GR86とロードスター990Sでワインディングへ。カーブの数だけ言葉を交わすことができる
掲載 carview! 文:山田 弘樹/写真:市 健治 137
掲載 carview! 文:山田 弘樹/写真:市 健治 137
さて、そんな990Sをワインディングで走らせると、いきなり“幸せ感”がフワッと込み上げてくる。
クラッチをつないでアクセルを踏み出せばプルル……と軽く身もだえしながら発進。オーバードライブのない6MT(6速のギア比が1.000なのだ)の小刻みなギア比で加速をつないでいくと、ほどよい中速トルクが背中を押して、シフトアップの度にまるで水泳の息継ぎをするように、自分のリズムで楽しく走ることができる。
1.5リッターの排気量を持つこの直列4気筒「SKYACTIV-G」は、小排気量ターボの潮流に迎合せず自然吸気エンジンの可能性を追い求めた、マツダの執念といえるエンジン。惜しむらくはその回り方があまりにクリーミー(摺動性が高い)過ぎ、エモさに欠けることか。クルマ好きから名機と呼ばれることはないかもしれないが、走らせるほどにジワジワと、その精緻さや完成度の高さが五感に伝わってくる。
1t切りの車重に合わせた足周りは、ふんわりとしなやかだ。ベーシックな「S」グレードに比べややスプリングレートを高め、逆にリアダンパーの伸び側を緩めたセッティングは、ロードスターらしい適度な“ヒラリ感”。それでもコーナーで姿勢が落ち着いているのは、セッティングの絶妙さに加えて「KPC(キネマティック・ポスチャー・コントロール)」が縁の下で機能してくれているおかげか。
KPCはロードスターのジオメトリー特性を使った制御技術で、コーナリング中に後輪の内側へブレーキを僅かに掛けることで、サスペンションの伸び、すなわち車体の浮き上がりを抑えてくれる。
総じて990Sは、最もロードスターらしい走りができるグレードに仕上がっている。ただ、走りに速さを求めてしまうとそのスイートスポットからはちょっとずれてくる。ロール剛性は相対的に低く、アグレッシブな走りを求めるならターンインでのフラつき感や、ロールスピードの速さにもっとシッカリ感が欲しいと感じるドライバーはいるだろう。
しかし、冒頭でも述べた通り990Sはスポーツモデルではない。そういう走りを求めるならば、やはりビルシュタインダンパーやリアスタビライザー、LSDを備えた「RS」や、パーティーレース用の「NR-A」を選んだ方が目的としてはピュアである。
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