【一周回ってマニアック】クルマ好き自動車ライターによる「妄想中古車選び」
掲載 carview! 文:伊達軍曹 18
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過日。メインで使っている現行型スバル「レヴォーグ STIスポーツ EX」のほかにもう1台、何か小ぶりで面白い車があれば、我が毎日は断トツに幸せになるのではないかと思考した。そのためプジョー「106」というフランス製コンパクトカーの中古車を某中古車情報サイトにて検索したわけだが、私はひと通りの検索を済ませた後、そっとMacBook Airを閉じた。
高すぎて買えないからである。
いや現在106の上物と思われる個体の相場は支払総額180万円ぐらいなので、その程度のカネであれば、私だって持ってはいる。ブタさん貯金箱をトンカチで破壊すれば、ギリギリなんとかなるのだ。

だが「ちょっと前までなら総額90万円も出せばけっこういいモノが買えたちっこい車」に180万円も出すのは業腹であるというか悔しいというか何というかであるため、私は購入を見送ったのだ。
このように今、中古車の相場はけっこうな勢いで上昇している。いや安いモノもあるのだが、さまざまな意味で「魅力的なやつ」の相場は、上がってしまっているのだ。
お金に関する感覚は人それぞれだろうが、私としては、中古車は「総額100万円ちょいぐらい」までの予算で買いたいと思っている。ギリギリの譲歩を見せたとしても「総額150万円以内」だ。
106の上物は総額100万円ちょいでは無理なことは判明したわけだが、ほかに何かないだろうか? 総額100万円ちょいで、いや150万円までなら出してもいいので、その範囲内で「走りも存在感もデザインもけっこう楽しめる車」はないものか……と長考に入ったところ、あった。いくつかの候補が見つかったのだ。
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ひとつはフィアット「500」のツインエアエンジン搭載車である。
ご承知のとおり500とは、往年の「ヌオーヴァ 500」のエッセンスを現代の世にリバイバルさせたイタリア製コンパクトハッチバック。1.2Lと1.4Lの直4エンジンは割とどうでもいい感じだが(すみません)、0.9L 2気筒ターボの「ツインエアエンジン」はかなりステキだ。
2気筒ならではのドコドコいうビート感は妙に動物的というか肉感的で、人間の根源にあるサムシングが刺激される。そしてその意外なパワーとトルクを炸裂させると、小さな500はかんしゃく玉を炸裂させたかのようなニュアンスですっ飛んでいく。
さらに「デュアロジック」というシングルクラッチ式のセミATは基本的にちょいギクシャクするのだが、ツインエアのそれはなぜかギクシャク感があまりない(軽量だからだろうか?)。
そんなこんなのツインエア系500の中古車は、最初の頃はそこそこ高かったのだが、今となっては、2011~13年式ぐらいのまあまあ好条件な中古車を総額100万円前後で狙える。走行距離だけが中古車のすべてではないが、2万km台ぐらいの低走行にこだわりたい場合でも、総額130万円ぐらいでイケるはずだ。
>>フィアット 500の中古車相場はこちらこの可愛くも活発なマシンであれば、夢と散った黄色い106の代役を十分以上に果たせるだろう。ボディカラーはブルーヴォラーレかミントグリーンが希望だが、ぜいたくは言うまい。コンディションさえ良ければ何だっていいです!
とはいえ、コストコでトイレットペーパーを買ったりIKEAで格安組み立て家具を買ったりすることを考えたら、もう少しだけボディサイズは大きいほうがいいのかもしれない。
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そうなると、候補は先代フォルクスワーゲン「ゴルフ」ということになるだろうか。そのなかでも「ゴルフ 7.5」と俗に呼ばれている、2017年5月に行われたマイナーチェンジ後の後期型であれば文句なしだ。
乗り心地やステアフィールなどはエリート感たっぷりの硬質なものであり、乾式7速DSGも(たぶん)問題ないはず。インテリアも、さほどおしゃれではないが、生真面目なエリートの執務スペースのような、かなり上質なものではある。
そんな先代ゴルフ 7.5の好条件車は、支払総額140万円~といったところ。私が私に課している「中古車を買うなら総額150万円まで!」というルールに抵触してしまいそうなため、一瞬「……ゴルフ7(マイチェン前の世代)でもいいかな?」と日和る自分はいる。
>>フォルクスワーゲン ゴルフの中古車相場はこちら「ゴルフ 7」であれば、かなりの好条件車を総額90万円という激安価格でも見つけることが可能、それに試乗してみて、内外装のコンディションとDSGに問題がないようであれば、それに決めてしまってもいいのかもしれない。まぁこのあたりは現場判断になるだろう。
しかしいかんせんゴルフには「街を走っている数が多すぎる」という問題がないではない。なんというかこう、もう少しだけ「孤高の存在」でありたいというか、人からそう見られたいと願っている、陳腐でチンケな自分がいることは否定できない。
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であるならば……まぁボルボだって十分メジャーすぎるわけだが、ゴルフよりはさすがにちょっとだけマイナーではあるという意味で、最終型「V40」で行くか?
できればディーゼルターボの「D4 SE」を探したいところだが、その好条件車は総額140万円~といったイメージで、自己ルールにギリギリ抵触しそうだ。その場合は泣く泣くガソリンターボの「T4 SE」を、総額80万円前後で探すことになるだろう。
>>ボルボ V40の中古車相場はこちらディーゼルターボほどではないが、これもまたなかなかよろしい車であり、「まさか90万円には見えない!」という車でもある。そして最新世代のボルボと違い、どこか土の香りがする旧世代のプラットフォームであることも、それはそれでひとつの味と言えるはず。何もシュッとしていてスムーズであることだけが、車の魅力ではないのである。
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しかしアレだ。自家用車をスバル車に替えてからというもの、輸入車にこだわることが馬鹿らしくなった――と言ってはやや言い過ぎだが、「無理に輸入車を選ぶ必要はないのでは?」とは確実に思っている筆者である。すべての国産車がそうだとは言わないが、一部の国産車は走りもデザインも素晴らしく、そしてあんまり壊れず、壊れたとしても、輸入車と比べれば部品代はベラボーに安いという美点がある。
……という観点で国産中古車を選ぶとしたら、「マツダ2」のディーゼルターボだろうか? あれは走らせてみてもいい車だし、内装のクオリティとセンスはハイレベルだし、燃費もいいということで、私にとってはほぼ文句なしのコンパクトカーである。
よし、マツダ2に決まりだ! と思ったわけだが、よく見るとけっこう高いな。いやベラボーに高いということもないのだが、好条件な中古車は総額150万円~というイメージだ。
ううむ、ならば中身もカタチもほとんど同じであるマツダ「デミオ」最終型のディーゼルターボエンジン搭載グレードで十分であろう。それであれば、けっこう好条件なXDツーリングを総額90万円前後で見つけることができる。
>>マツダ デミオの中古車相場はこちらまぁいろいろな部分において「マツダ2のほうがちょっとずついい」というのは確かなのだが、ぜいたくは敵であるというか、中古車選びは、賃貸住宅選びと同じで「あきらめが肝心」とも言える。限られた予算のなかで最大の満足を得るためには「こだわる箇所と、あきらめる箇所」を自分のなかで明確にしておく必要があるのだ。
とはいえ私もすでにけっこういい歳のおっさんである。デミオもいい車だし、「時代はダウンサイジング!」であることは間違いないのだが、もう少しこう立派に見える車に乗りたいという煩悩もあるのだ。
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そういった煩悩を優先させるのであれば、選ぶべきは同じくマツダの「アテンザ ワゴン」だろうか。失礼ながら今ひとつ人気薄な車種であるため、好条件な中古車でもけっこうお安いのである。具体的には、走行4万kmぐらいのXDを総額120万円前後で見つけることが可能だ。
>>マツダ アテンザ ワゴンの中古車相場はこちら「……レヴォーグとアテンザ ワゴン、2台のステーションワゴンを同時に所有して何をするつもりなんだ?」という個人的な大問題はあるが、一般論としては、総額100万円台前半のアテンザ ワゴン XDはかなり“おいしい中古車”である。
……などという中古車購入妄想さえしていれば、私はいくらでも時間をつぶすことができるので、待ち人がなかなか来ないときや、仕事の注文がゼロでヒマなときなどには大変便利なのである。
そして待ち人である河合くんは、まだ来ない。
<おわり>
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写真:ステランティス、フォルクスワーゲン、ボルボ、マツダ
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