BMW 1シリーズのグレード選びのキモは「ディーゼルにするかガソリンにするか」にあり?!
掲載 更新 carview! 文:編集部/写真:篠原 晃一 748
掲載 更新 carview! 文:編集部/写真:篠原 晃一 748
BMW「1シリーズ」は、BMWのエントリーモデルに相当するCセグメント(フォルクスワーゲン「ゴルフ」ぐらいのサイズ感)の5ドアハッチバック。2004年に登場した初代と2011年登場の2代目は、クラス唯一のFRレイアウト(後輪駆動)を採用していましたが、2019年8月に発売された現行3代目は、一般的なFFレイアウト(前輪駆動)にプラットフォームが刷新されています。
ボディサイズは全長4355mm×全幅1800mm×全高1465mmで、全幅は先代モデルより35mm拡大されましたが、全長は5mm短くなり、ホイールベースも20mm短縮されました。しかし一般的に室内スペースを広く取ることができるFF用プラットフォームを採用したことで、現行型1シリーズの車内は先代よりも逆に拡大。荷室容量も先代より20L多い380Lで、後席背もたれを倒せば最大1200Lまで広げることが可能です。
エクステリアデザインは、他の新世代BMW各車と共通する大きなシングルフレームデザインのキドニーグリルや、従来どおりの4灯式LEDヘッドライト、L字型をモチーフとしたテールランプなどを採用。
インテリアも最新世代のBMW車の文法にのっとったデザインで、5.1インチの液晶型メーターパネルと、センターコンソール上部に8.8インチのコントロールディスプレイを標準装備。オプションで「BMWライブ・コックピット」と呼ばれる10.25インチディスプレイに変更することもできます(※後述するM135i xDriveはBMWライブ・コックピットを標準装備)。
パワートレインは、FFの「118i」は最高出力140psの1.5L直3ガソリンターボエンジンに7速DCTを組み合わせ、同じくFFの「118d」は最大トルク350Nmの2L直4ディーゼルターボエンジン+8速ATという組み合わせ。超スポーティグレードであるフルタイム4WDの「M135i xDrive」は、最高出力306psの2L直4ガソリンターボ+8速スポーツATという組み合わせです。
最新世代のBMW車ですから、1シリーズは当然ながら運転支援機能も充実しています。
ACC(アダプティブ・クルーズ・コントロール)やクロス・トラフィック・ウォーニング(リア)等々からなる「ドライビング・アシスト」は全車標準装備で、35km/h以下の速度で前進した直近50mの軌跡を記憶し、その軌跡どおりに後退する際にステアリング操作を自動で行う「リバース・アシスト」を含む「パーキング・アシスト」も、全車に標準装備されています。
クラス唯一のFR(後輪駆動)であることが最大のセリングポイントだった1シリーズがFF(前輪駆動)に変わったことで、「そのドライビングフィールは劣化したのではないか? しかもエンジンは3気筒になっちゃったし……」と不安に思う方もいるかもしれませんが、それは杞憂です。
FR車のステアフィールに昔からなじんでいる人は、最初のうち若干の違和感も感じる可能性はありますが、一般的なドライバーであれば「FFうんぬん」が気になる瞬間はいっさいないはず。現行型1シリーズは、非常に気持よく走り、そして曲がることができる車です。
118iが搭載する1.5Lの直3ガソリンターボエンジンは3気筒エンジン特有の嫌な振動などは特に感知できず、そして7速DCTとの組み合わせで「おいしいところ」をしっかり使うことができるため、力不足を感じることもほとんどありません。
そして350Nmという極太トルクの2L直4ディーゼルターボエンジンを搭載する118dであれば「力不足」など感じるはずがなく、306psの2L直4ガソリンターボを積むM135i xDriveは「……目が追いつかないぐらい速い!」といった印象になります。
現在販売されている1シリーズのグレード構成と、ぞれぞれの車両価格は以下のとおりです。
118i Play | 417万円 |
---|---|
118i M Sport | 455万円 |
118d Play | 441万円 |
118d M Sport | 479万円 |
M135i xDrive | 662万円 |
「118i」と「118d」「M135i xDrive」の違いは前述のとおり、搭載エンジンと駆動方式の違いです。118iは140psの1.5L直3ガソリンターボを搭載するFF車で、118dは350Nmの2L直4ディーゼルターボを搭載するFF車。そしてM135i xDriveは306psの強力な2L直4ガソリンターボを搭載する4WD車です。
ややわかりにくいのは、118iと118dに設定されている「Play」と「M Sport」の違いでしょうか。
「Play」は現行型BMW 1シリーズの中ではもっともベーシックなパッケージですが、「M Sport」には、主に以下の専用装備が与えられています。
このほかM Sportでは、オプションで「Mスポーツ・ブレーキ」や「Mリアスポイラー」などを装着することも可能です。
「とにかく一番速くて一番スポーティな1シリーズが欲しい!」という場合のおすすめグレードはM135i xDriveで決まりでしょうが、あくまで一般的な1シリーズを好む場合のおすすめは「ガソリンターボとディーゼルターボのどちらにするか?」「ベーシックなPlayにするか、それともスポーティなM Sportにするか?」という2点から検討する必要があります。
後者の「ベーシックなPlayにするか、それともスポーティなM Sportにするか?」というのは、正直どちらでもいいというか、「各自のお好み次第」でよろしいかと思います。
スポーツサスペンションと純正空力パーツにより「低く構えた感じ」に見えるM Sportのルックスは素敵ですが、現行型1シリーズのスタイリングはPlayであっても十分スポーティです。また18インチ+スポーツサスではなく「17インチホイール+ノーマルサスペンション」になるPlayのしなやかな乗り味もある意味スポーティであり、それはそれで魅力的です。
それよりも悩ましいのは「ガソリンターボとディーゼルターボのどちらにするか?」という問題でしょう。
これも基本的には「各自のお好み次第」ではあるのですが、もしも「ディーゼルターボのほうが24万円高い」という現実を許容できるのであれば、おすすめは118d StyleまたはM Sportということになります。
前述したとおり1.5Lの直3ガソリンターボエンジンもまったく悪くないというか、むしろ「かなりいい感じ」ではあるのですが、118dが搭載する2L直4ディーゼルターボエンジンは、すべての面においてそれを少しずつ上回っています。全域においてパワフル&トルクフルであり、回転フィールや静粛性も上々で、そして燃費性能にも優れる――ということです。24万円の価格差を納得したうえで“お釣り”までくるのが、118d StyleまたはM Sportなのです。
現行型1シリーズのライバルとなるのは、同じCセグメントと呼ばれるクラスに属するフォルクスワーゲン「ゴルフ」とプジョー「308」ということになるでしょう。
1シリーズとゴルフおよび308の最新世代はどれも空恐ろしいほどの完成度を誇るCセグハッチバックですので、おいそれと「一番優れているのは○○で、2番目は□□。それに対して△△は操安性の面で若干劣る」などと評価することはできません。超繊細なプロレーサーが運転する場合はさておき、筆者を含む一般的なドライバーが運転する限りにおいては「……どの車も素晴らしい!」としか思えないはずです。
ということは、「どれを選んだってOK」ということでもあります。
この3モデルはそれぞれ、価格もドライビングフィールも燃費も若干の違いはありますし、それ以上に「デザイン」と「雰囲気」はかなり大きく異なります。そんな3モデルのうちの“どれ”が自分のセンスや好み、あるいは予算感に合うかは、ディーラーでの試乗と「見積もり書」を通じて決めるしかないのです。とはいえ結果としてどれを選んだとしても、大いに満足できる買い物になるだろうことは間違いありません。
そういったことを踏まえたうえで“あえて”言うとすれば、「スポーティなフィーリング」と「ラグジュアリーなイメージ」を重視したいのであれば、おすすめは1シリーズです。
これは「ゴルフや308はスポーティでもゴージャスでもない」という話ではなく、それら2モデルも十分以上に走りはスポーティであり、イメージや装備はゴージャスです。
しかし、走りに関しては“味付け”の部分で1シリーズのほうがほんの少々スポーティであり、実質ではなく“ブランドイメージ”の部分において、フォルクスワーゲンやプジョーよりもBMWのほうが「なんとなくゴージャス」と人に感じさせるものです。
Cセグメントハッチバックというのはかなりの激戦区ですので、そこの最新世代である1シリーズと前述の2車、あるいはメルセデス・ベンツ「Aクラス」やルノー「メガーヌ」などとの間に「圧倒的な性能差」はありません。「どれも素晴らしい!」といったニュアンスの乗り味と諸性能、そしてブランドイメージなのです。
しかしそんな中でもBMWの、乗り味における「スポーティな味付け」と、ブランドイメージにおける「いいモノ感」は、ライバルを頭半分ほどは上回っているように思えます。
実質的にもイメージ的にも「スポーティ」で「プレミアムな感じ」のハッチバックを求めている人にとって、現行型1シリーズは間違いなく「最適な選択肢」のひとつ。ご検討中の人は、そのまま迷わず商談の細部を詰めていくべきでしょう。
<おわり>
※2022年9月30日時点の情報
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