意外!? 新型スバル ソルテラとトヨタ bZ4Xは良くできたEVだがパワーは控え目。試乗で見えた開発の裏側や満充電時の気になる点とは?
掲載 更新 carview! 文:塩見 智/写真:市 健治 39
掲載 更新 carview! 文:塩見 智/写真:市 健治 39
アクセルオフによってモーター駆動ならではの強い減速度を得られるSペダルドライブが備わる。ATシフター脇のボタンを押してアクセルペダルを戻す。減速しない。あれ? ブレーキペダルを踏んで停止し、確認するとオンになっていなかった。確かにボタンを押したのに。理由は単純だった。朝イチの試乗枠ということでバッテリー残量がほぼ100%あったため、回生の余地がなく、オンにならなかったのだ。自宅で充電すれば、朝100%の残量でスタートすることもある。朝が最も滑りやすい路面状況も珍しくないわけで、ここは満充電にしてもSペダルドライブ用に回生の余地を残すなど、なんとかしてほしい。
走行を続け、残量が目視で90%程度になると作動するようになった。そこからはいわゆるワンペダルドライブが可能となる。アクセルペダルの操作のみでの加減速は実にコントローラブルで便利かつ快適。感覚的にはアクセルを戻すと同時に減速が立ち上がるが、実際には一瞬のタイムラグを設けることでドライバーにとって違和感のない減速を実現しているとのこと。本当に戻すと同時に減速させると操作しにくいそうだ。前後にモーターがあり、四輪で回生できる4WDのほうが低ミュー路での減速はコントロールしやすいはずだ。
残念ながら停止寸前でクリープに切り替わるため完全停止まではしない。スバル、トヨタのエンジニアともに「最後はドライバーがブレーキぺダルを確実に踏んで停止させるべき」とその理由を語る。交通の流れを乱さない範囲で、先を見据えてアクセルペダルから足を離し、ちょうど停止させたい位置で停止させるのは便利かつ効率的な動きだと思うが、操作に不安があるドライバーに合わせてクルマを設定することには不満が残る。オン/オフの設定もできるし。もし今80歳だったらこれでよしと思っただろうか。
ただバッテリー残量が減って作動させられるようになっても、下り坂による回生で残量が90%以上に復活するとまた一時的に使えなくなる。90%付近で使えたり使えなかったりのゾーンがあるのは、決定的ではないが不満といえば不満だ。
ソルテラにはステアリングにパドルが備わり、減速の強さを4段階から選べる。つまり走行中に左パドルを引く度に、エンジン駆動車のダウンシフト同様に減速が強まり、減速をコントロールすることができる。パドル操作で得られる最大の減速よりもSペダルドライブのほうが強い減速が得られる。bZ4Xにはパドルがない。
もう一点、bZ4Xと違ってソルテラはドライブモード選択が可能だ。パワー、ノーマル、エコの3モードがある。名前から想像する通りの挙動をする。パワーモードだから最高出力が上がるというわけではなく、アクセル操作に対しパワーが素早く立ち上がるのがパワーモードだ。反対にエコはアクセル操作に対し穏やかに反応する。
絶対的車重は重いが、車体中央の低い位置に重量物が集まっているため、曲がりくねったコースを走らせた際に重量バランスのよさを感じることができる。スバル・フォレスターよりも重心高が85mm低い。加減速がレスポンシブで、重量バランスに優れていることはクルマとして絶対的に正義で、どんなコース、どんな速度域でも正確で気持ちよいハンドリングを楽しみながら走らせることができる。
ソルテラ、bZ4Xのバッテリー総電力量(容量)は71.4kWh。最大150kWの出力での急速充電に対応するので、国内に存在するどの急速充電器であっても、その充電器がもつ性能を最大限発揮できる。航続距離性能は公表されていないが、70kWhもあれば多くの人にとってまずまず十分の実用性といえるだろう。容量は多ければ多いほどよいが、確実に高価になるし、重くなればなるほど、増やしただけ距離を伸ばせるわけではなくなる。日産「アリア」やヒョンデ「IONIC5」も同程度の容量ということを考えると、(おそらく)500万円級のEVの現時点での標準的な容量が70kWh前後ということなのだろう。
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