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「トヨタ産業技術記念館」と「元町工場」を見学して感じた、世界一の自動車メーカーの力の源とは

「トヨタ産業技術記念館」と「元町工場」を見学して感じた、世界一の自動車メーカーの力の源とは

トヨタ産業技術記念館(写真:編集部)

トヨタの力の源を探る

売上高45兆953億円、営業利益5兆3529億円、グループ全体の世界販売台数1109万台(2023年度)。いまでこそ日本企業として燦然とした数字を並べるトヨタですが、豊田自動織機内に「自動車部」ができたのは1933年。

戦前から戦後の激動の時代に、日本国の発展のためにトヨタ自動車を興した豊田喜一郎氏(以下、喜一郎氏)の足跡と苦悩は多くのところで語られているので本稿では割愛しますが、そんなトヨタの歩みと力の源を改めてお勉強するために、carview!編集部員がトヨタ産業技術記念館と元町工場を取材してきました。

トヨタ産業技術記念館は、トヨタグループ発祥の地に立つ博物館です。大正時代の工場を産業遺産として後世に残しながら、日本の近代化を支えた繊維機械と自動車技術の変遷を見学できる施設で、今年の6月で開館30周年。取材当日は、外国人観光客や課外実習と思われし小学生の姿が目立ちました。学校の授業で行ったという読者の方も多いのではないでしょうか。

トヨタ産業技術記念館は、「繊維機械館」と「自動車館」に分かれており、前半の繊維機械館ではトヨタ自動車のルーツである織機が実動状態で展示されています。グループの創始者である豊田佐吉氏(以下、佐吉氏)が23歳の時に初めて発明した「豊田式木製人力織機」から最新の全自動機械までがびっしりと並び、トヨタの原点を感じることができます。実際に目の前で大きな音を鳴らしながらバタバタバタバタッ……と生地が織られていく様は圧巻です。

当日は1時間ちょっとという短い取材時間ながら、贅沢にも第7代館長を務める大洞和彦氏が案内してくれました。大洞氏は「お国のために貢献することを決意し佐吉は発明家を志した。その中でも織機に絞って発明を行ったのは、母の機織りが大変だったから。母を楽にしてあげたいという親孝行が発明の原点」と教えてくれました。

さらに奥に進むと現れる「自動車館」では、喜一郎氏が工場の片隅で自動車を作り始め、量産に至るまでのプロセスを見ることができます。大洞氏は豊田・プラット特許権譲渡契約調印に触れ「自分たちがイチから作った技術(織機の特許)が世界で評価されたことが自信に繋がったのではないか」と、自動車メーカーへの一歩を踏み出した経緯を話してくれました。また「ジャスト・イン・タイム」といったトヨタ生産方式を象徴する考えも喜一郎氏の頃には生まれていたと言います。

佐吉氏と喜一郎氏どちらにも共通するのは、戦前・戦後の国が豊かでない中、周囲に反対され多くの苦難に直面しながらも、誰かのために、あるいは国の発展のために、多くの犠牲を払いながら壁を乗り越えた強烈なフロンティアスピリッツの持ち主だということです。

時代が違うと言えばそれまでですが、「事なかれ主義」が横行する現代では忘れられた、荒々しくも力強い挑戦への情熱こそ二人の共通した力の源泉ではないでしょうか。

トヨタ産業技術記念館のロビーには、「研究と創造のシンボル」として「環状織機」が展示されています。環状織機は、無限動力を夢見た佐吉氏発明の集大成ですが、二人の「誰かの役に立つものづくり」への情熱こそ無限動力であり、現代のトヨタ躍進の礎になったと感じました。

ちなみに、トヨタ産業技術記念館は全部をちゃんと見ようとすると丸一日かかるほど展示内容が充実しているので、腰を据えてしっかり見たい方はちゃんと時間を作って見ることをお勧めします。機械好きなら間違いなく楽しめる施設なので、筆者は今度、もっと時間をかけて改めてちゃんと観覧しようと心に誓い移動のバスに乗り込みました。

(次ページに続く)

◎あわせて読みたい:
>>なぜトヨタは「F1復帰」と言わなかった? GRとハースが組む莫大なメリットと、そこに込めた豊田氏の想い

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