スバルWRX STIタイプRA-Rは希に見る刺激を持つも操縦性にやや難ありか
掲載 更新 carview! 文:山田 弘樹/写真:小林 俊樹
掲載 更新 carview! 文:山田 弘樹/写真:小林 俊樹
このパワフルかつスムーズな出力特性は、まずターボの軸受けに専用のボールベアリングを採用したことで得られた。またピストン及びコンロッドは量産部品よりも公差が50%も抑えられた。これ以外にもクランクシャフトは85%、フライホイールやクラッチカバーには50%の回転公差低減を施したダイナミックバランスが取られたというのである。つまりこれは、メーカーが施したフルバランスドエンジン。クルマ好きにとって、ひとつの究極なのである。
エミッションコントロールの関係から次世代への継続が難しいのでは? と言われている名機EJ20ターボ。つまりその最終究極系を手に入れるということだけでも、RA-Rを購入する意義はあったと言うことができる。
ただこのRA-Rに残念な部分があるとすれば、それは操縦性だ。フロントを倒立式としてストラットサスペンションの弱点である剛性を高め、車高を10mm下げた足回りはガッシリとしている。しかし若干だがしなやかさに欠け、RA-Rが持つ素晴らしい速さを、安心してぶつけられる懐の深さが感じられないのだ。
具体的にはサスペンションのストローク感が少なく、グンサイのバンピーな路面を越えたときの引き戻され感が強い。突起を乗り越えて再びタイヤが接地したときの“ガツッ!”としたトラクションの激しさが、ちょっと怖い。
これが平坦なサーキットであれば、さほど問題は感じなかったと思う。11:1のレシオに仕上げられたステアリングは、この超クイックなレシオを使い始めたときのような不自然さがなく、しっかりとリセッティングされていたのも好感がもてる。電子制御式センターデフ(DCCD)が優れた回頭性を実現しながらもスタビリティを確保してくれているから、挙動そのものは安定している。しかしどこかに心を許しきれない反発感のようなものが、そわそわと感じられるのである。
それを端的に言ってしまえば、「VAB型」のボディ剛性が、既にSTIの求める速さに対応しきれなくなっているのだと思う。特にこのRA-Rは、動的質感の高さを求めたS208とキャラクターを変えるべく、その足回りをよりレスポンシブな方向へとセッティングしたというからなおさらだ。もしシビックタイプRであれば、同じコースを走ってもより高い安心感で行けたとボクは思う。
※本文中に一部誤りがあったため修正いたしました。(7月31日)
修正前:11:1と超クイックレシオに仕上げられたステアリングは巧みな電動パワステ制御がしっとりと抑え込んでくれている。
修正後:11:1のレシオに仕上げられたステアリングは、この超クイックなレシオを使い始めたときのような不自然さがなく、しっかりとリセッティングされていたのも好感がもてる。
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