70万円高くてもマツダ3を買うならスカイアクティブXで。スペックは平凡なのに欧州車を凌ぐプレミアムな世界がある
掲載 更新 carview! 文:岡崎 五朗/写真:マツダ 4
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同じことがフットワークにも言える。多くのクルマが「スポーティ」を売り文句にステアリングの反応を敏感にしているのに対し、マツダ3はステアリングギアレシオをアクセラよりスローに設定してきた。こう書くと、鈍感でつまらないのでは? と思うかもしれないが、決してそんなことはない。素早く向きを変えたいときはステアリングを素早く切り込めばボディは遅れなくきっちり付いてくる。
この特性のメリットをもっとも強く感じるのが下りの高速コーナーのような繊細なステアリングが求められるシーンだ。人間にとって切り増しはしやすいが、切り戻しは難しい操作になる。また、切り戻しは逆方向の動きが入るためクルマも不安定になりやすい。その点、ややスロー方向に躾けられたマツダ3のフットワークは基本的に切り戻し操作を求めてこない。一発で決まるか、わずかに切り増すだけで狙い通りのラインをピタリとトレースする。この味を一度味わうと、気持ちのいいドライビングに必要なのはクイック感ではなく切れば切っただけ思い通りに曲がる特性なんだと納得できるに違いない。
乗り心地もいい。フラットな姿勢を維持しながら、路面の突起に対してタイヤがしなやかにたわみ、次にサスペンション、シートという順に各パートがしっかりと仕事をして身体に伝わる衝撃や揺れを効果的に低減してくれる。そこにSKYACTIV-Xがもつ一級品の静粛性と扱いやすさ、そして卓越した内外装のデザインと仕上げが加わることで、マツダ3は驚くほどプレミアムな世界をもたらしてくれる。
SKYACTIV-X搭載モデルの価格は314万円~362万円。決して安くはないが、「メルセデス・ベンツAクラス」はもちろん、「VW ゴルフ」と比べても価格優位性は確実にある。輸入車と比べるの? という突っ込みが入りそうだが、マツダ3はデザインやインテリアの質感、走り、静粛性など、総合性能でプレミアムブランドのライバルさえ凌ぐ実力をもっている。燃費、パワースペック、広さといった数字の世界ではなく、感覚に訴えかける部分を重視するならば、この値段を出す価値は間違いなくある、というのが僕の結論だ。
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