ドイツの新戦略、48VマイルドHVで走るメルセデスS450の高い完成度
掲載 更新 carview! 文:山田 弘樹/写真:望月 浩彦 1
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さてようやく直列6気筒のフィーリングとなるが、これはメカニカルなストレート・シックスの鼓動感というよりは、現代的な洗練を帯びた直列6気筒の味わいだった。動弁系の心地よいバイブレーションが微かに伝わり、回転の上昇と共にこれが整って行くというかつてのドラマはなく、そのパワーはひたすらに超効率で発揮されて行く。
この点はV6時代も達成されていた内容だが、高回転域で伸びやかに突き抜けるパワー感、ターボらしからぬその気持ちよさには、唯一直列6気筒の美点を意識させられる。しかしながら日本の法定速度で367psを骨の髄まで味わうには、少しばかりモラルがジャマをする部分もある。
そういう意味では当日帰路で試した「S560 4マチック ロング」の4リッターV型8気筒(469ps)の方が、かえって日常域からそのパワー感やどう猛さを感じることができ、ワクワクとした高揚感や豪傑さが楽しめた。そしてV8を選ぶにしても直6マイルドハイブリッドを選ぶにしても、それをきっちり堪能できるドイツという国の環境には、少しばかりうらやましさを感じた。彼の地では、スピードでさえラグジュアリー性能なのである。
総じてS450は、日本人にとても親和性の高いモデルであると思えた。古き良きSクラスの質実剛健さを内包しながらも、実用域ではモーターと電動スーパーチャージャーが静静と走らせ、先進感だけでなく癒やしも与えてくれる。人柄のよいコンシェルジュにもてなされているような平和な時間を過ごし、ときにドライバーズカーとして鞭を入れることができるキャラクターは、メルセデスというブランドそのものなのではないか。
このマイルドハイブリッドを冒頭で“近代化のメス”としたのは、内燃機関の磨き上げをモーターでアシストすることで、メルセデスがSクラスに相応しい品質と環境性能を保ったからだ。当然、彼らもEVコンバートは視野に入れており、そこへ踏み込んだときは、我々が驚くような成果を見せてくれるはず。それまでは内燃機関の磨き上げがまだまだ不可欠。それをメルセデスという巨人が実行に移したというわけである。
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