発売されるとは思わなかったクルマたち
今年9月、ある1台のクルマが世界を驚かせた。フェラーリ・プロサングエである。広い室内空間に大人4人を乗せる実用的なSUVでありながら、フェラーリ伝統のV12エンジンを搭載するハイパフォーマンスカーでもある。
【画像】夢にも思わなかった意外なクルマたち【フェラーリ初のSUVなどを写真でじっくり見る】 全97枚
サーキットを颯爽と駆け抜けるスポーツカーの名門フェラーリから、このように車高が高く快適そうな4ドアの大型SUVが登場するなんて。発表のニュースはクルマ好きの間で議論を呼んだ。とはいえ、iPhoneが公衆電話からかけ離れた存在であるのと同じように、フェラーリ・プロサングエは第二次世界大戦中のジープとはかけ離れたSUVなのだ。
そしてプロサングエは、市場(顧客)の要望から生まれたクルマである。このように、かつては作り手自身も想像もしなかったようなクルマがいくつも生み出されてきた。あるものは、メーカーに素晴らしい付加価値を与え、またあるものは、大きな衝撃をもたらしながら転落していった。そして、思いがけず重要な存在となったものもある。ここでは、その代表的な例を紹介しよう。
ロールス・ロイス・カリナン(2019年)
カリナンの発表当時、AUTOCAR英国編集部はこうコメントしている。
「ロールス・ロイスは、初代ポルシェ・カイエンのように、ロールスらしいデザイン要素を取り入れようとした。それはSUVには通じないのかもしれないし、わたし達がまだ慣れていないだけなのかもしれない」
ロールス・ロイスにSUVを求めたのは、他でもない顧客である。オフロードを走るロールス・ロイスというのは、実はそれほど異質なものではない。初期のロールス・ロイスは、その堅牢性からアラビアのオフロード走行によく使われ、第一次世界大戦中には軍の装甲車としても使用された。
まぁ、初代カイエンと同様、カリナンのルックスには悩まされるが、慣れれば良く見えてくるかもしれない。
アストン マーティン・シグネット(2010年)
当時のAUTOCARのコメント「今日、従来のシティカー(小型車)を購入する大多数の人にとって、新型アストン マーティン・シグネットの発表は、今世紀で最も馬鹿げたことの1つに数えられるに違いない」
トヨタの超小型車iQは、英国が誇るスポーツカーブランド、アストン マーティンのベース車両としては、最も「らしくない」クルマであることは多くの人に共感いただけるだろう。
両社の間で交わされた(きっと熱のこもった)会話の結果生まれたと思われるシグネットは、新車当時こそなかなか売れなかったものの、不思議なことに生産終了後の現在では非常に高い価値を持ち、人気を博している。
アウディR8(2006年)
当時のコメント「記録開始以来、フォーシルバーリングス(アウディのエンブレム)をつけたクルマの中で最も過激なロードカー」
ランボルギーニの内面を持つアウディR8は、性能的に驚くべきスーパーカーであるが、「ビジネス」的にも驚くべきものだった。アウディはランボルギーニを傘下に置いているため、わざわざ競合するようなモデルを発売することの意外性も大きかったのだ。
しかし、個人的に一番驚いたのは、エンターテインメント性に富んだダイナミクスと、アウディの中で最も優れた(A8よりも良い)乗り心地だった。
トヨタ・ファンカーゴ(1999年)
当時のコメント「整然とデザインされたシートアレンジ、素晴らしいパッケージング、そしてこの価格ときたら……」
トヨタ・ファンカーゴは、海外でもヤリス・ヴァーソの名で販売されており、発売当時のAUTOCAR英国編集部は、その理路整然とした室内デザインに目を点にしたようだ。いわゆるトールワゴンの先駆けともいえるクルマで、実用性の高さは英国をはじめとする欧州市場でも高く評価された。超小型MPVとしてよく売れたものの、見た目に対する評判はあまり良くなかったという。
ルノー・トゥイージー(2009年)
当時のコメント「これもまたEV(電気自動車)だが、やはり発電機を搭載したほうがいいという結論に達した。しかし、トゥイージーには愛すべき個性がある」
とても可愛らしいクルマで、それまでのルノー車とはまったく違う。しかし、雨や寒さにはめっぽう弱い。ドア(オプション設定)をつけないと、乗員は風雨に容赦なくさらされる。満充電してもそれほど走らないのは、かえって良いことなのかもしれない。走る日を間違えなければ、素晴らしいクルマ。だから、ライバルがいないのだ。
フォルクスワーゲン・フェートン(2003年)
当時のコメント「フォルクスワーゲン・フェートンを定義する言葉があるとすれば、それは『なぜ?』だ」
フェルディナンド・ピエヒの愚行とも言えるフェートンの発売は、フォルクスワーゲンの上級幹部や中国の富裕層にしか意味がなかった。クルマそのものの出来はさておき、高級志向の大型セダンは、フォルクスワーゲンというブランドに果たしてふさわしいのか?
ピエヒの意欲は賞賛に値するもので、同じように高級志向を打ち出したトゥアレグは大成功を収めた。しかし、フォルクスワーゲンのフラッグシップとされたフェートンは、スーパーマーケットで宝石を売るようなものではないだろうか。
クライスラー・デルタ(2011年)
当時のコメント「普通とは少し違うが、お勧めするにはあまりに気がかりが多い」
デルタという車名は1990年代にランチアで使われていたもので、ラリー界に多大な影響を残した伝説的なクルマである。2010年代に登場した3代目デルタだが、初代のスポーツ性はどこへやら。英国など一部の市場では、ランチアではなくクライスラーブランドから販売されたこともあり、全く普及しなかった。
フィアット・ムルティプラ(1998年)
当時のコメント「ムルティプラのようなクルマをもっと世に出すべきだ。家族の移動手段としては、天才的な作品である」
奇妙奇天烈なフィアット・ムルティプラは、6人乗りの樽型ボディに、ゴミ箱や棚、ドリンクホルダーを詰め込んだ、利便性と独創性の塊であった。「すべてのものに美しさがある。だが、誰もがそれを見ているわけではない」という、孔子の言葉を引用した広告もあった。言い得て妙である。
BMW X5(2000年)
当時のコメント「クロスオーバーのコンセプトを極限まで追求したモデル」
BMWには先見の明があった。スポーツ・ユーティリティ・ビークル(SUV)という未確立の分野に賭けただけでなく、勇敢にも、本当にスポーティなクルマを作ろうとしたのだ。見た目は少々野暮ったいものの、その走行性能、ハンドリング、そして悪路走破性は見事なものだった。X5は、現在ではBMWの主力モデルとなっている。
メルセデス・ベンツ・バネオ(2002年)
当時のコメント「その多用途性は、子供たちだけでなく、動き回る忙しい人たちにも魅力的に映るはずだ」
この超実用的なクルマは、メルセデス・ベンツの商用車部門による予想外の作品である。決してセクシーとは言えない車体に、「バネオ(Vaneo)」という、これまた質素な車名を刻んだ。残念ながら、超高級車のマイバッハ57と同じくらいしか売れなかった。
プジョー1007(2005年)
当時のコメント「1007はコンパクトなボディと、上質なインテリアを両方備えている」
4人乗りの小型MPVだが、ドアはたったの2枚(しかも両側スライド)という変わった出で立ちのプジョー1007。狭い場所でも駐車しやすいようにショート&トールサイズにまとめられ、明るいボディカラーを揃えていた。
改めて考えてみると、BMWミニやフィアット500よりも合理的で実用的である。しかし、刺激のないデザイン、鈍重なドア、ジジくさいオーラ(失礼)、そしてこの2台の活躍によって、1007の魅力は見失われたのである。
ポルシェ・カイエン(2002年)
当時のコメント「才能豊かなカイエンは、ポルシェの伝統に忠実である。SUVにしては速く、精確で、驚くほど軽快なのだ」
心をザワつかせるクルマだった。ポルシェが送り出す「SUV」というものをしっかり理解するために、そして美しさを見出すために、わたし達は努力を重ねた。最終的には、誰もがその素晴らしい能力に称賛を送るようになった。しかし、発表当時は大きな衝撃を受けたものだ。
サンヨン・ロディウス(2004年)
当時のコメント「ロディウスの外見を我慢することは可能だ。しかし、中身はあまりよろしくない」
この突然変異体は、韓国のサンヨン(双竜)のブランドイメージを決定づけてしまった。ずんぐりしたステーションワゴンに壁のようなテールゲートを組み合わせた、21世紀で最も醜いクルマとして名を残している。
ホンダ・インサイト(1999年)
当時のコメント「省燃費技術に溢れた、シビックと同じように所有しやすいクルマ」
技術においてホンダが冒険をすることは珍しくはなかったが、量産のハイブリッド車というのはまだ大変珍しく、大いに注目を集めた。「世界初」の座はトヨタ・プリウスに譲ったものの、インサイトに盛り込まれた高度な技術とアイデアは、NSXよりも大胆なものだった。
ルノー・アヴァンタイム(2001年)
当時のコメント「ルノーのグランドツアラーは、根本的にデザインの発想が違う」
ルノー・アヴァンタイムは、当時手が空いていたマトラ工場を埋めるために作られたものだが、「ミニバンクーペ」なんて誰が必要としていたのだろう。2枚の巨大なドアとツートンカラーの塗装は、世にも珍しいアヴァンタイムの個性を際立たせ、その希少性と贅沢なインテリアにより少数のファンを獲得した。現在でも一部から熱狂的な支持を得ている。
アルファ・ロメオSZ(1989年)
当時のコメント「脚はいいが、顔は残念」
このクルマが公開されたとき、報道陣は沈黙した。平板なサイドボディ、のっぺりしたリアエンド、カクカクシカジカしたシルエットなど、押し出し感の強いデザインに多くの人が圧倒されたのだ。ブラックホールのようなグリルとフレームレスのヘッドライトも、コンセプトカーと見紛うほど強烈。好き嫌いの分かれるスタイリングだが、その走りは確かにアルファ・ロメオだ。
ジープ・コマンダー(2005年)
当時のコメント「コマンダーは、クルマとして可能な限り直線的であるが、室内空間の広さは、グランドチェロキーほど印象的ではない」
AUTOCAR英国編集部の酸っぱいコメントだが、フィアット・クライスラー・オートモービルズ(FCA)の故セルジオ・マルキオンネに比べれば、親切な方である。彼はコマンダーを見たとき、こう述べたという。「あのクルマは人間の消費に適していない。いくらか売れたが、なぜ人々がこれを買ったのか、わたしにはわからない」
コマンダーがグランドチェロキーに対抗できる唯一のセールスポイントは、狭くても文句を言わないおとなしい子供たちのための2つのシート(コマンダーは3列7人乗り)だった。
ジャガーIペイス(2018年)
当時のコメント「今週の試乗車は、マクラーレンF1以来、英国メーカーの名誉挽回の機会となりうるだろうか?」
こんなこと、誰が想像できただろう?栄光のバックカタログに頼りすぎ、しばしば期待はずれの結果を出してきたジャガーが、欧州初の高級電動SUVで未来へ向けて走り出したのだ。Eタイプ、XK、Mk2といった過去の名車とは似ても似つかない。しかし、見た目も走りもジャガーそのものである。
ヴォグゾール・ロータス・カールトン(1990年)
当時のコメント「ロータス・カールトンを真に偉大なスーパーカーにしているのは、その徹底した地味さである」
ヴォグゾール・カールトン(オペル・オメガの英国版)は中間管理職のためのクルマで、家族を乗せて高速道路を旅することができる。3000GSiというスポーティなモデルもあり、こちらはよりハードに、より速く走らせることができた。そして米国の自動車大手GMは、ロータスに対し、このカールトンからさらに猛烈なパワーを引き出すよう指示したのだ。
こうしてカールトンは、何の変哲もないファミリーカーから、フェラーリのテスタロッサをしのぎ、BMW M5を駆逐する世界最速のサルーンに変身した。最高出力382psのヴォグゾールなんて、誰も予想していなかった。
ミニ・クーペ(2011年)
当時のコメント 「ブロードスピード、マーコス、マイダスなど、初代ミニをベースに製造されたかつてのクーペにインスパイアされた新型クーペは、少なくとも伝統という意味においてはエレガントさとは無縁である」
ミニ・クーペというアイデア自体には何の問題もない。しかし実物は、多くの人が想像するような軽快なミニマリズムとは違っていた。バブルトップの2シーターで、ヘルメットをかぶっているように見え、リアエンドは、初代アウディTTクーペがいかに見事な造形であったかを思い起こさせる。
ベントレー・ベンテイガ(2015年)
当時のコメント「エットーレ・ブガッティがベントレーのレーシングカーを『le camion plus vite du monde』(世界最速のトラック)と表現したのは、まったくの親切心からではなかった」
ベントレーが2012年に公開したコンセプトモデル「EXP 9 F」は、同社初のSUVとして注目を集め、多くの評論家が口角泡を飛ばしてそのスタイリングを論じた。それでもベントレーは、背の高い四輪駆動車のデビューを止めなかった。デザインに手を入れ、3年かけて発売にこぎつけたベンテイガは、大変よく売れている。
ルノー・ヴェルサティス(2001年)
当時のコメント「この風変わりなクルマは、完全に納得できるものではないにしろ、興味深く、豪華なものだ」
ルノーは、ドイツ製の高級サルーンとは異なるものを作ろうとしており、その目論見は見事に達成された。ヴェルサティスは、アウディA6やBMW 5シリーズ、メルセデス・ベンツEクラスとは似ても似つかぬクルマだ。
強気なコンセプトだが、成功と言える点はそれくらいしか見当たらない。不格好でぎこちないハッチバックであり、BMWのようなハンドリングも、ルノーらしい乗り心地も実現できなかった。
日産フィガロ(1991年)
当時のコメント「元気な1.0Lターボエンジン、コンバーチブルルーフ、優しいスペックとルックスによって、フィガロはカルト的な人気を得ることができるだろう」
当時、地球上で最も退屈な自動車メーカーの1つであった日産から、呆気にとられるほどほど可愛いフィガロが発売された。Be-1、パオに続くレトロなパイクカー・シリーズの1台で、従来のラインナップにはなかった、個性的、カラフル、輝き、楽しさのすべてを凝縮したようなクルマだった。
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