新型ロードスターには作り手の強いメッセージがある・岡崎五朗
掲載 更新 carview! 文:岡崎 五朗/写真:菊池 貴之
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もちろん、それでも2人しか乗れないクルマを購入するのには思い切りが必要だ。しかし、荷物がほとんど積めないホンダS660と比較すると、ロードスターは少なくとも独身やカップルならファーストカーとしても使える必要最小限の実用性を確保している。普通のクルマに乗っている人からすると、とんでもなく使い勝手の悪いクルマだと感じるだろうが、20代のとき初代ロードスターに乗っていた経験から言えば、買ってしまえば案外何とかなるもの。
そしてここが重要なポイントだが、ある種の割り切りをしてロードスターのようなモデルを手に入れると、クルマに対する概念がガラリと変わる。A地点からB地点までの移動に使う便利な道具である以上に、A地点からB地点までの移動の時間をいかに楽しく過ごすか。さらに言うなら、クルマを趣味の一部として生活にとりいれることの素晴らしさにきっと気付くはずだ。
もともとロードスターに興味がある人にしてみれば、スポーツカーに乗る意義の説明など、何をいまさらという感じかもしれない。けれど、クルマの道具化が進み、趣味性を求める人がどんどん減っているいまだからこそ「クルマ」という商品を再定義することが求められているのだと僕は思う。ガレージに収まっている姿を想像するだけで気持ちが高ぶり、走らせれば魂が震え、ひいては人生を楽しく豊かにしてくれるもの。誰が言ったか「一台のスポーツカーは風景を変える」という言葉がある。平凡な風景であっても、そこに一台のスポーツカーがあるだけでグッと色づいて見える。それと同じように、一台のスポーツカーは間違いなく人生を彩るスパイスになる。クルマはもっともっと楽しくなるんだ。ロードスターから感じるのは、そんな作り手からの強いメッセージであり、また将来のクルマの在り方に対する希望でもある。
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