成否を左右するネーミングセンス
自動車メーカーには、クルマに適切な名前を付けるための部署が存在する。ネーミングを間違えると、せっかくの良いクルマが失敗作になってしまうこともある。ネーミングはクルマのイメージを形成する上で重要な役割を担っているのだ。
【画像】意外と知らない車名の由来【トヨタRAV4、ポルシェ911などを写真で見る】 全125枚
例えば、フォルクスワーゲン・ゴルフの次世代モデルに、下品な侮辱に聞こえる名前を付けたら、現行モデルほどは売れないかもしれない。同様に、BMWが4シリーズに代わるモデルとして「シャルロッテ」という可愛らしい名前のクルマを発売するのは、ちょっと想像できないだろう。しかし、アルファ・ロメオのスポーツセダンには、「G20 t4 D」よりもジュリアがよく似合うのは間違いないだろう。
今回は、こうしたネーミングに隠された意味(特に意味がないこともある)を探ってみよう。
アルファ・ロメオ・ミト
アルファ・ロメオが2ドアの小型ハッチバック車に「ミト(MiTo)」という名前を選んだのには、2つの理由がある。
1つは、このクルマがイタリアの「ミラノ(Milano)」で開発され、「トリノ(Torino)」で組み立てられていることを示すもの。もう1つは、ミトという言葉がイタリア語で「神話」を意味するということ。いずれにしても、アルファ・ロメオがエントリーモデルとして大きな期待を寄せていたことは明らかだ。
アウディTT
アウディの「TT」は、毎年マン島で開催されるバイクレース、ツーリスト・トロフィー(TTレース)にちなんで名づけられた。ドイツ企業であるアウディは、TTレースへの参戦はおろかバイクを量産したこともないが、意外にも歴史的な繋がりは深い。
アウディは4つの企業が合併して生まれたもので、そのうちの1社であるDKWは、1930年代にレース用バイクを製造していた。1938年のTTレースでは、同社の製造したマシンが優勝している。1954年には、これも後にアウディと合併するNSU社のバイクが250ccクラスで1~4位を独占した。そして1965年、NSUプリンツTT/TTSにそのイニシャルが刻まれた。
プリンツTTとTTSは、長きにわたってレースシーンに華を添えてきたスポーツモデルだ。1995年のフランクフルト・モーターショーで発表されたアウディTTコンセプトも、これに敬意を表している。
ベントレー・ベンテイガ
ベントレーは、同社初のSUVをカナリア諸島の峰にちなんで命名した。グラン・カナリア島のテヘダ村を見下ろすロケ・ベンテイガだ。
この岩山を選んだ理由について、ベントレーはほとんど明らかにしていないが、おそらく「ベントレー・ベンテイガ(Bentley Bentayga)」という名前の響きが良いからだろう。エベレストはすでにフォードに奪われていたし、「ベントレー・カンチェンジュンガ」では親しみやすいとはいえない。
現在、ベンテイガは1905年に南アフリカで発見された巨大なダイヤモンドにちなんで名付けられたロールス・ロイスのSUV、カリナン(Cullinan)との競争に直面している。
シボレー・カマロ
シボレーが1967年に「カマロ(Camaro)」を発売した当時、ほとんどのモデルに「C」で始まる名前が付けられていた。シボレーのブランディング・チームは、カマロ開発時にCから始まる2000語のリストを作り、その中にいくつか自作したものもあったと言われている。カマロもその1つだ。
カマロにはスペイン語のような響きがあるが、実はどの言語でも意味をなさない。シボレーは、新型カマロの発表会に出席したジャーナリストに対して、「カマロはマスタングを食べる、小さくて凶暴な動物だ」と語ったのは有名な話。
クライスラーPTクルーザー
「PTクルーザー(PT Cruiser)」の意味については専門家の間でも意見が分かれており、命名したクライスラーもこの件に関しては一切明らかにしていない。PTは「パーソナル・トランスポート」を意味するという説もあれば、「プリムスのトラック」を意味するという説もある。
どちらも説得力のある説だ。PTクルーザーは間違いなくパーソナル・トランスポート(個人の乗り物)の一種であり、プリムスから発売される計画もあった(発売前にプリムスブランドは廃止)。また、PTはこのモデルのプラットフォームの名称でもある。
シトロエン2CV
シトロエンは、「2CV」を飾り気のないベーシックなクルマとして考えていたため、ネーミング方法もごく単純。クリエイティブな才能を持つ人にキャッチーなネーミングを考えてもらうなんて、明らかに論外であった。
このクルマに搭載される375ccのフラットツインエンジンが、フランスの制度では2馬力(chevaux-vapeurs)であることから、2CVと呼ばれるようになったのだ。その後、602ccの大型エンジンを搭載したモデルは3馬力にパワーアップしたが、3CVと呼ばれることはなかった。
シトロエンDS
シトロエンの「DS」は、一見したところアルファベットをランダムに並べただけのように見える。頭文字ではないが、まったく意味がないわけでもない。フランス語でDSは「デエス(Deesse)」と発音され、直訳すると「女神」という意味だ。まさに路上の女神と呼ぶにふさわしい車名である。
1974年にDSの後継として発売された「CX」は、空気抵抗係数を意味する言葉から命名された。その空気抵抗係数は0.36と、1970年代としては立派な数値である。BMW Z3 Mクーペ(0.37)や初代マツダ・ロードスター(0.38)よりも優れているのだ。
また、エントリーモデルである「ID」は、フランス語で「アイデア」を意味する「イデ(idee)」と発音が似ていることから、このように名付けられた。
ダッジのSRT
ダッジは、最もパワフルなモデルに「SRT」という接尾辞を使用している。チャージャーとチャレンジャーのヘルキャットV8エンジン搭載車、そしてファミリー向けSUVのデュランゴで0-402m発進加速12.9秒を誇るホットロッドモデルに採用されている。
2013年、2014年モデルから独立ブランドに昇格したSRTは、「ストリート&レーシング・テクノロジー(Street and Racing Technology)」の頭文字だ。
ちなみに、ヘルキャットのエンブレムは地獄から送り込まれた猫のように見えるが、第二次世界大戦中に米国海軍が使用した戦闘機(グラマンF6Fヘルキャット)からその名前を借りている。
フェラーリGTC4ルッソ
フェラーリ「GTC4ルッソ」の名前を読み解くには、3つのピースに分解する必要がある。まず「GTC」は、1966年のジュネーブ・モーターショーで発表された330 GTCをはじめとするクラシックモデルへのオマージュである。
続いて「4」という数字は4シーターであることを示し、「ルッソ(Lusso)」はイタリア語で「ラグジュアリー」を意味する。なお、末尾に「T」が付くのは、V12エンジンではなく小型のV8ツインターボエンジンを搭載していることを示すものだ。
フィアット500
現在販売されているフィアットの「500(チンクエチェント)」は、1957年に発売されたリアエンジン車にちなんで名づけられた。原付やスクーターからの乗り換えを想定した、安価で小さなクルマである。
オリジナルモデルは、最高出力13psの479cc 2気筒エンジンを搭載していた。排気量を四捨五入して500としたのが、この車名である。大型の600(セイチェント)には633ccの4気筒が搭載されるなど、こうした命名法は当時としては一般的なものだった。
その後、126に搭載されていた594ccの2気筒エンジンを搭載したモデルもあるが、500の名称はそのままである。「R」は、このモデルの究極の進化形であることを示す。
ランボルギーニの闘牛
ランボルギーニには、闘牛にちなんだ名前をつける長い歴史がある。
「アヴェンタドール(Aventador)」は、1993年にその卓越した勇気で賞を獲得した牛である。そして、「ウラカン(Huracan)」はスペイン語でハリケーンのような響きだが、これも1879年に戦った闘牛の名前。そして、「ウルス(Urus)」は闘牛ではないが、17世紀に絶滅した非常に大きな牛の一種だ。
フォードも牛がお好きなようだ。「トーラス(Taurus)」は12星座の1つ、おうし座であり、角の生えた牡牛で表される。
マツダMX-5ミアータ(ロードスター)
「MX-5」は、マツダの人気車種「ロードスター」の海外における呼称である。国際的には、こちらの方がよく知られた名前だ。MX-5とは、「Mazda Experimental project number five(5)」の頭文字をとったもの。「ミアータ」は、ドイツ語で「報酬」を意味する古語に由来する。
ミアータが魅力的な走りを提供することで購入者に報いるのか、それともそのために努力したドライバーへのご褒美なのかは、解釈次第である。
メルセデス・ベンツEクラス
メルセデス・ベンツでは、Eクラスが登場する以前から、いくつかのモデルに「E」という接尾語が付けられていた。このEは燃料噴射装置(フューエルインジェクション、ドイツ語でEinspritzung)の存在を示すもので、エンジン排気量を表す数字の後につけられた。例えば、「280E」は2.8Lの燃料噴射式エンジンを搭載している。
1994年、メルセデスの命名法はエンジンのサイズではなく車体形状を基準にしたものに変わり、W124は初代「Eクラス」となった。その時点ですでに全車に燃料噴射装置が導入されていたが、エントリーモデルのCクラスと上級モデルのSクラスの間に位置する中級モデルとして、アルファベット順の都合で「E」が選ばれたのである。
メルセデス・ベンツGクラス
1979年、メルセデス・ベンツはGクラスをドイツ語で 「ゲレンデヴァーゲン(Gelandewagen)」と呼んだ。直訳すると「クロスカントリー・ビークル」。よく使われるGワーゲンやゲレンデの愛称はここから来ている。前述のように1994年に命名法が一新された際、「Gクラス」となった。
日産キャシュカイ
日産が欧州で販売する人気SUV「キャシュカイ(Qashqai)」。人類学の本を開くと、キャシュカイはイランのザグロス山中に住むトルコ語を話す遊牧民であることが書かれている。
どうしてこの名前がSUVに使われるようになったのかは誰にもわからないが、おそらく「響きがクールだったから」というのが答えだろう。中国仕様車の「逍客」も遊牧民という意味を持つ。
発音しにくい名前を嫌う傾向がある米国では、キャシュカイではなく「ローグ・スポーツ(Rogue Sport)」(写真)と名付けられた。ちなみに、キャシュカイの初代モデルは日本国内でも「デュアリス(Dualis)」として販売されていたが、これは「2つの性質」を意味するラテン語に由来する。
数字3桁のプジョー
プジョーは1929年に「201」を発表してから、真ん中に「0」をつけた数字3桁の車名を使うようになった。その後、すぐに「301」、「401」、「601」と3台の新車が発表され、ショールームに並んだ。
そのうちの何台かは、車名のエンブレムをフロントグリルに配置し、0の部分をクランクの穴と兼用にした。これはデザイナーが誇りとしていた巧妙なレイアウトであり、しばらく好んで使われ続けた。
数字3桁の命名法は、クランクが消えてからも存続している。末尾の数字はモデルチェンジのたびに増えていったが、2012年以降にパターンが変わった。「208」は「209」ではなく、新しい「208」に生まれ変わったのである。
2018年、SUV向けに「3008」のように2つの0を使用するようになった。それでも時折、「P4」、「1007」、「RCZ」など例外的なネーミングが用いられている。
ポルシェ911
1963年のフランクフルト・モーターショーで、ポルシェは新型の901を発表し、閃光を放った。356の後継車として待望のデビューを果たした901は、流麗かつパワフルで世界中の注目を集めたが、それとはまったく異なる理由で、プジョーに目をつけられてしまう。
プジョーはポルシェに対し、「0を含む3桁の数字はすべて自分たちの所有物である」と言い放ったのだ。プジョーは901というモデルを出すつもりはなかったし、リアエンジンのスポーツカーを作るつもりもなかったが、商標権侵害でポルシェを逃がすわけにはいかなかった。
そこで、ポルシェは0を1に置き換えて「911」を誕生させた。車名が変更される前、ポルシェは901のバッジを付けたモデルを82台ほど作っている。以降、911が過去を振り返ることはなかった。
ルノー・トゥインゴ
ルノーは1990年にクリオを発表して、数字によるネーミングから脱却した。この新しい命名法は、ルノーにとって新時代の幕開けとなった。
1993年に発表されたエントリーモデルには、「トゥインゴ(Twingo)」という名前がつけられた。ツイスト(Twist)、スウィング(Swing)、タンゴ(Tango)の3つのダンススタイルを組み合わせたネーミングである。
ちょっと怪しいテスラのネーミング
テスラ初の市販車は、電気で走るコンバーチブルで、ごくシンプルにロードスターと命名された。その後、「モデルS」から新しい命名法を採用し、「モデルX」「モデル3」「モデルY」と次々に新型車を展開していった。これらのアルファベットを並べると、「SX3Y」となる。
テスラはもともとモデル3を「モデルE」と名付けようとしていたが、フォードがその名前の権利を所有しているとして、訴訟をチラつかせて脅してきた。Eを3に置き換えたのは、おそらく形が似ているからだろう。さて、先程並べたアルファベットで3をEに置き換えると……テスラのネーミングセンスが見えてくる。
トヨタ・カローラ
トヨタを代表するクルマの1つである「カローラ(Corolla)」。世界中の誰もがその名を知る名車だが、その言葉を辞書で調べても、地味なエコノミーカーの絵は出てこない。カローラとは、「花の花弁で、がく片の中に渦を巻いているもの」と定義される名詞だ。植物学者がよく使う言葉である。
トヨタRAV4
トヨタは、SUVという言葉が広く知られるようになる前に初代「RAV4」を設計したため、独自の名称を考案する必要があった。RAV4は、「四輪駆動のレクリエーショナル・アクティブ・ビークル(Recreational Active Vehicle)」という意味だが、ほとんどの市場で前輪駆動が標準仕様となっている。
トヨタ・ヤリス
トヨタはドイツ語とギリシャ語を混ぜて、「ヤリス(Yaris)」という言葉を作った。トヨタによると、元となった「カリス(Charis)」はギリシャ神話に登場する美とエレガンスの象徴であるという。その最初の音節をドイツ語で「イエス(Yes)」を意味する「Ya」に置き換えたのだ。初代ヤリスのスタイリングに対する、デザイナーの期待を表している。
日本では、初代から3代目まで「ヴィッツ」と呼ばれてきた。ヴィッツの由来は、英語で「鮮やかな、いきいきとした」という意味の「Vivid」と、ドイツ語で「機知、才気」を意味する「Witz」を組み合わせたものとされている。
風をイメージしたフォルクスワーゲン
フォルクスワーゲンの初期モデルは、業界で最も独創性のないネーミングのクルマとして知られていた。例えば、ビートルの正式名称はすばり「タイプ1」である。フォルクスワーゲンはしばらくして、前輪駆動の水冷モデルにもう少し華やかさを加えることにした。そこで、気象学にヒントを得たのである。
「ゴルフ(Golf)」は、ドイツ語で「ガルフシュトリーム(Golfstrom)」と呼ばれる「メキシコ湾流」にちなんで名づけられた。「パサート(Passat)」はドイツ語で「貿易風」、「ジェッタ(Jetta)」は「ジェット気流」、「シロッコ(Scirocco)」はサハラ砂漠から吹く「地中海の風」をイメージしている。
奇しくもシロッコは、マセラティの「ギブリ(Ghibli)」と同じ命名法である。ちなみに、ゴルフは米国で「ラビット(Rabbit)」と呼ばれる時期があった。スポーツのゴルフとの混同を防ぎ、もっと若々しいイメージを与えたかったようだ。
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