされた。
12位:マツダ – 9車種で6件のリコール
マツダ2、3(2015年および2018~2019年モデル)、6、CX-3、CX-5は、燃料ポンプの問題によりリコールとなった。マツダ3では、燃料タンクと燃料噴射装置の不具合に関する2件のリコールを実施。マツダ5(2005~2010年モデル、写真)は助手席エアバッグの不具合で、CX-5はブレーキの不具合でリコール。
11位:ランドローバー – 4車種で7件のリコール
ランドローバー・ディフェンダーは、アクスルの不具合とシートベルト・プリテンショナーの不具合で、2回のリコールを実施した。ディスカバリーとディスカバリー・スポーツ(写真)は、運転席側エアバッグの不具合、燃料ホースの漏れ、フロントシートベルト・プリテンショナーの不具合に起因する3件のリコールがあった。
レンジローバー・スポーツとレンジローバー・ヴェラールもプリテンショナーの問題が発生し、リコールに。レンジローバー(2020~2022年に製造)も、パティキュレートフィルターの不具合や衝突センサーの取り付けミスにより、リコールとなった。
10位:キア – 7車種で7件のリコール
キアは、フロントシートベルト・テンショナーの不具合により、クロスシード、ソレント、プロシード、シードをリコールすることになった。EV6は電動パーキングブレーキに不具合がある可能性があるとしてリコール。また、ソレントはトランスミッションの不具合、ワイヤーハーネスの問題、燃料漏れのためリコールとなった。ソウル(ICE、EV)は、前面衝突センサーの不具合でリコールに。
9位:DSオートモビルズ – 3車種で8件のリコール
DS 3は排出ガスの問題とバッテリーの短絡問題でリコール。DS 4は、エアバッグの装着不良と、牽引時に牽引フックが外れる可能性があり、リコールに。DS 7は、タイヤの非常な摩耗、排ガスに関するソフトウェアの不具合、バッテリー電圧の不具合で複数のリコールが発生した。
8位:BMW – 12車種で8件のリコール
ミニと同様、BMWもグランツアラー、3シリーズ、M3、X1、X2、i3、i4について、シートベルト・リトラクターの部品に不具合があり、拘束機能が損なわれる可能性があるとしてリコールを発表した。
また、アクティブ・ツアラーではドアに不具合があり、側面衝突時にドアが不本意に開くおそれがあるとのことでリコール。EVでは、i3、i4、i7(写真)、iXの各車種で高電圧バッテリーに不具合があるとしてリコールしている。
7位:フォード – 7車種で10件のリコール
フォードは、フォーカスのアクスル強度に問題があるとしてリコール。クーガはシートベルトの保持力に問題があり、リコールとなった。マスタング・マッハE(写真)では、ガラスルーフとフロントガラスの装着に関して2件のリコールを実施した。
レンジャーは、ステアリングコラム、リアサイレンサー、リアディファレンシャル、フロントアクスルの不具合で4件のリコールが発生。エベレストもフロントアクスルの不具合でリコールとなった。
6位:シトロエン – 10車種で11件のリコール
DSオートモビルズと同様、シトロエンはベルランゴ、C3、C4カクタス、C4ピカソ、C5エアクロス(写真)において、排出ガスの問題でリコールせざるを得なくなった。また、電圧の不具合で3車種、リアブレーキの不具合で2車種がリコールとなった。
その他、リアサスペンションの不具合、燃料ホースの漏れ、ウォーターヒーターの不具合、ドライブシャフトの不具合などでリコールが発生している。
5位:オペル/ヴォグゾール – 10車種で12件のリコール
オペル(英国ではヴォグゾールとして販売)は、サイドドア部品の不具合、エアバッグの不適切な装着、運転席エアバッグの不具合という3点で、アストラをリコールすることになった。カスケーダ(写真)、メリーバ、ザフィーラも運転席エアバッグの不具合でリコールとなった。
また、ザフィーラはリアブレーキに欠陥がある可能性があり(ヴィヴァーロにも影響)、配線電圧の問題にも悩まされた。モッカはフロントガラスワイパーの不具合で、シンシグニアはトラックロッドの劣化でリコールとなった。
4位:トヨタ – 10車種で14件のリコール
アイゴX(写真)では3件のリコールが出され、そのうち2件はブレーキの不具合によるものだった。C-HRとヤリスはレーダーセンサーの不具合で、RAV4はシートベルト・リトラクターの不具合で、それぞれリコールとなった。
プロエースは燃料パイプの破損、ECUのキャリブレーション不良、ウィンドウデフォッガー不良の3点でリコールとなった。ハイランダー、タンドラ、カムリでもリコールが発生した。
3位:フォルクスワーゲン – 12車種で14件のリコール
ポロ(写真)では、スポイラー、助手席・運転席エアバッグ、パノラマサンルーフの不具合により4件のリコールが発生した。Tロックは、激しい運転操作でエンジンカバーが外れる可能性があり、リコールとなった。パサートは複数のリコールに見舞われ、ゴルフ、クラフター、フォックス、キャディ、アルテオンでもリコールが実施された。
2位:プジョー – 10車種で15件のリコール
シトロエンと同様、プジョーも排出ガスのソフトウェアに不具合があり、308、2008、208、3008、5008を含むさまざまな車種がリコールに見舞われた。301(写真)はドライブシャフトの不具合でリコールとなった。
また、DSオートモビルズと同じく、プジョー308では牽引フックに不具合があり、リコールに。エキスパートは、燃料パイプやリアブレーキの不具合、リアウィンドウの過熱など5件の不具合が指摘され、リコールを実施した。
1位:メルセデス・ベンツ – 24車種で39件のリコール
Sクラスでは7件のリコールが発生したが、そのうち6件は最新世代モデル(写真)であった。メルセデス・ベンツは2022年、24車種で実に39件と、ラインナップ全体で複数のリコールが発生した。
2017年1月から2021年10月までに製造されたCクラス、Eクラス、Gクラス、Sクラス、ヴィト、Vクラス、CLS、GLC、GLE、GLSの約100万台で、エンジン火災に至るリスクがあるとしてリコールが実施された(2022年4月)。
また、2004年から2015年にかけて製造されたMLクラス、GLクラス、Rクラスの約100万台で、ブレーキの不具合があるとしてリコールが発生(2022年6月)。2017年から2020年にかけて製造されたスプリンターバン31万5000台も、ブレーキランプの不具合でリコールとなった。
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みんなのコメント
はたまた単純に不具合が多すぎる品質なのか。
車種が多いほうが圧倒的に不利じゃろ
1車種1件と、10車種10件だと後者がワーストだが
率なら同じだろ