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ランドクルーザー70系、プリミティブな走りの魅力【再掲】

ランクル70の乗り味を改めてチェックする

――2023年中の再々販が噂されるトヨタ「ランドクルーザー70」。搭載されるパワートレインなど、ネットでは様々な情報が飛び交っているが、そのベースは2014年の再販時とほぼ同じと見られている。

そこで今回は、自動車ジャーナリスト金子浩久氏による、2014年に再販売された際の試乗記を、一部改編した上で再掲載してお届けする。10年前の記事だが、まるでのいまの現状を予言したかのような示唆に富んだ内容となっている。

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世界で活躍するランドクルーザー

トヨタ「ランドクルーザー」ほど、世界中で愛用されている日本車もないだろう。しかも、都市部や郊外で遭遇することより、文明の及ばない辺境の地でバッタリと出くわすことの方が多かったりする。

ランドクルーザーには仕向け地別に異なったボディが載せられていることもあって、オーストラリアや南アフリカなどで見たランドクルーザーは後席から後ろが一段高くなったルーフを持っていたし、全長も日本で見るものよりも長かった。中東やアフリカの紛争を報じるニュース映像の中では、体制側と反体制側どちらもがランドクルーザーに機関銃を据え付けて撃ち合っていたりする……。世界では、僕たちの知らないランドクルーザーがたくさん走っているのだ。

その数はちょっとビックリするほど多く、2013年に日本から輸出されたランドクルーザーは、200シリーズとプラド、そして70シリーズを合計すると、なんと一年間で約35万6000台にも上る。そのうち70シリーズに限ると、7万6287台。月にすると、約6500台も輸出されている。

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その数字は輸出開始の1985年から伸び続けていて、2013年は過去最高の台数を記録した。輸出先として特に多いのは、中近東、アフリカ、東アジア/オセアニア、中南米など。日本では2004年に国内販売を終えている70シリーズなのだが、このように海外では引く手数多で大活躍しているのである。

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日本では10年ぶりの復活

そんなに外国ではモテモテなのに、日本では10年前に販売を終了してしまった。その理由は、「2004年8月まで日本仕様を生産していましたが、国内のディーゼルエンジンの排ガス規制が厳しくなり、それをクリアすることが難しく、生産を終了しました」(トヨタ自動車・製品企画本部ZJプロフェッショナル・パートナーの大原義数氏)

大原氏の説明を聞いていて筆者が思ったのは、ディーゼル規制が強まったことに加えて、当時のトヨタ「ハリアー」などに代表される「アーバンSUV」の類が次第に求められるようになったことも含まれるのではないか。70シリーズのようなヘビーデューティなフレーム付きの「オフロード4輪駆動車」は敬遠されていったというマーケットの嗜好の変化もあったに違いない。

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しかし、どんなに時代が変化しようが「70シリーズでなければならない」というユーザーは少数なのかもしれないけれども、絶対的に存在する。熱心な愛好家に限らず、林業や農業などに従事している人々にとっても“働く相棒”として頼りになる存在なのだ。そうした人々からの強い要望に応え、70シリーズ誕生30周年を記念して、日本仕様の再発売に決定が下されたのが2012年のことだったそうだ。

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懐かしさがこみ上げてくる

日本仕様として販売するにあたり、ディーゼルに換えて4リッターV6のガソリンエンジンを搭載し、テールライトユニットをバンパー内部に移し(従って、ボディ四隅のものはダミー)、左フロントフェンダーにミラーを追加、リアシートのヘッドレストを大きなものに変更した。

以前に運転したのがいつだったのか思い出せないほど久しぶりの70シリーズは、まずシートに座るところから他のクルマと違う。ステップに足を載せ、ピラーと天井のハンドルを掴みながらよじ登るようにしないとシートに座れない。懐かしい。オフロード4輪駆動車は、みんなこうだった。

高い位置から見下ろすことになるので、運転席からの視界は抜群。最新のSUVと比べると装備や装飾はシンプルだから、ダッシュボードやセンターコンソール周りなどはアッサリしている。床からは長いシフトレバーがニョッキリと生えている。そう、トランスミッションは5速マニュアルなのである。

その脇に副変速機のシフトレバーがあって、ハイレンジとローレンジにそれぞれ2輪駆動と4輪駆動を組み合わせたものを選べる。デフロックのスイッチはステアリングホイール裏のダッシュボードにロータリー式のものがあって、位置も操作感もいい。

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プリミティブな魅力に溢れている

搭載する4リッターV6エンジンは、アイドリングから静かでスムーズ。申し分ないのだけれども、70シリーズのようなクルマにはお上品過ぎる気もしなくもない。

クラッチとシフトの操作も軽々。2速発進も問題ない。乗り心地と操縦性も、オールドファッションなオフロード4輪駆動車そのものだ。加減速を行ったり、ハンドルを切ったりすると、ボディが前後左右に大きく揺れる。でも、それは決して不快ではない。むしろ面白い。大きな道具を操っているという感覚に溢れている。

丁寧に運転すればクルマはそれに応えてくれるし、雑に扱ったらその分こちらに跳ね返ってくる。最近のクルマのようにクルマが解決してくれる部分が少なく、ドライバーがやらなければならないことが多い。そう、ドライバーが主役なのだ。SUVという言葉と概念が生まれる前、オフロード4輪駆動車はみんなこうだった。富士山麓のオフロードコースに足を踏み入れると、その感は一層強くなった。

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駆動力を分配して難所も乗り切る

発進前にトランスミッションのギアをニュートラルにし、副変速機のレバーで「L4」(ローレンジでの4輪駆動)を選び、目の前の轍にタイヤを沿わせながらオフロードコースを上ってみた。路面の傾斜角度はまだ20度未満だが、湿った土がタイヤを滑らせる。しかし、エンジンからの駆動力をトランスファーが4輪にジンワリと伝え、ゆっくりと登っていく。

そこから先の急斜面には人間の頭ぐらいの岩がゴロゴロしていた。人が歩いて登れないくらい勾配が険しい。ダッシュボードの電動デフロックスイッチを回して、フロントとリアのディファレンシャルをロックする。これだけ大きな岩が連続する急斜面だったら、どこかで必ず片輪が浮き上がって空転してしまうだろうから、反対側のタイヤに駆動力が伝わらなくなってしまう事態を事前に回避するためだ。

案の定、片輪どころか右前と左後ろ、左前と右後ろというように対角線上の2輪が浮き上がるほどのハードなセクションだったが、デフをロックしたので難なく登り切ることができた。

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クリーンディーゼル登場に期待したい

回転半径が大きく、狭いセクションで切り返しを行わなければならなかったが、視界が優れているので問題ない。強いて言えば、ドアの内側に設けられたパワーウインドウスイッチが邪魔だった。ウインドウガラスを下ろし、路面とボディの位置を見極めるのに上半身を乗り出して目視するの際に、スイッチが意外と大きくて脇腹に当たるのだ。ダッシュボードかセンターコンソールに移した方がいいだろう。

エンジンもスムーズなのは結構なのだが、ここはやはりディーゼルの粘りが欲しい。ランドクルーザーに限らず、トヨタはディーゼルエンジンの開発に対して消極的なように見えるが、パワートレインは目的に則すべきなのだから、ここはぜひ新世代のクリーンディーゼル登場に期待したい。

せっかく使い込んだマウンテンブーツを履いているのに、ヒラヒラの付いたシルクのドレスシャツを着ているようなチグハグ感がずっと付きまとっていた。

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限定生産ではもったいない

今回のランドクルーザー70シリーズの再発売は素直に喜びたいが、喜びたいがゆえに注文もある。注文とは「2015年6月30日の納車分まで」という限定生産についてだ。

「限定生産の理由は、後方から追突された場合に、追突してきたクルマのボディ下への潜り込みを防止する国内の規制が強化されるためです」(前出の大原氏)

こうしたクルマは、前述したように時代の移り変わりとは関係なく、つねに一定の需要がある。その需要は流行やマーケティングなどとは遠いところの、切実で真剣なものであることが多い。トヨタの技術力を以てすれば、強化される規制をクリアすることなど十分に可能なことだろう。

「(ランドクルーザー70シリーズはプリウスやアクアなどのハイブリッド車に遠く及ばない燃費なので)継続生産するとトヨタ全車種の平均燃費を下げてしまいます。それも避けたいので限定生産にしました」

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このクルマの国内での販売台数はトヨタ車全体から見たら微々たるものなのだから、受注生産で価格が上昇するようなことになっても、いつでも買えるようにしてもらいたい。それが本当にユーザーとファンの要望に応えることになるのだと思う。

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