フルタイム4WD化で身近になったジープ・ラングラーの、それでも硬派な悪路走破性能
掲載 更新 carview! 文:塩見 智/写真:FCAジャパン 1
掲載 更新 carview! 文:塩見 智/写真:FCAジャパン 1
続くモーグル路では、このクルマの優れたホイールアーティキュレーション(接地性)が際立っていた。リジッド車軸を活かし、片輪が縮んだらもう片方の車輪が伸び切ることで、両輪が接地を保つ。リアも同様。4輪の接地性はオフローダーにとって最も大事な性能のひとつだ。今回は必要な場面がなかったが、ルビコンにはフロントスウェイバーディスコネクトという機能が備わる。これを使うとスウェイバー(スタビライザー)の効果が制限されることで、ホイールアーティキュレーションはさらに向上する。とにかくラングラーは4輪の接地性こそが何よりも優先される。4輪が接地している限りトラクションは逃げず、走行不能に陥ることがないからだ。
ところが近頃のモノコック系4WD車は車輪の接地性を最優先とはしない。浮いてしまった車輪は電子制御の横滑り防止装置でブレーキをかけて空転を止めればよいと考えているからだ。実際、車輪が浮いても空転しなければトラクションは逃げず、残った車輪に伝わり走行を維持できる。しかし、接地しているのが3輪以下の状態は4輪が接地している状態に比べて不安定だ。加えて電子制御部品はいくら整備を重ねても故障のリスクを消し去ることはできない。パーツの流通していないへき地での故障は乗員の生死を左右しかねない。これに対して接地性といった基本性能は壊れることがない。これがジープの基本理念だ。軍用車生まれのDNAという言い方もできるかもしれない。
特設コースを抜け、一般道を走らせる。従来型に比べ、乗り心地がよくなった。相変わらずフレームシャシーにボディを乗せるボディ・オン・フレームタイプのシャシーを採用し、前後リジッド車軸(コイルサス)だが、それによる不都合はない。荷室にロールケージが通っているために見た目よりも荷室が狭いことや、車重が重く直4ターボでも燃費に期待できないことに目をつむれば、ファミリーカーとしても使える。
ラングラーの性能を考えれば今回FCAが設定した特設コースはイージーすぎた。昨夏、自分よりも背の高い岩場が折り重なるルビコントレイル(アメリカにある世界で最も過酷なオフロード。ラングラーの開発拠点のひとつでもある)をまったくの市販車の状態の新型ラングラー アンリミテッドで走破した取材を思い出しながらそう感じていた。
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