日産GT-R 12年モデル サーキットで全開試乗
掲載 更新 carview! 文:小沢 コージ /写真:篠原 晃一
掲載 更新 carview! 文:小沢 コージ /写真:篠原 晃一
まず見た目だが、3年たってもGT-Rは基本変わらない。専用のブレーキクーリングシステムを付けた「TRACK PACK」のみ、フロントバンパー左右に見落としがちなエアインテークが付いているがせいぜいそれくらい。しかしこれまた後述するが、価値を落とさないための当然のやり方なのだ。
なによりも走りだ。まず一般道想定の側道を走り出すなり感じたのは乗り心地の良さ。一流スポーツカーだけにある程度は硬いし、揺さぶられ感もあるが、ゆっくりと低速で走った時のざらつきの無さは初期型GT-Rとは段違い。劇変している。同時に2010年モデルの時点で消えていた、ギアボックスをリアアクスルに置いたトランスアクスルがゆえのデメリット、「カラカラ」という安っぽいギア鳴りも無くなっている。
しかし、なんといってもビビったのは「直ドリ」だろう。走行前、教祖水野さんに「濡れた路面だと滑るんで気をつけてください」と言われていたが、前後トルクスプリット4WDのGT-R、簡単にタイヤなんか暴れないとタカをくくってたらビックリ。少し濡れた路面だったが、3速約4000rpmでそれは起こった。グォーッっと底から湧き出るようなトルクがわき起こり、なんと直ドリ!
そう、あまりの巨大トルクで直線でリアが滑り出し、微妙にカウンターステアを当てざるを得なくなったのだ。なななんだこりゃ! 普通に乗ってて直ドリなんて約10年前、中古のフェラーリF40で公道を乗った時以来だ。あの時はターボのウェイストゲートが作動しっぱなしで明らかに暴れん坊だったが、GT-Rは違う。大人しく見せといて、旧型とは性格がガラリと激しくなっている。
というか足回りは改良されてさらに良くなってるはずだから、今回のエンジン改良がいかに凄いかだ。教祖曰く「同じエンジンとは思えない」と言ったが、その言葉にウソはない。理由は職人の手によるインテークとヘッドの合わせ面の研磨やナトリウム封入エキゾーストバルブの採用などもあるが、一番はエンジンの冷却効率アップだという。ヘッド回りの冷却水の通りなどを改善することで、燃焼室を従来より約10度下げることが出来、高負荷時の燃料噴射を数%濃くするどころか、薄くして燃費を改善すると同時に、パワーまで上げることができた。要するにハイパワーターボの最大の欠点である燃料冷却を減らすことができ、燃焼を根本的に改善したわけだ。
地道であり、なんとも効果的な進化。しかも実体験としての“変化”が素晴らしい。事実、サーキット試乗会では初期型GT-Rオーナーのうちのかなりの人が買い換えを決めたそうである。そりゃそうだ、ポルシェでもなかなか出来ないパフォーマンスアップに加え、エコ化もなされ、アウトバーン等での高速燃費は10数%改善されたという。要はぶっ飛ばせばぶっ飛ばす人ほどお得で楽しい改善なのだ。言い方は悪いが、さらに純度の高い“GT-R麻薬”の投入に他ならない。そりゃ中毒患者からすればサインせざるを得ないだろう。
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