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カイエン試乗記・後編は 本命ハイブリッドの実力

ポルシェの意地を感じる

実際に走らせると、確かに重みはシリーズ中最も強い。4WDもこのハイブリッドとディーゼル搭載モデルのPTMは電子制御アクティブ4WDではなく、セルフロッキング式センターデフによるフルタイム4WDで通常は前60%、後40%の駆動力配分だが、前後軸の回転差を感知して先のセンターデフが作動する仕組み。PTVplusは装備されないため、Sやターボほどの身のこなしはない。が、それでも先代カイエン以上に走り、ハンドリングにもさしたる不満を感じないのは軽量化が効くからに他ならない。しかも重みこそあれ、しっかり、がっしりしたものが違和感なく動く、この感覚こそ全てのポルシェに通ずる感覚ではないか? と思えたのだ。

そう、カイエンSハイブリッドから見えて来る「らしさ」の答えとは、ハイブリッドであってもなお“ポルシェの名を冠する自動車に相応しい走りか否か”ということ。

そのためにまずドライブトレーンでは先に記した違和感のない加速どころか、速さや気持ち良さを失わないだけの動力性能を実現。そしてハンドリングにおいてもハイブリッド化による重量増はもちろん、環境性能の名の下にフィーリングを悪化させない術を施している。そこにはまず、1台の自動車として、1台のSUVとして、そして1台のポルシェとしての走りが作り込まれている。

つまりハイブリッドという技術を付与してもなお、ポルシェが求める自動車としての走りの基本(これはこれで相当に高レベル)を崩さぬ努力がなされている。そう考えると僕は、このカイエンSハイブリッドこそ最も“ポルシェ度”を感じる1台と思えたのだ。それは言わば、意地とも思える。ハイブリッドである前に、ポルシェである、という。

もっともそうした想いは既にポルシェ自身が言葉にしている。3月のジュネーブにおいて、“918スパイダー”“911GT3Rハイブリッド”“カイエンSハイブリッド”をお披露目した時からそれは使われていた。“より少ない燃料でより大きなパワー、より高い効率とより低いCO2排出量を掲げる”という新たなフィロソフィーだ。先に記したようにポルシェは今、思想や哲学すら進化させている。そしてこれをして“ポルシェ・インテリジェントパフォーマンス”という。なるほど納得、の答えがそこにある。

つまりカイエンSハイブリッドは“ポルシェとして”のハイブリッドであり、そのパフォーマンスの実現のしかたが知的なのだ。「最新のポルシェは最良のポルシェ」というフレーズがあるが、僕はむしろ最新のポルシェとは、その時代の最良のインテリジェンスで築かれるパフォーマンスを持つものなのだと思えた。

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