2020年はコロナ禍の影響で、全体的に低調だった国内の新車販売。日本の自動車メーカートップであるトヨタも、前年比では下回ったものの、初めて国内登録車シェアで50%を上回り、トヨタの強さが際立つ結果となった。
このように国内シェアをじりじりと押し上げつつあるトヨタは2020年、トヨタ店、トヨペット店、カローラ店、ネッツ店と4系列あった販売系列の統合をおこなった。
迫る危機!! クルマが売れない!! どうなる日本の新車市場 少子化と格差拡大で続く市場減少
この統合により、人気車だった「タンク」が兄弟車「ルーミー」と統合、営業車の定番「サクシード」が兄弟車「プロボックス」に統合されるなど、影響は出てきているが、本格的な影響は今後出てくると思われ、その動向には注目が集まっている。
実は日産は、22年前に5つの販売系列を2つに、その2つも15年前にひとつに統合している。本稿では、この日産の販売系列統合による影響を振り返りつつ、トヨタの販売系列統合が今後どのような展開となるのか、考察していく。
文/吉川賢一 写真/NISSAN
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日産は販売店統合で「利益アップも車種間格差は拡大」
レッドステージで扱われたティーダ ★レッドステージの主な車種/シーマ、グロリア、スカイライン、プリメーラ、サニー、ウイングロード、ステージア、エルグランド、バサラ、セレナ、ティーノ、シルビア、サファリ、マーチ、キューブなど
日産の販売系列は、かつて、日産店・プリンス店・サニー店・モーター店・チェリー店の5つに分かれていた。それを1999年4月のディーラー網再編で、レッドステージ、ブルーステージの2系列まで統合。バブル崩壊後、販売が低迷していた日産としては、国内販社間で競わせて販売を促進したい、という狙いがあったようだ。
「プリンス店」(スカイラインなど)、「サティオ店」(サニーなど)、「チェリー店」(パルサーなど)の統合により誕生したのがレッドステージ、「日産店」(ブルーバードなど)、「モーター店」(ローレルなど)の統合により誕生したのがブルーステージ。
ざっくり、レッドステージはスポーツイメージの車種を、ブルーステージはファミリーユースの車種を、という区分けがおこなわれ、これによって客層を明確にわけようとしていた(全車種が取扱われるレッド&ブルーステージもあった)。
だが、2000年以降、車種の大幅な統廃合が進んだことで、2系列体制は2007年に終わりを迎え、日産・国内販売会社に統一、全店舗で日産の全車種の販売がおこなわれることとなった。
1990年代の日産は、ラインナップが多い割に利益が低く、車種統廃合によるコストカットをしないと、会社が成り立たないところまで追い込まれていた。
2系列化によってラインナップを減らし、セレナ(レッド)、ティーダ(レッド)、エクストレイル(ブルー)など、突出して売れる車種が誕生してくれたことで利益はあがったが、これらばかりが売れることで、不人気車種は全く売れないという状況に陥った。
ディーラーでクルマを販売するカーライフアドバイザー(以下CA)のなかで、「放っておいても売れていくクルマがあれば、不人気車種を頑張って営業しなくともいい」と捉えられたのかもしれない。
もし仮に、レッドステージとブルーステージに顔違いの「兄弟車」があれば、2系列間で競い合うことがあったかもしれない。車種間に色濃い明暗が生まれてしまったことは、日産の販売系列統合が生んだ「罪」であろう。
開発の「恩恵」と国内ラインナップの「暗い影」
ブルーステージで販売されたエクストレイル ★ブルーステージの主な車種/プレジデント、シーマ、セドリック、ローレル、セフィーロ、ブルーバードシルフィ、ステージア、ウイングロード、エルグランド、サファリ、テラノ、エクストレイル、マーチ、キューブなど
日産の販売系列統合は、開発サイドにも恩恵があった。2000年代以降、グローバル企業化を加速させた日産は、国内販売車種が削減されたことにより、グローバルで競争力のある車型に開発力と資金を集中することができた。
そうして生まれてきた、「ノート」、「マイクラ」、「エクストレイル(北米ローグ)」、「キャシュカイ(デュアリス)」、「アルティマ/マキシマ」などにより、日産は業績をV字回復させることができた。
できた余裕で、人気車の更新や不人気車のてこ入れもすることができる。2010年頃までの好調な日産では、こうした良いサイクルができていた。
しかし、国内ラインナップが減ったことは当然、国内の販売には暗い影を落とした。車種が少ないことは、当然、顧客の入り口が狭まる。馴染みのCAは「乗換を迎えた顧客へ紹介できる新車が少なすぎる」と嘆いていた。
また、当時の日産社内では、国内ラインアップの手薄さを危惧していた者が多かった。当時社員であった筆者も、日々開発に励むなか、開発に携わるクルマの多くが海外向け、という状況には、残念な気持ちと同時に、「国内の日産はどうなるのか」という危惧も抱いていた。
クルマをつくりたくて日産に入社しても、自分がつくったクルマが国内で走る姿を見ることができない、というのは、筆者が当時抱いていたもやもやのひとつだった。
販売店数の大幅削減もおこなわれている。かつて3000箇所あった日産系ディーラーは、いまでは2000か所程度にまで削減されている。これまでお世話になっていたディーラーが、ある日突然、隣のディーラーへと統合され、前出の馴染みのCAが転籍になっていたこともあった。販売店削減もまた、現場の嘆きのひとつだ。
トヨタの全53車種にどれだけ「愛情」を注げるか
全店で全車を扱えるようになれば、どこでも好きなクルマを買う(見る)ことができ、お客様にとって利便性が上がるのは間違いない。これまでは、同じ販売系列へと出向かなければならなかった故障や点検も、全店で取り扱ってくれれば、対応してくれる店舗が増える。
取り扱い車種が増えることで、カーライフアドバイザーの負担が増える、という見方もあるが、知人のCAは、「お客様へ紹介できる車種が増えて営業の幅が広がる」と、ポジティブに受け止めていた。自店舗でも人気車を扱えるようになったことで、安定した売り上げ台数を確保できるようにもなったという。
倒産すれすれからの回復のため「効率化」を狙った日産と、今後さらに販売を強化するための販売網再編が主な目的と思われるトヨタとでは、販売系列統合の事情はまったく異なる。
今後も、日産のように販売現場が嘆くほどの車種統合は行われないであろうし、多くの人気車種を抱えるトヨタでは「車種間格差」の心配よりもむしろ、「ずらっと人気車種を並べて選ぶことができる」というメリットの方が大きいかもしれない。
しかし、現在国内ラインアップが乗用車だけで53車種もあるトヨタで、CAやメカニックがそのクルマに関してどの程度の知識や愛情をもっているか、というのは少し懸念される点だ。
日産5系列販売を行っていた時代のプリンス店には、スカイラインに熟知しているカーライフアドバイザーやメカニックが多かった(写真:R34型スカイラインGT-R/販売期間:1998~2002年)
例えば、かつて日産が5つの販売系列を持っていた時代、プリンス店のCAやメカニックは、スカイラインに関するメカニズムや歴史などを熟知している方が多かったと聞く。少ない車種に愛情をもつことで、熱のこもった営業やきめ細かい対応も可能であろう。
クルマが好きな筆者としては、平らな知識をもっているCAさんよりも、そのクルマに詳しい方とのほうが、信頼関係を築きやすいと感じる。
トヨタの販売系列統合は、吉と出るか凶と出るか。販売にめっぽう強いトヨタではあるが、クルマに対して愛情や知識が「広く薄く」なり、そこへ、もし日産やホンダが盛り返してくるようなことがあれば、簡単に顧客を奪われてしまう、という懸念もなくはないだろう。
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みんなのコメント
トヨタがどうとか言う時点で間違ってるよ。
それが出来るのは1990年代前半まで、
つまり30年前の感覚で物事を言ってるし
その間に日産で失われたものを棚に上げないでね。