今、電気自動車を中古で買うのはアリなのか?
掲載 carview! 文:山本 晋也 55
掲載 carview! 文:山本 晋也 55
半導体不足など新車納期を伸ばしていた各種問題が完全に解消したとはいえない状況ですが、それでもメーカーやサプライヤーの努力により納期は短くなってきています。
新車納期が伸びていたことで高騰していた中古車相場もおのずと落ち着いてきている傾向にあります。新車がすぐに納車されないから即納の中古車を選ぶというマインドから、新車より手頃な価格のクルマとして中古車を探すという本来の姿に戻ってきたといえるでしょうか。
そんな中古車選びにおいて「次の愛車に電気自動車(EV)を狙っている」というユーザーも増えているのではないでしょうか。ガソリンスタンドの廃業による給油が困難になったエリアもあるでしょうし、電動化時代というトレンドを受けてEVを選ぼうという気持ちになっている方もいることでしょう。
初期のEVにおいてはバッテリー劣化による実質的な航続距離の短さが問題視されていましたが、最近のEVはそもそものバッテリー搭載量が増えたこと、バッテリー管理が進歩したことでかつてほど劣化する印象はありません。今後は中古車でEVに乗るというのも、一般的な選択肢となってくるかもしれません。
はたして、EVを中古で買うというのはありなのでしょうか。
気をつけないといけないのは、よく報道で見かけるEV補助金というのは基本的に新車購入時に給付されるもので中古車で買うときには利用できないということです。
一方で補助金の存在というのは中古車相場を下げることにつながっています。仮に新車価格が400万円だったとして、そこに85万円の補助金が給付されるとしたら、実質的な新車価格は315万円ということになります。特殊なプレミアがついた車種を除くと、中古車相場というのは新車購入予算を基準に、年を追うごとに落ちていくものですから、補助金の存在というのは車両価格のわりに中古車価格を下げる効果があるといえます。
逆に言うと、新車価格400万円のEVが5年で100万円まで落ちるから残価率は25%と低いと思ったとしても、本質的には315万円のクルマが100万円まで落ちたとみるべきかもしれません。それでも5年後残価率は32%程度なので高いわけではありませんが…。
ちなみに、上記の数字は日産「リーフ」のリセールバリューを参考にしたものです。メーカー希望小売価格399万円のリーフを年間1万kmのペースで利用したとして、5年後リセールバリューは100万円となっています。
実質的に315万円のクルマが5年後に100万円になるというのは残価率でいうと約32%です。これは、けっして良いほうではありませんが、極端に悪いわけでもありません。たとえば同じ日産のハイブリッドカーである「ノート」のリセールバリューを同条件で調べてみると同等レベルにあります。
EVについてはバッテリー劣化により走行距離が減ってしまうことが心配され、中古車を選ぶというのはリスクもありますが、補助金のおかげで見た目のリセールバリューが下がっていることはメーカー希望小売価格を基準とすれば割安ということであり、中古車を購入するユーザーにはポジティブな話といえそうです。
ただし、高年式の中古EVを探すのは難しいかもしれません。
日本で販売されているEVはリーフだけというわけではありませんが、中古車のサンプル数が十分にあるEVはリーフだけといえます。そこで現時点でのリーフの流通傾向を見てみると、5年落ちとなる2018年式が流通の中心となっています。そして、今年最初の車検を迎える2020年式は極端に少ない印象です。
たとえば、前述したノートでいうと5年落ちとなる2018年式の流通量を10としたときに、2020年式は2といった比率になっています。しかしリーフでは2018年式を10としたときに、2020年式は1の流通量しかありません。その理由としては補助金が影響していると予想されます。
EVの補助金を受け取った場合、基本的に5年間は保有することが求められるからです。
もちろん事情があれば手放すことも可能ですが、その場合は計算式に基づいて補助金を返納する必要があります。許可なく手放すと補助金の全額返納が求められることもあるほど厳しいのです(ちなみに天災などで廃車になった場合は返却を求められないこともあります)。
もろもろの手間を考えると「補助金をもらったし、5年間は乗っておくか」と考えるEVオーナーが多いことでしょう。それが高年式のEVが中古車市場で少ない傾向につながっているといえます。
とはいえ、販売店の試乗車だった個体は1年程度で中古車として流通します。また、どうしてもEVが性に合わなかったというオーナーが手放すケースもあるようです。そのため1年落ちくらいの超高年式といえる中古車はそれなりに見つけることができますから、コンディション重視ならば狙い目でしょう。
まとめると、EVの中古車というのは、リセールバリューが低い傾向があるために、もともとの車両価格を考えるとリーズナブルな価格で手に入れられるといえます。ただし補助金による「5年縛り」があるため3年落ちの流通量は少ない傾向にあるのが現状です。
<終わり>
写真:テスラ、トヨタ自動車、日産自動車、フォルクスワーゲンジャパン、三菱自動車、BYDジャパン、ヒョンデモビリティジャパン
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