パジェロ ディーゼル試乗AT仕様は英断である
掲載 更新 carview! 文:川端 由美/写真:荒川 雅臣
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もうひとつ、大きく変わったのは排ガスだ。日本でディーゼル車がほぼ全滅したのは、厳しくなった排ガス規制に適応できなかったからだ。厳密に言えば、今現在、新型パジェロに積まれる3.2Lディーゼル・ユニットをクリーン・ディーゼルと呼ぶことはできない。現行の新長期規制をクリアし、日本で発売することはできるが、日本政府は2009年から施行されるポスト新長期規制をクリアするディーゼル・エンジンをクリーン・ディーゼルと呼ぶ、という見解を示したからだ。
しかし、新型パジェロにクリーンではないという烙印を押してしまう前に知って欲しいことがある。技術的に見れば、ポスト新長期をクリアする術が三菱になかったとは思えない。パジェロほどの大型ボディならば、パジェロが選んだリーンNOx触媒ではなく、メルセデス・ベンツやアウディが選択した尿素SCRという技術でポスト新長期をクリアする手がある。あるいは、日産がエクストレイルで試みたように、ATをあきらめてMT仕様で発売することもできたはずだ。
そう、今の技術では、どこの自動車メーカーも「尿素SCR/リーンNOx触媒」「AT/MT」という選択を迫られている。現時点では、ポスト新長期をクリアするには、尿素SCRを使うかMT車に仕立てるしかない。つまり、尿素SCRを選べば尿素水補給のインフラ整備や尿素タンクを積むスペースに頭を悩ませることになり、MTを選べばAT大国の日本でMT車がどこまで売れるかというリスクも発生する。
そんな状況下で、三菱はあえて排ガスの浄化レベルを新長期規制レベルに留めても、リーンNOx触媒+ATという「普及が見込める選択肢」を選んだ。乱暴な言い方かもしれないが、パジェロがクリアする現行の新長期規制でも10年前のディーゼルと比べたら飛躍的に排ガスがクリーンになっている。当然、三菱では、ATと組み合わせてもポスト新長期をクリアする新しいディーゼル・エンジンを開発中だ。
いまや、排ガスによる健康被害の問題と平行して、CO2排出量の削減という地球環境問題も無視できない状況になっている。一般にディーゼル・エンジンの方が燃費がよく、CO2排出量を低減できるというメリットがあるが、ディーゼル車を普及させることによるメリットはそれだけではない。日本はガソリンに偏った需要になっていて、エネルギー・バランスが悪い。その結果として、エネルギーを使って軽油をガソリンに換えているのだが、その過程でもCO2が発生する。
ディーゼルを礼賛するわけではなく、パジェロのような大きなSUVにはディーゼル・エンジンが向いていて、パジェロにディーゼルというオルタナティブな選択が増えたことを素直に歓迎したい。
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