WRX STI tSに試乗！ イメージが変わる走り

情熱とこだわりが生みだした逸品

もちろん、それでいて6MTモデルは本来のWRX STIが持つキレ味の良さをしっかりと残しながらも上質さを存分に盛り込むことに成功し、スポーツ性の高さに加え、“質”の良さが語れる感触を融合できている。

この辺りはまさに、近年のSTIプロダクトを象徴する走り味の真骨頂だろう。今回のtSも“乗って試して自分で作る”辰己氏だからこその、絶妙なさじ加減がひとつひとつのパーツで実現されてその走りを表現しているのだ。

WRX STI tSおよびWRX STI A-Line tSは2011年3月14日までの受注期間で、400台限定という形で1月25日から発売される。先に記したシャシーの変更やカーボンルーフ採用の他、アルミフードも採用するなどしているが、その他にも見た目では内外装に専用のパーツが装着される。価格は6MTが472万5000円、5ATのA-Lineが422万1000円。内容を考えれば価格アップ以上のものが実現されているし、何より冒頭で記したように、WRX STIであることを疑うほどの洗練された上質な世界観を持っている。

今回のモデルに触れると、改めて日本にも世界レベルの料理を出せるシェフがいることを痛感する。要はいかに情熱とこだわりを持ち、決して常識にとらわれることなく自身の想い描いたものを実現できるか、なのだろう。それができるからこそ、現在のSTIプロダクトはこれほどまでに魅力的なのだといえる。そしてこうしたプロダクトを地道に送り出していくことによって、そこにはブランドというものが構築されていくのだろうと思えた。

そして同時に、ここまでSTIプロダクトを事ある毎に見続けていると、自然と次のステップが見えてくることに僕は気づいた。次のステップ。つまり車名にSの頭文字が付くWRX STIが登場する暁には、このtSの走り味をさらに一歩先へと押し進めた上で圧倒的なパフォーマンスを見せつけてくれる、スーパーなスポーツセダンになるに違いない、ということである。