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人気車と不人気車で格差も!? 新車のテコ入れ 各社の思惑は? メーカーで違う「狙い」と「頻度」

掲載 更新 5
人気車と不人気車で格差も!? 新車のテコ入れ 各社の思惑は? メーカーで違う「狙い」と「頻度」

 最近は各メーカーともに、環境技術や自動運転への対応を迫られている。その結果、新型車の開発に投入できるコストが以前に比べると相対的に下がった。車種数を抑えて、フルモデルチェンジをおこなう周期も延びている。デザインの進化は以前に比べて安定期に入り、外観の変化が乏しくなったことも影響している。

 そこで大切になるのがマイナーチェンジや特別仕様車の設定など、商品力を保つテコ入れだ。改善などを加えずに放置すれば、時間の経過に伴って魅力が下がり、売れ行きも低下していく。

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 逆に効果的なテコ入れを行うと、売れ行きを大幅に増やすことは無理でも、下降を抑えたり、若干のプラスに転じさせることは可能だ。

 定期的な改良で衝突被害軽減ブレーキなどの安全装備、運転支援機能、燃費などを向上させれば、フルモデルチェンジをしなくても売れ行きを保てる。このテコ入れ方法について、各メーカーの特徴を探りたい。

文/渡辺陽一郎
写真/TOYOTA、NISSAN、HONDA、MAZDA、SUBARU、MITSUBISHI、SUZUKI、DAIHATSU

【画像ギャラリー】特徴やコンセプトも見え隠れ!? テコ入れで探る各社の方向性

■多くの車種に改良施すトヨタと人気車集中の日産

2021年で発売から10年を数えるアクアながら、2019年に一部改良をおこなうなどこまめな改良で商品力を維持している

●トヨタ
 以前はテコ入れを行わない設計の古い車種も見られたが、最近の数年間で、ポルテ&スペイド、プレミオ&アリオン、マークX、エスティマ、プリウスαなどを廃止した。

 従って今では、もともとフルモデルチェンジの周期が長い悪路向けSUVのランドクルーザーや同プラド、商用車を除くと、発売から10年を超える車種はほとんど見られない。設計の古い車種を廃止して、新しい車種に専念することも、最近のトヨタのテコ入れ方法といえるだろう。

 それでもアクアは、2021年末に発売から10年を迎える。運転支援機能は装着されないが、衝突被害軽減ブレーキは追加された。残されたクルマには、相応の改良を行って商品力を維持している。

写真のセレナなど、設計の比較的新しい数車種の売れ行きによって日産の国内販売は支えられているといってもいい

●日産
 最近は全般的に設計の古い車種が増えた。特に2008年に発生したリーマンショックによる世界的な不況を受けて、2011年以降は新型車が減っている。

 その結果、設計の比較的新しい登録車のノート、セレナ、キックス、軽自動車のデイズとルークスの新車販売台数を合計すると、直近の2021年1~3月に国内で売られた日産車全体の73%に達する。実質的にこの5車が日産の国内販売を支えているわけだ。

 そのために残りの27%に含まれるほかの車種は、あまりテコ入れを受けていない。フーガの登録台数は月平均で約70台、シーマは10台くらいまで落ち込んだ。マーチは2010年の発売だが、衝突被害軽減ブレーキを装着したのは2020年だ。

 この安全装備は2015年頃には軽自動車やコンパクトカーまで普及していたから、マーチは対応が遅く売れ行きを下げた。今の登録台数は1000台弱だ。

 エルグランドは2010年に発売され、2016年頃までは比較的頻繁に改良を行って特別仕様車も設定したが、近年は滞りがちだ。それでも2020年になり、フロントマスクを変える改良を実施した。

 以上のように売れていない車種では改良も滞るが、販売の好調なデイズやルークスは、安全装備なども先進的だ。セレナも2016年の発売後、頻繁に改良を受けている。ノートとキックスは新型車になる。

 つまり売れ筋の5車はフルモデルチェンジを含めてテコ入れを活発に行うが、ほかの車種は冷淡に扱う。例外はGT-Rで、性能を常に高める必要があるスーパースポーツカーから、登録台数が少ない割には改良を頻繁に実施する。

■人気車以外にもテコ入れは活発なホンダ

2015年登場の現行型ステップワゴンは、当初未設定だったハイブリッド車を2017年の改良で設定(写真はスパーダ e:HEV)

●ホンダ
 以前のホンダはスポーツカーの印象が強かったが、今は「小さなクルマのメーカー」だ。国内で新車として売られるホンダ車の50%以上が軽自動車で、2021年4月に限れば57%に達した。そこにフィットとフリードの登録台数を加えると約80%になる。つまりほかの車種は、すべてを合計しても、国内販売比率は20%以下だ。

 売れ行きが下がった車種のテコ入れは入念とはいえないが、ステップワゴンは、エアロパーツを装着したスパーダに特化してハイブリッドのe:HEVを加えた。オデッセイも最近の売れ行きは1か月に1000台弱だが、2013年の発売以降、2~3年に一度の割合で改良を実施している。特別仕様車もある。

 つまりホンダの国内販売は、軽自動車+フィット+フリードに特化されてほかの車種は低調だが、その割にはテコ入れを比較的順調に行う。従って販売に積極的になれば、登録車の比率を高められる。

■少数精鋭ゆえ独自のテコ入れ策を採るマツダとスバル

2016年発表の現行CX-5は、2020年にディーゼルエンジンの出力アップなどパワートレーンに関わる改良を実施。マツダは毎年改良を加える独自の策で商品力を保つ

●マツダ
 2012年に発売された先代CX-5以降のマツダ車(OEMを除く)は、すべて魂動デザインとSKYACTIV技術に基づいて開発される。プラットフォームはボディサイズや車両重量、駆動方式の違いに基づいて複数のタイプを用意するが、基本的な考え方は共通だ。

 従って1車種が新しい機能を採用すると、それをほかの車種にも展開できる。このメリットを生かしてマツダ車はテコ入れを頻繁におこなう。

 例えばCX-5は、2016年12月に発表された後、2017年、2018年(2月と10月)、2019年、2020年に改良を実施した。2018年2月には、発売から約1年後なのに、クリーンディーゼルターボの動力性能を向上させる規模の大きな改良を行った。

 こうなると先に購入していたユーザーは不満を持ち「マツダ車はいつ買えば良いのか分からない」という話にもなる。

 それでも改善を頻繁に施すのは、ユーザーにとって大きなメリットだ。理想をいえば、CX-5は7月頃という具合に、テコ入れの時期をスケジュール化するとわかりやすい。後述するスバルでは、そのようなパターンになっている。

毎年ほぼ10月に改良を施すインプレッサ。2020年には写真の「STIスポーツ」を追加設定した

●スバル
 ほかのメーカーに比べてスバルは規模が小さく、国内の販売台数は、乗用車メーカー8社の中で7位だ。OEM車を除くとエンジンはすべて水平対向4気筒で、プラットフォームの種類も少ない。

 そのためにマツダと同様、新しいメカニズムが開発されると、ほかの車種にも採用しやすい。改良も頻繁に実施される。

 例えばインプレッサは、2016年10月に現行型を発表した後、2017年9月、2018年10月、2019年10月、2020年10月に改良を実施してきた。上記のとおり改良時期が10月でほぼ決まっているから、ユーザーや販売店もわかりやすい。「いつ買えば良いのか分からない」という不満が生じにくい。

 ちなみにスバルは以前から、大半の車種において、生産を終える直前まで改良を実施していた。マイナーチェンジでエンジンを載せ換えることも多い。この背景には、フルモデルチェンジの時にエンジンまで変更すると開発費用が高騰する事情もあるが、改良を頻繁におこなうから時間を経過しても売れ行きをあまり下げない。

 この綿密な商品改良は、車種の少ないスバルが生き残るための大切な戦略で、なおかつ車種が少ないからこそ成り立つ戦い方でもある。

■車種構成再構築の三菱と軽が主軸のスズキ、ダイハツは?

商品改良による販売面で効果の得られる車種が限られる三菱だが、写真のエクリプスクロスはPHEVを追加する大がかりなテコ入れも実施

●三菱
 今はOEM車を除くと車種が大幅に減った。車種構成を再構築している最中でもあり、改良も滞りがちだ。それでも三菱の登録車で登録台数の最も多いデリカD:5は、1~2年に一度は改良を行って特別仕様車も頻繁に設定する。

 逆にRVRやミラージュは滞りがちだ。今は三菱車の売れ行きが全般的に下がったから、商品改良によって販売面で効果の得られる車種も限られる。改良のために投資できるのは、デリカD:5、エクリプスクロスといった一部の売れ筋車種になるわけだ。アウトランダーはフルモデルチェンジが近付いた。

写真はスイフトHYBRID RS。直近では2020年5月に、安全装備の充実を中心とした仕様変更でテコ入れを実施

●スズキ
 軽自動車が中心のメーカーとされるが、2021年1~3月に国内で販売されたスズキ車のうち、20%近くを登録車が占めた。軽自動車需要の先行きがわかりにくいこともあり、今のスズキは登録車にも力を入れる。

 登録車の商品改良は車種により差がある。エスクードは2年に一度の割合で改良をおこない、スイフトも特別仕様車を定期的に設定するが、イグニスはあまりテコ入れされない。バレーノはほとんど手を付けられずに日本の販売を終えた。

 一方、軽自動車は、ジムニーや商用車を除くとエンジンやプラットフォームが基本的に共通だから、改良もおこないやすい。

 しかも薄利多売の商品だから、売れ行きが下がると成立しない。設計が最も古い車種でも、2014年に登場したアルトで、2021年にはフルモデルチェンジされる見込みだ。テコ入れも頻繁におこなわれ、最近は安全装備を充実させて、特別仕様車の追加も頻繁に行う。

ダイハツ車の中では設計が最も古いムーヴも2021年には刷新される見込み。古い設計のまま放置されている不人気車はない

●ダイハツ
 最近はスズキと同様に小型車にも力を入れるが、それでも2021年の販売比率は8%だから、軽自動車が圧倒的に多い。設計が最も古い軽自動車は2014年に登場したムーヴで、2021年には刷新される。極端に設計の古い不人気車はなく、テコ入れは相応におこなわれている。

 スズキと同様、特別仕様車を頻繁に投入して、売れ行きに弾みを付ける。特別仕様車は、価格の割安感をアピールしやすいため、軽自動車やコンパクトカーのテコ入れ方法としては特に優れた効果を期待できる。

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みんなのコメント

5件
  • 型が古くても売れる車も多いし、新型でも売れない車もある。

    要は「中身」とコスパ。 
  • 最近のダイハツは
    特別仕様車の設定頻度が増えたのって、
    相当焦ってるんでしょうね。

    モデル末期のテコ入れなウェイクはともかく、
    特にタフトはまだ発売して一年しか経ってないのに
    特別仕様車を出すのは異例。
    でもメッキギラギラで特別感を演出するのって、
    今度はトヨタの真似事だけどな。

    そうやって他の何かを取り入れようと必死だから
    いつになってもタフトは独自のキャラクターを
    見出だせないままなんだ。
※コメントは個人の見解であり、記事提供社と関係はありません。

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