「トヨタ産業技術記念館」と「元町工場」を見学して感じた、世界一の自動車メーカーの力の源とは
掲載 carview! 文:編集部/写真:編集部、トヨタ自動車 6
掲載 carview! 文:編集部/写真:編集部、トヨタ自動車 6
トヨタの中でも屈指の歴史と伝統を誇る元町工場ですが、現在の生産規模は年16万3000台。ほかの工場は年20万台ほどなのでやや小ぶりですが、「新しいタイプの車を量産していく工場」として“マルチパスウェイ”を掲げ、トヨタの工場としては珍しく1つのラインで様々なモデルを生産する「混流生産」を行なっています。
筆者は以前、同じく混流生産を行うマツダの本社工場を見学したことがありますが、トヨタの工場はマツダのそれと比べ工場内に人が少ないイメージです。
どちらが良い悪いという話をするつもりはありませんが、説明員の「機械ができることは極力機械で、人の手が必要な所は人が」という言葉が徹底されている印象でした。
場内は様々な部品を積んだ無人の自動運搬台車が行き交い、各種工作機械がひっきりなしに動き続けています。聞けば、やはり製造現場も “人不足”が深刻のようで、その分人材育成に力を入れていると説明員の方が仰っていました。なお、時々自動運搬台車が止まっており、こういった何かしらのエラーを日々カイゼンしているそうです。
トヨタの工場といえば「TPS(トヨタ生産方式)」が有名ですが、その本質は無駄を徹底的になくすること。元町工場で作られるクルマは、製造ラインで流しやすいよう設計段階から工夫されていたり、地道なカイゼンを徹底し、ライン上には「無いものは自分たちで作る」の精神で様々な工夫が施されていました。資料が散乱する私の仕事用デスクとは大違い……(滝汗)。
筆者が驚いたのは、ラインの床面に貼ってあった黄色いシート。聞けば、天井からの明かりを反射し下回りを照らすレフ板のようなもので、これにより作業効率が格段に高まるそうです。
ちなみにシートを貼るだけなので維持費が0円というのも超ポイント。元町工場で導入された技術やノウハウは他の工場にも展開されるそうで、「次来た時には別の光景が広がっているかも(説明員)」というほどカイゼンを徹底して常にラインが進化しているそうです。
仕事柄、新車の発表会など煌びやかな瞬間に立ち会う機会も多いですが、その煌びやかさの土台となっているのは、一見すると地味ながらも愚直なまでに小さなカイゼンの積み重ねであることがわかります。
トヨタの力の源泉は先に述べた創業者の情熱であり、無駄を徹底的なまでに排除することでその情熱が無限動力として回り続け、誰かの役に立っているのだと今回の取材で改めて実感しました。電動化やコネクティビティ、カーボンニュートラルなど、自動車は100年に一度の大変革期を迎えていますが、創業者の、そして現場一人ひとりの情熱が込められたトヨタ車が今後どのように人々の生活を豊かにしていくか、これからもその動向を追いかけていこうと思います。
(終わり)
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