意外!? 新型スバル ソルテラとトヨタ bZ4Xは良くできたEVだがパワーは控え目。試乗で見えた開発の裏側や満充電時の気になる点とは?
掲載 更新 carview! 文:塩見 智/写真:市 健治 39
掲載 更新 carview! 文:塩見 智/写真:市 健治 39
バッテリーは走行、充電性能や耐久性を考慮し温度管理システムが導入されている。バッテリー温度が高ければ冷媒による冷却水で、低ければ水加熱式ヒーターでバッテリー温度を一定範囲内に保つ。世界トップレベルの電気容量維持率を目標として開発したそうで、bZ4Xのバッテリー関連のエンジニアによれば、このバッテリーは普通充電中心の使い方と急速充電中心の使い方で性能維持にほとんど変化がないという試算が出ているという。今すぐ検証するのが難しいのがもどかしいが、これが間違いなければ、自宅で充電できない人がEVを検討するうえで非常にありがたい性能ということになり、個人的には心が踊った。
グリップコントロールという新機能を試すため、鉄骨を組んだ人工的なモーグル区間も用意されていた。グリップコントロールは悪路版低速限定クルーズコントロールで、設定速度を保って加減速してくれるので、ステアリング操作に集中できるというもの。まず右前輪が完全に浮いた状態となるが、一瞬空転した後、すぐに空転輪のみにブレーキがかかり残り3輪の駆動で進んだ。続いて左後輪も浮き、シーソーのギッコンバッタン状態。最後に左後輪のみが浮いた状態となるが、やはり残り3輪にしっかりトラクションがかかり、スムーズに前進を続けることができた。同じ区間をスバル自慢のX-MODEでスノー/ダートモードを選んで走行すると、浮いた車輪の空転がほとんど感知できないほど減り、よりスムーズに走行することができた。EVになってもスバルはスバルだった。bZ4XにもX-MODEは備わる。
その代わりというわけではないだろうが、予防安全装備はアイサイトではなくトヨタ・セーフティー・センスが両車に使われる。いずれにしても性能的には市販乗用車として満額回答であり、得られる安全性は変わらないはずだ。トヨタのアドバンストパークも備わり、縦列駐車、並列駐車ともに自動的に行ってくれるほか、車外からスマホでコントロールしながら駐車することもできる。
正しい文法ではないが、よく伝わりそうなのであえてこの表現を使うが、ソルテラ、bZ4Xは“普通に”よくできたEVだった。でも普通。他のEVに抜きん出て素晴らしいと感じる部分も劣っていると感じる部分もない。思うに、今年年央とされる発売のタイミングは、トヨタ、スバルが本当に発売したいタイミングだったとは思えない。たとえばbZ4Xはサブスクリプションの「KINTO」のみで扱われる。これは数年後のバッテリー性能のばらつきによる下取り価格の決め方などにはっきりとした基準ができていないことや、一気に普及を目指して戦略的価格でドカーンと販売するには、国内の充電器の数が足りないと考えていることが理由と思われる。
またbZ4Xの報道用資料には、ステアリングと操舵システムが機械的につながっておらず、操作を電気信号に変えて操舵システムに伝えるステアバイワイアシステムが紹介されているが、日本仕様へは採用されない。これは中国市場向けの装備で、その他の市場への導入タイミングは未定という。同システムとセットで、F1マシンのように9時15分の位置しかつかめない、持ち替えを前提としないステアリングを導入する予定もある。なるほどこれなら前述したメーターとステアリングホイールの被りもなくなる。
販売面、機能面ともにこうしたすべての体制を整えた、本来の発売予定時期があったのではないかと勘ぐってしまうのだ。それが大手メディア、海外メディアにBEVへの取り組みの消極性を指摘され続けたトヨタが、昨年末に突如15台のコンセプトカー披露を伴う例の「EV350万台計画」をキレ気味に発表した流れを受け、ソルテラ、bZ4Xの発売も前倒しせざるを得なかったように見える。もちろん日産アリア発売にぶつける必要もあったとは思うが。現時点でも価格次第で十分に主役をなり得るEVだとは思うものの、本来はさらなる完成度といろいろなサプライズを伴ってもう少しあとから登場させる予定だったのではないだろうか。
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