レクサスの「顔」はなぜ怖いのか?
掲載 更新 carview! 文:すぎもと たかよし/写真:中野 英幸、小林 俊樹、菊池 貴之、篠原 晃一
掲載 更新 carview! 文:すぎもと たかよし/写真:中野 英幸、小林 俊樹、菊池 貴之、篠原 晃一
さて、新しい動きということは、同時にそれだけ歴史が浅いことを意味する。欧州の老舗との歴史をいまから埋めることはできないが、今後はその継続性が日本車の課題と言えるだろう。
たとえば、日産は80年代後半からいち早く「ウイング・グリル」を立ち上げ、マーチやパルサー、あるいはOEMの軽自動車にも展開したが、前述のとおり現在ではまったく異なるテーマになっている。また、スバルの「スプレッド・ウインググリル」や三菱の通称「ブーレイ顔」など、それ自体が極めて短期間で見直された例も少なくない。
この継続性のなさが日本車の欠点であり、今後の国産車デザインの大きな障害となってしまうのか? 筆者は、国産メーカーが今まさにその分岐点に来ており、非常に重要な時期にあると考えている。それはなぜか?
先の日産など、一部のメーカーが統一デザインを考えはじめてわずか10年、20年。これまでの経緯はともかく、いまでは多くのメーカーがようやく腰を据えてファミリーフェイスを検討できる、いわばスタートラインに立ったところなのである。そうであれば、まずはコレという“解答”の突端を見つけられるか否かが最初の鍵となる。これがまずひとつ。
一方で、変化すること自体に日本車の可能性を見出すという真逆の考え方もありそうだ。基本の大きな流れは保ちつつ、表現を意図的に変えて行くことで、ある種の「歴史」を作り出すこともひとつの発展という発想である。
実際、レクサスはいままさにその途上にある。たとえばスピンドルグリル導入第1号のGSと、つい最近マイナーチェンジで導入したCTのそれは、表現方法にかなりの違いが見られる。また、昨年の東京モーターショーに出展されたコンセプトカーのLF-NXでは、その形状が極めて先鋭的に立体感を持っており、さらなる“進化”が見られた。
「欧州の老舗とは異なるレクサスがブランド・イメージを確立させるためには、ある種のスピード感をもった取り組みが必要です。もちろん、車種ごとの個性を持たせる意味もありますが、しかしLS、GS、ISが同じではいけない。機能面も含めて常にいちばん新しい解釈を反映し、短いスパンによる変化が必要なのです。LF-NXは、コンセプトカーとしてそれを端的に表現したものですね」(富田氏)
レクサスの顔が怖いのは、決して偶然の成り行きではなさそうだ。いま、各メーカーが試行錯誤をしつつ、本物の「顔」を模索している証なのである。
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ブランドを主張する「ファミリーフェイス」は、一歩やり方を間違えると、“同じ顔を持ったボディサイズが違うだけ”のクルマが並ぶことにもなりかねない。根本のデザイン哲学を共有しながら、モデル毎の個性や色をどのように表現していくかがデザイナーの腕の見せ所だ。ユーザーから見れば、いくら走りの性能が良くてもデザインが好きになれなければ購入意欲もなえるというもの。デザインに惚れちゃうクルマ、どんどん増えてほしいものですね。(編集部)
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