日産「スカイライン NISMO」発表 これが最後の純エンジンスカイラインかもしれない
掲載 更新 carview! 文:編集部 109
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8月8日、日産は「スカイライン NISMO(ニスモ)」とその特別仕様車「スカイライン NISMO Limited(リミテッド)」を発表しました。スカイライン NISMOは1000台限定で9月上旬に発売、スカイライン NISMO Limitedは100台限定で2024年夏に発売予定です。
まず初めにスカイライン NISMOの特長をご紹介したあと、後半では発売前に開催された試乗会でのレポートをお届けします。
基本的な仕様は「400R」をベースにしています。エンジンはGT500のレース用エンジンに携わった開発者がチューニングを施し、最高出力を405psから420ps、最大トルクを475Nmから550Nmに向上(いずれも400R比)。
高められたパワーはドライビングモードで加減することができ、SPORT(スポーツ)とSPORT+(スポーツプラス)モードではNISMO専用のAT変速スケジュールに変更し、加速力を高めています。
強力なパワーを受け止める足回りは、リアタイヤの幅を20mm拡大し(245/40R19→265/40R19)、ノンランフラットの専用開発タイヤを採用(400Rはランフラット)。ホイールはリム幅を広げ剛性も高めた、NISMO専用エンケイ製19インチホイールを採用しました。
サスペンションはリアタイヤの幅広化にあわせ、リアスタビライザーのばね定数を44%、フロントスプリングのばね定数を4%上げることで、前後最適なセッティングとしました。ステアバイワイヤ方式のダイレクトアダプティブステアリング(DAS)とインテリジェントダイナミックサスペンションの電子制御ショック機能は400Rのものを流用しています。
ブレーキには400Rに対して耐フェード性を1.5倍に高めたブレーキパッドを採用。専用タイヤとブレーキパッドにあわせてABSの制御を見直し、制動距離を短縮させています。
ボディの補強として「R35 GT-R NISMO」とその「Track edition(トラック エディション)」などにも採用されている「高剛性ガラス接着剤」を前後ガラスに採用し、全体ねじり剛性が約15%高められています。
エクステリアでは、NISMO専用の前後バンパーとサイドシルカバーを装備し、空力性能を向上。またスカイライン伝統の「赤GTバッジ」をフロントフェンダーに装着しました。
インテリアは、400Rをべースに全体を黒基調で統一し、運転席まわりではレッドセンターマーク付きの専用本革巻きステアリング、280km/hスケールのスピードメーター、NISMOロゴを配したレッドリングタコメーターなどを採用。またNISMO専用チューニングのレカロ製シートをオプション設定しています。
ボディカラーは、専用色の「NISMOステルスグレー」を含む、全5色を設定しています。
同時に発表されたスカイライン NISMO Limitedは、横浜工場の「匠ライン」にて特別な資格をもつ匠が一つ一つを手組みで仕上げる高精度なエンジンを搭載。
つや消しガンメタリック塗装のホイールを特別装備し、エンジン組み立て担当者を記した匠ラベル、100台限定を刻印した専用シリアルナンバープレート、専用エンブレムを装着します。
ボディカラーは、ホワイトパール、NISMOステルスグレー、ダークメタルグレーの3色を設定。
気になる走りはどうなのか? ということで、事前に開催された試乗会に編集が参加しました。試乗コースは日産のテストコースで、試乗車両はスカイライン NISMOでOPのレカロシート装着車です。
ドライビングモードを「STANDARD(スタンダードモード)」にして走り出します。このモードはその名の通りとても普通。昨今めっきり少なくなってしまったV6エンジンのなめらかな加速を味わいながら、過不足ない加速感を楽しむことができます。ゆったりリラックスして乗るモードとしては最適です。
好印象だったのが、乗り心地。ノンランフラットタイヤに変更されたため、フロントサスペンションのバネレートが高められたにも関わらず、路面からの当たりが柔らかくなっています。テストコースということで、一般道のような「生きた道」だとどうなのか? という懸念はありますが、一般道を模した路面の乗り心地も上々だったので、良好な乗り心地を提供してくれるはずです。
次の周回でドライブモードを「SPORT+」にしてみます。少しだけ強めにアクセルを踏み込んでみると、猛烈なGを伴いながら加速! コーナーではステアリングを切っていくと1800kg弱のボディをものともせず、鼻先からスっとクリアしていきます。
しかし、ドライブモードをスタンダードにもどせば途端にジェントルなセダンに戻ります。この二面性がスカイライン NISMOの魅力といえるでしょう。
気になった点は、基本設計の古さです。2013年発売とすでに登場から10年を経過しており、乗り心地やハンドリングは良好ではあるものの、同クラスの最新の欧州プレミアムブランドのモデルと比較してしまうと、走る、曲がる、止まるの基本的な挙動と、乗り心地の質感が一世代前のフィーリングであることは否定できません。
そして価格設定も気になるところ。スカイライン NISMOが788万400円、レカロシート装着車は847万円、スカイライン NISMO Limitedにおいては947万9800円と、まさに欧州プレミアムブランドの同クラスの価格帯に近い設定なのであります。ハンドメイドエンジンの特別仕様とはいえ、リミテッドにいたっては900万円台とかなりお高い…。
ここで思い出すのは星野朝子副社長の「スカイラインを諦めない」という言葉。
これは2021年に「スカイライン開発中止」報道がされた際のコメントです。現時点でNISMOが登場したという観点でいえば、現行スカイラインを諦めていないという意味で捉えられなくもないですが、「この先もスカイラインは続く」という意味でなのであれば、将来登場するかもしれない電動化された「次世代スカイライン」とも捉えることもできます。
となれば、タイミング的に純ガソリンエンジンのスカイラインとしてはこれが最後のモデルとなることは間違いなく、スカイライン NISMO Limitedに搭載される手組みのエンジンは、その最上級のメッセージかもしれません。
いわばスカイライン NISMOは「コレクターズモデル」であります。お値段は張りますが、ラストチャンスかもしれないこの機会をぜひお見逃しなく。
<終わり>
写真:日産自動車、編集部
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