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カイエン試乗記・後編は 本命ハイブリッドの実力

内燃機関的な加速フィール

効率、という視点から見ればTHSIIが勝るのは明らかで、動力を分割し上手くマネージメントするTHSIIの方がインテリジェント。だが、こちらはクラッチこそあるもののエンジンもモーターも常に駆動軸上にあるため、エンジンのみの場合はもちろん、モーターのみ、エンジン+モーターの状態で、常に踏み込み量と加速の関係がリニアに保たれる。もっともクラッチが頻繁に作動した時のぎこちなさはないとはいえないが…。

効率とフィーリングを比べたら、環境の名の下においては断然効率に軍配。しかし人は内燃機関独特の気持ち良さも忘れられない。そう考えると、なるほどここに譲れぬ「らしさ」を感じなくもない。

それは数値からも伺える。RX450hの欧州燃費値は6.3L/100km、CO2排出量は148g/km。対するカイエンSハイブリッドの燃費値は8.2L/100km、CO2排出量193g/kmという差がある。が、一方で動力性能的にはRX450hが0-100km/h加速7.8秒、最高速200km/hに対し、カイエンSハイブリッドは0-100km/h加速6.5秒、最高速242km/hという差を持つ。

ならばRX450hの方が効率的なのは歴然。だが、一概にカイエンSハイブリッドが効率的じゃない、とはいえない。

そもそもポルシェはトヨタのような大メーカーとは違い、規模でいえば全車種の生産台数で10万台に満たない小さなメーカー。そして言わずもがな、その価格は限られた人でなければ選べない高みにある。つまりもともと社会への負担が少ない。が、そうした状況の中でブランド内の最量販車種(といっても少ないが)のカイエンからハイブリッドを投入した姿勢は真摯といえるだろう。以前911ターボのレポートでも書いたが、全体論的視野で見ればもともと環境への影響は小さいが、“それでも”削減しているわけだ。

そしてここに、先の効率とフィーリング、環境性能値と動力性能値の関係を加えると、そこにポルシェがポルシェであるための答えが垣間見えてくる。さらにハンドリングの印象を加えると、その「らしさ」の答えは明らかになる。

ハンドリングの印象は明快。大幅な軽量化を果たしたとはいえ、ハイブリッドゆえシリーズ中最もヘビーな重量(約2.2t)を、よくぞここまで“走れる”ものにした、という印象だ。そう、ここで前段に記した非ハイブリッド・モデルにおける地道な積み重ねが花開く。カイエンSハイブリッドの2240kgという車両重量はシリーズで最も重い一方で、先代のターボより軽い。勘のよい人ならお察しだろう。おそらく地道な軽量化は、ハイブリッド搭載による車両重量の増加とのバーターだ。それでも最も重くなることは必至。ならばその状態をどこに持っていくか? そう考えると、必然的に「らしさ」を失わないギリギリのところがゴールとなる。

つまりハイブリッド化によってある程度重量が増加してもなお、「らしさ」を感じるクルマにしたかったのだと僕は思った。

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