日産ノートはこのジャンルでベストの1台だが乗り心地と価格は少し気になる
掲載 carview! 文:伊達軍曹/写真:市 健治 146
掲載 carview! 文:伊達軍曹/写真:市 健治 146
で、そういった予備知識をもとに新型ノートと対面しての第一印象は、「……キミ、昔と比べてずいぶんカッコよくなったね」というものだった。
先代のノートは日産が「販売台数No.1!」としきりに宣伝した車で、実際よく売れた車ではあったが、筆者に言わせれば3つの欠点があった。
ひとつは、内外装のデザインおよび質感が決定的にイマイチだったということだ。
もちろんデザインというのは人それぞれの判断基準が大きく異なるものゆえ、「自分はそうは思わない!」という人もいらっしゃろう。だが極力私情を排して客観的に見ても、先代ノートの茫洋としたフォルムと、ちぐはぐな内装デザインおよび素材質感は、とてもじゃないが「これが今、日本でいちばん売れてる車なんですよ!」と、外国から来た観光客に見せたい類のものではなかった。
しかし新型は違う。「タイムレス・ジャパニーズ・フューチャリズム」なるテーマに基づいたという、ボディ全体のフォルムとディテール。そしてバイザーレスのディスプレイや2階建てのセンターコンソールなどを中心とする「インテリアの造形そのもの」。そして内装に使われている素材や細かなデザイン処理のセンスを含め、「これが今度のノートです! いいでしょう?」と、どの国の人に対しても自慢してみたい出来栄えである。
そして作りの良いシートに腰を下ろし、シート位置やミラー角度を調整したうえでエンジンをかけ――というか電源をONにして走り出せば、誰もが新型ノートのクラスを超えたNVH性能(要するにNoise=騒音|Vibration=振動|Harshness=路面の凸凹による突き上げが小さいということ)に、まずは眼を見張ることになる。
まぁそれもそのはずで、先代ノートに使われていたプラットフォームは「Vプラットフォーム」という、主に東南アジア向けの日産小型車に幅広く採用されたものだった。しかし新型ノートに採用された前述の「次世代上級小型車向けプラットフォーム」は「CMF-Bプラットフォーム」というもので、こちらは主に日本やヨーロッパなどの自動車成熟国向けだ。
新興国向けプラットフォームを使っていたゆえの「安っぽい乗り味」が先代ノートの(筆者に言わせれば)2つめのウイークポイントだったわけだが、その欠点はもうほぼ解消された、というか「お釣りがくるぐらいだ!」と言っても過言ではない。
そして国道に出て巡航体勢に入ると、路面の良いところでは依然としてNVH性能がすこぶるよろしいことに気をよくするわけだが、同時に「エンジン音がほとんどしない」ということにも気づく。
先代のノートe-POWERでは、ことあるごとに「ぶおーん」という3気筒エンジン特有のダサい音が耳に届き、やや盛り下がってしまったものだ(ここが、筆者が考える先代の3つめの欠点である)。しかし新型e-POWERでは――アクセルペダルをガバッと踏んだときは別だが――計器を見ない限り、エンジンがかかっているか否かがドライバーにはほとんどわからないのだ。
この現象は遮音自体にかなり力が入れられていることに加え、世界初の技術であるという「路面検知によりロードノイズの状況を把握し、エンジンを制御する技術」が効いているようだ。
これは要するに、車輪に仕込まれたセンサーが路面状況をキャッチし、「今、荒れたところを走っているな? ということはロードノイズがデカいから、エンジンをかけてもバレにくいから今がチャンス!」と判断し、荒れた路面のゾーンで積極的にエンジンを始動させ、ロードノイズの中にエンジン音を隠しながらバッテリーを充電する。その結果として滑らかな路面=ロードノイズが小さい局面では、エンジンの作動頻度が低くなる――というからくりだ。
ドライブモードは「ECO/NORMAL/SPORT」の3種類があり、ECOとSPORTでは回生が強めとなるが、NORMALモードはガソリンエンジンAT車の「エンブレ」とおおむね差がないセッティングになっている。同乗者を乗せて市街地などをゆるりと走りたい場合は「ECO」でも普通に十分であり、同乗者を乗せて高速道路を走る場合や、自分ひとりでやや活発に走りたい場合は「NORMAL」が向いているだろう。
もちろん「SPORT」を選べばより力強くはなるが、「NORMALよりちょっと速くなる程度」でしかなく、その割にエンジン音がかなりデカくなり、燃費計の数字も目に見えて悪化するため、個人的には「SPORT」は不要なモードと感じた。「NORMAL」であっても、先代よりパワーもトルクも向上したモーターはほぼ不満を感じさせない。
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