MINIクーペ試乗 最強のゴーカートフィール!
掲載 更新 carview! 文:岡崎 五朗/写真:BMWジャパン
掲載 更新 carview! 文:岡崎 五朗/写真:BMWジャパン
MINIクーペのベースとなったのはハッチバックだが、正確にはハッチバックをベースに補強対策を施したコンバーチブルのボディがベースとなっている。加えて本来ならリアシートがある部分に、ねじり剛性をさらに高めるための補強材を19kg分も追加。大きなハッチゲートの存在を補って余りある剛性を実現している。
BMWグループとしては初となるアクティブリアスポイラーの採用にも注目だ。80km/hでせり上がり、50km/hで格納されるこのスポイラーは、トップスピード域で40kgものダウンフォースを発生する。これに伴い、空力的前後バランスをとるべくフロントスポイラーも大型化した。全長がハッチバックよりわずかに長くなったのはこのためだ。アクティブリアスポイラーの重量は6kg。ボディ補強と併せて25kgの重量増加を招いたが、「MINIファミリー中最高のゴーカートフィーリング」という狙いを実現するにはどうしても必要だったという。
ボディの補強対策を徹底しなければ、窮屈ながらも4人乗車ができる2+2にもできたはずだ。しかしあえて2シーターに割り切った最大の理由は走りにある。また、中途半端に狭い後席をつくるぐらいなら2人乗りにして荷室を使いやすくするのが得策、という考え方もあったという。事実、280Lという荷室容量はクロスオーバー(350L)を除けばMINIファミリーのなかで最大。巨大な開口部や長尺ものを収納するためのスルーローディング機能とあいまって、優れた使い勝手を提供してくれる。
デザイン面で特徴的なのは、他のMINIと比べてフロントスクリーンの傾斜角を13度強め、同時にリアウィンドウも大きく寝かせることでコンパクトなルーフを実現したこと。「前方のカーブが2シーターを暗示し、後方の"跳ね"が若々しくスポーティなイメージを作り出します」とはデザイナーの弁だが、言われてみればたしかにそんな感じがある。ボンネットフードとドアは他のMINIと共通だが、まるでトレッドを拡大したかのように下半身の安定感が増しスポーティに見えるのは、上半身が引き締まったからだ。
試乗したのはトップグレードのJCW。フロントスクリーンの傾斜が強くなったため上方視界はやや広くなったが、着座高を含めインテリアに変更はない。今回はミニサーキットという特殊条件下での試乗となったが、走り出してもっとも印象的だったのがボディのしっかり感だ。ボディ全体がまるでひとつの剛体のようにガッチリしている。コーナーで強い負荷を与えても弱い部分が捻れたりヨレたりする感覚は皆無で、タイヤとサスペンションの性能をキッチリと引き出していた。少々硬めの乗り心地と引き替えに、ステアリングのレスポンスは抜群であり、シリーズ最強のゴーカートフィーリングという狙いは間違いなく達成されている。
ESPをオフにすれば、荷重移動を使って姿勢を自由にコントロールすることも可能。むしろちょっと"テールハッピー"過ぎるかなとも思ったが、市販モデルではもう少しリアの抑えを強くするとのことだった。いずれにしても、クーペがもっともスタイリッシュでもっとも走りのいいMINIであることは間違いない。
ちょうど原稿を書いていたら、ニュル24時間レースに初参戦したMINIクーペが総合34位、クラス4位に入賞したというニュースが入ってきた。赤いベースボールキャップを後ろ向きに被りグリーン・ヘルを疾走するMINIクーペの勇姿は、世界中のMINIオーナーへの大きなプレゼントになったはずだ。
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