直噴搭載新911ターボ 新型ユニットは合格か
掲載 更新 carview! 文:吉田 匠/写真:ポルシェジャパン
掲載 更新 carview! 文:吉田 匠/写真:ポルシェジャパン
2004年に水冷エンジン初代のタイプ996から2代目の997へのモデルチェンジがおこなわれたポルシェ911は、08年になると今度はタイプ名は997のまま、その後期型へのマイナーチェンジを開始した。とはいえ、タイプ名に変更がないことを理由に997前期型から後期型への変更を「マイチェン」と呼ぶとすれば、それは明らかにいわゆる「ビッグマイナー」だった。なぜならそれは「マイチェン」にもかかわらず、大半のモデルでエンジンがまったく新しいものに替わったからである。で、その後期型への「マイチェン」の波は、ついに911シリーズのフラッグシップともいえるターボにも及んだ。
タイプ997後期型ターボは今年9月のフランクフルトショーにデビュー、その1ヵ月後の10月にはヨーロッパ西端の国、ポルトガルを舞台にして国際プレス試乗会が開かれたが、その変貌ぶりはやはり「マイチェン」のイメージを大きく逸脱するものだった。
まず、クルマの基本要素のひとつであるエンジンが替わった。水冷水平対向6気筒ツインターボという基本形式は、もちろん変わっていないが、新しい997後期型ターボのエンジンは前期型とはまったく別物で、共通部品は事実上皆無。911ターボは水冷最初のタイプ996以降、空冷エンジンの基本構造を受け継いだ縦割りクランクケースを持つ通称「GT1クランクケース」3.6リッターエンジンをツインターボで過給していたが、997後期型ターボは、現行カレラSやカレラ4Sのそれと同じ新開発の一体式クランクケースを備える直噴3.8リッター水冷フラット6を、ツインターボ化したものを搭載する。
「GT1クランクケース」エンジンは、997後期型でもGT3とGT3RSには今も搭載されているが、それはGT3やRSが本来、レーシングチューンされてコンペティションに出撃するためのベース車両だからだ。つまり、レースで高回転を駆使して長時間酷使される可能性のあるクルマには、今でも「GT1クランクケース」エンジンが必要だというのが、ポルシェの見解なのだろう。今や911ターボがシリアスなレースに出る可能性は皆無だし、そのターボから派生して出現するかもしれないGT2も、今やレースには出ていない。だから911ターボのエンジンは「GT1クランクケース」仕様ではなくなったのだと思う。
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