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秘策はジェット機!? R34の面影も。生産終了が噂されたGT-R、24年モデル登場の舞台裏

GT-Rに24年モデルが登場

GT-Rは作り続ける

2007年の登場以来、進化・熟成を続けてきたR35型「NISSAN GT-R」も今年で16年目となる。水野和敏氏から開発責任者を引き継ぎ、現在はブランドアンバサダーを務める田村宏志氏は「見た目や型式を変えずに中身を進化させる方法はたくさんある」と語るが、巷では「2022モデルで生産終了」と言うウワサが流れていた。

その理由は「車外騒音規制(フェイズ2)」だ。これは2022年9月以降に発売されるモデルに適応される規制で、GT-Rが所属するカテゴリーは車外騒音値が74デシベル以下でなければダメなのだが、現行モデルの車外騒音値は76デシベル……。

音量を下げるだけならともかく、「動力性能を一切犠牲にせず」となると対応は厳しいと言われていた。

しかし、日産の開発陣はその難問をクリアしただけなく、更なる進化をプラスしたモデルを登場させた。それが東京オートサロン2023でお披露目された「2024モデル」である。

田村氏は「2024モデルを出すキッカケは2022モデルを出した時です。『こんなにGT-Rを切望しているのに買えなかった人がたくさんいる……』という事実を目の当たりにして、『作り続けるべきでしょ!!』と思いました。しかし、法規をクリアすればOKではなく、新型としての魅力がなければダメ」と語る。

そもそも、動力性能を一切犠牲にせずにどうやって車外騒音規制(フェイズ2)をクリアさせたのか?

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秘策はジェット機にあり!?

当初は「マフラー容量を3倍に引き上げ消音、リアタイヤをフロントと同じ255サイズに変更」と言う案もあったと言うが、それを採用せずに実現させるアイディアはジェット機にあったそうだ。

具体的には、サイレンサーに繋がる排気管形状を二股に変更。この二股の部分にジェットエンジンのタービンブレードを参考にした形状を採用することで、排気ガスが発生させる気流の渦を細かく分割・分散させて音の成分を高周波と低周波に分け、エネルギー損失を最小限に下げることに成功した。

厳密に言うと出力は僅かに下がっており、ブーストをはじめとする制御の最適化と新形状のサイレンサー採用なども同時に行ない従来同等のパフォーマンスを確保した。

ちなみにその音質は、従来の野太いサウンドから高周波の「シャー」とジェット機の「ファー」がミックスされたような“新たなGT-Rサウンド”を奏でるという。

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R34スカイラインの面影も

このように、性能を一切落とさず騒音規制をクリアした開発陣は更なる高みを目指した。それがハンドリング向上のための空力改善で、「NISMO/Tスペック」共に前後バンパー/ウイングが新デザインとなっている。

これは意匠ではなく機能(=ダウンフォース向上)のための変更だ。一般的にはダウンフォースを上げるとCd値(空気抵抗)は悪化してしまうが、悪化をフロント開口部の小型化でカバー。当然冷却性が心配になるが、解析の進化により最適形状を導き出してクリアしている。

リアはセパレーションエッジの延長やスワンネック形状のリアウイング(NISMO)の合わせ技により、空気の整流とリリースが向上したことでダウンフォースが向上。これらの改良で、トータルのダウンフォースは約13%増(NISMO)だ。

TスペックはNISMOに比べると控えめなデザインだが、フロントのエアスプリッターなどはNISMOでの知見をフィードバックした形状を採用。筆者はこのデザインを見て「R34スカイラインGT-R」の面影を感じたが、田村氏にその印象を伝えると「それは鋭い、実はR34の『Nur』を意識しています。新しい物で全てを変えるではなく、『どこかで見たぞ?』と“懐メロ”じゃありませんが、どこか落ち着くところがある。そんなイメージでデザインしてもらいました」と教えてくれた。

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NISMOは機械式LSDを投入

もちろん、フットワークもシッカリ手が入っている。NISMO/Tスペック共に電子制御サスペンションの制御変更が行なわれているが、NISMOはそれに加えフロントLSDの採用、サスペンション減衰力変更、「アテーサE-TS(4WD)」のチューニングも行なわれている。

田村氏は「フロントLSD(機械式)は『筑波の最終コーナー足りないな』、『ニュルでもトラクションが抜けるな』と言う反省もあり投入しました。機械式特有のピーキーな動きができないように作るのは大変でしたが、ノーズがスーッと入ってクルっと回るようなクルマの動きを実現。その結果、4WDのトルク配分を含めて全てをやり直しました」と語る。

これらの変更でコーナリングスピードが更に向上したと言うが、それによってシート剛性が足りなくなりレカロシートも刷新されている。カーボンシェルなのは従来と同じだが、剛性値を上げながら軽量化を実施。カーボンむき出しのレーシーなデザインも魅力だ。

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GT-Rにはまだ“伸び代”がある

このように、最新のGT-Rにふさわしい魅力がプラスされた2024モデル。もちろん6速のままのトランスミッションや運転支援デバイス未採用など気になる点が無いわけではないが、今はGT-Rが継続されたことに感謝したい。最後に田村氏は次のように語ってくれた。

「日産の強みは、ユーザーからのニーズや思いついたアイデアを素直に表現、そして開発できるチームが揃っていることです。しかも、企画の無茶な提案に対しても、『そう来ると思っていました』と予想し、引き出しを持っているメンバーが多い。皆の『GT-Rを開発したい!!』、『GT-Rを続けたい!!』と言うエネルギーが色々なことを動かしていますね」。

現時点では“史上最強のGT-R”となる2024モデルだが、田村氏の言葉を聞いていると“伸び代”はまだまだありそうな気がしている。

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