新プリウス・プロトタイプ超速試乗＆大量フォト!

スタート価格205万円を考える

最も重要なのが、プリウスらしい未来感だ。報道陣が飛びつく派手さはないが、エコ・コンシャスの高い人々に訴える要素が盛り込まれている。オプションで設定されるソーラーパネルは、駆動用に使うほどの発電量はないものの、晴れた日に車内を換気してエアコンを使うことによる燃費の低下を抑えている。エコドライブをサポートする「エコモードスイッチ」を備えたり、植物を原料にしたバイオプラスチックの採用を広げたのも、エコ・コンシャスの高い層に訴える点だ。

直接、環境を意識させるわけではないが、わかりやすい未来感の演出もなされている。外部からエアコン操作が可能だったり、指で触れたところをセンターメーターに表示するタッチトレーサーディスプレイなど、このプリウスから新採用された機能も多い。

そして最後に、日本のユーザーが最も気になるであろうインサイトと勝負だ。インサイトが189万円からという価格帯で登場し、この不況下にもかかわらず売れている。それを横目に、プリウスも205万円からという噂が流れている。

消費者としては「低価格は大歓迎！ と言いたいところだが、正直なところ私としては、トヨタがハイブリッドの低価格競争にプリウスを巻きこむことに戸惑いが隠せない。プリウスの強みは、これまでプリウスに取って代わるだけのオルタナティブな選択肢がなかっただけに「プリウスでなくてはダメ」というユーザーがいるところだ。インサイトが189万円で販売したところで、ハイブリッド・オーナーを広げることにはなっても、従来のプリウスの顧客を奪い取ることにはならないのに、なぜ、真っ向から低価格競争を挑むのか？

プリウスは、ただ安くて壊れないことが売りだった日本車に環境という付加価値を与えた最初のクルマであり、日本車がフィロソフィを持ち始めた第一歩である。実際、普通のエンジン車よりメカニズムが多いのだから多少高くて当たり前だし、その価値を認めるユーザーが誇りを持ってエクストラを払っていたはずだ。感傷的なことを言っているのではなく、これほどの台数を売るクルマをディスカウントして屋台骨が揺るがないのか。その解決策が、下請けを締め付けることにならないといいのだが。

新型プリウスの完成度が高いだけに、価格はじっくり考え発表して欲しい。企業として安く作る努力はして欲しいが、実態にそぐわない価格にしてハイブリッドの将来性を潰して欲しくないからだ。