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スバルWRX STIタイプRA-Rは希に見る刺激を持つも操縦性にやや難ありか

スバルWRX STIタイプRA-Rは希に見る刺激を持つも操縦性にやや難ありか

スバルWRX STIタイプRA-R

エンジンの熟成ぶりに感心

RA-Rが軽量化にこだわった理由は、コストを下げながら性能を上げるため。つまりパワーウェイトレシオ(以下、PWR)を下げようとしたのだ。PWRは1馬力当たりが加速させる重量を示しているから、数値が小さいほど性能が高いということになる。その結果1480kgとなった車両重量を329psのエンジン出力で割ると、PWRは4.498kg/psになった。これは当然ながら同じエンジンを搭載するS208の4.598kgよりも低い値である。

一般的にPWRが5を切る数値を示すと、高性能スポーツカーの仲間入りをすると言われている。その点でRA-Rは4.498kg/psと優れた値を示しているが、たとえばフェラーリ488GTB(車重:1370kg、出力:670ps、PWR:2.04kg/ps!!)といった欧州スーパースポーツに比べれば、倍以上の数値となっている。それでもRA-Rの加速に退屈どころか恐ろしさすら感じるのは、WRXが4WDターボというパッケージングを持っているから。その高いトラクション性能が、329psのパワーを余すことなく路面へと伝えてくれるからである。

ただその速さ以上に素晴らしいと感じたのは、エンジンの熟成ぶりだった。低重心で左右対称なレイアウトを持つことから運動性能は高くとも、横方向にブロックを伸ばすことでどうしてもストロークが稼げない水平対向エンジン。さらに1994ccという排気量からパワーを絞り出す方法としてターボを選んだため、どうしてもターボラグの影響が大きく出てしまう。

これをいかに解決するのかがスバルとSTIの歴史だったわけだが、このエンジンは実に“待ち”が少ない。エンジン回転が2000rpmまで落ちたような状況からアクセルを全開にしても、たとえそれが3速のギアを選んでいても、もたつくことなく7000回転後半まで吹け上がってくれるのである。

またパーシャルで留めるような場面からアクセルをジワッと踏み込んでも、ギクシャク感を伴うことなく、過給がきれいに追従してくれる。速さは感じてもその質が暴力的じゃないのは、こうしたパワーの出し方に洗練を帯びたことと、軽量化したとはいえ通算4代目となったWRXの、基本骨格の重さの両方が影響している。

ただいくら爆発的ではないと言ってもフロントウィンドから流れる景色は恐ろしいほど速い。左右を緑で遮られたグンサイだからということも十分あり得るが、感心を通り越して呆れるほど速いと思う。そしてその速さをアクセル操作でスムーズにコントロールできることに、感動を覚えたのである。

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