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ニュル最速のLFA試乗 求めたのは“至高の味”

手を合わせる代わりにスロットルを

とても厳かな気持ちが胸に広がった。バケットシートに身を沈めステアリングを握ると、思わず息が詰まった。そしてスターターボタンを押す。すると間髪入れずセルが回りV10エンジンに火が入る。僕は手を合わせる代わりに、スロットルを一度短く、しかし少し多めに開けた。

独特の甲高い嘶きが身体を貫く。気を引き締め直して右のパドルを引き、スタートする。この時点でもう全てがわかった気さえした。だから思わず心の中で「こういうことだったのですね」とつぶやいた。そんな僕のつぶやきは、トヨタおよびレクサスのテストドライバーが属す実験部の頂点に立つトップガンであり、マスタードライバーとも呼ばれていた故・成瀬弘氏に届いただろうか?

ニュルブルクリンク(以下ニュル)近郊の小さな村にあるトヨタのガレージから出た目と鼻の先で、成瀬氏は今から約1年半前の6月23日、テスト中に事故にあい残念ながら亡くなられた。その時テストしていたクルマこそ、いま僕が試乗させてもらっているレクサス・LFAニュルブルクリンク・パッケージ(以下ニュルパケ)だった。

実は昨年の3月、伊勢神宮に行った時に偶然、成瀬氏とすれ違った。その時はいつもの調子で僕に、「遊んでいないで仕事しろ」と一喝してくれたのだった。そして奇しくも僕はその後、ニュルにいる成瀬氏の元を訪れたい、という旨を自動車専門誌「XaCAR」の編集長・城市邦夫氏を通して依頼していた。しかしそのリクエストは残念ながら叶うことがなかった。5月にはニュル24時間耐久レースに取材に行ったものの、トヨタの開発現場を訪れる機会はなく、また次の機会に、と思った矢先のことだった。

そうした経緯があっただけに、今回の試乗は極めて感慨深いものとなったのだ。

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