マツダがMX-30で11年ぶりにロータリーエンジンを復活させたワケ
掲載 carview! 文:編集部/写真:マツダ 100
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ーーロータリーの火は消さない。ロータリーはマツダのアイデンティティであり、飽くなき挑戦の象徴である。
9月14日、マツダは「MX-30 ロータリーEV(以下:MX-30 R-EV)」の予約を開始した。価格は423万5000円からで、発売は11月を予定している。
>>11年ぶりの復活。MX-30ロータリーEVはBEVとPHEVの良いとこ取り、マニア垂涎の特別仕様車も
MX-30 R-EVは、マツダのコンパクトSUV「MX-30」に新たにラインアップされたモデルで、マイルドハイブリッド、電気自動車(BEV)に次ぐ第三の矢。マツダ独自の固有資産である「ロータリーエンジン」を発電機として使用し、125kW/260Nmの電気モーターで走行するPHEVとなる。
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注目はなんと言っても、ロータリーエンジンの復活だろう。ロータリースポーツ「RX-8」の生産中止から11年ぶりの登場である。
新開発の「8C型」ロータリーエンジンの排気量は0.83L、最高出力は53kW/4500rpm、最大トルク112Nm/45000rpmというスペック。発電用に特化し、MX-30のコンパクトなフロント部に収めることを前提に、ローター幅は86mm(-4mm*)、創成半径は120mm(+105mm*)の1ローター式を採用する。
*RX-8に搭載された「13B RENESIS」比
ロータリーエンジンと言えば、モーターのような回転フィールと称されるその独特な味や音、コンパクトかつ高出力による高い運動性能など、スポーツカー用エンジンとして多くのファンがいる。ル・マン24時間耐久レースを日本車として初めて制したのもロータリーエンジンである。
しかし今回搭載されるのは、コンパクトSUVのMX-30。しかもロータリーは一切の駆動を行わず発電に徹するシリーズハイブリッド方式。MX-30主査の上藤和佳子さんはキッパリと「ロータリーは脇役、黒子です」と話す。
事実、1ローターのため自慢のロータリーサウンドも美声を響かせてくれなければ、かつて東京モーターショーで公開した「RX-VISION」のような専用車でもなく、あくまでもMX-30のバリエーションの1つ。ファンがヤキモキするのも頷ける。
>>MX-30のユーザーレビュー・専門家の評価はこちら
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マツダは将来のBEV普及率を25~40%(2030年)と予想するが、その値の幅は広い。また国・地域によっても普及率に差がある側面もある。
国内メーカーは次世代のパワーソースを全方位をカバーするマルチパスウェイ戦略を取っており、マツダもマルチソリューション戦略を掲げている。王者トヨタは様々な技術を全方位的に開発して着々と未来へ備えているが、世界全体でシェア約2%のマツダが同じことをやろうと思ってもできないのが実情なのだ。
しかし、いつまでもディーゼルエンジン一本に頼ることもできず、来たる電動化時代を見据えたマツダの新しいカードが、今回の「e-SKYACTIV R-EV」、すなわち完全新設計の「8C」ユニットなのである。
そのため、あえてロータリー専用モデルを開発せず、「CX-5」や「CX-30」といった量販モデルへの搭載でもなく、「新しい価値の創造」をブランドテーマとしている「MX-30」にまずは搭載し、市場の反応・様子を伺っているのである。
なお発電用エンジンであれば既存のレシプロエンジンの流用でも良さそうだが、小型・軽量という特徴もさることながら、ミソはロータリーの拡張性の高さ。ガソリンだけでなく、LPGやCNG、水素燃料との相性も良く、どんな未来に転がったとしても、さまざまな地域で対応できるようにするための現実的かつ合理的な策なのだ。
>>MX-30の気になる点は? みんなの質問はこちら
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とは言ってもロータリーエンジンである。マツダ社内でも、かつてロータリーエンジンに携わっていた人間が「作りたくてしょうがなかった」と言うほど思い入れのあるマツダ独自の固有資産。現場が沸き立たないわけがない。
8Cの開発に携わったエンジニア曰く、物理的にはロータリーが発電だけでなく駆動も担う“直結”も可能とのこと。さらに、コンパクトさを活かしエンジンの縦置きすら“技術的”にはできるという。筆者にはエンジニアの目がキラキラと輝いているように見えた。現実問題はさておき夢は広がる一方である。
もちろん今後の状況次第というエクスキューズは付くが、あくまでもMX-30 R-EVは将来へ向けての第一歩。ファンとしては、まずはロータリーエンジンの復活を喜びつつ、ロータリーの未来に期待をして応援するのがいいのではないだろうか。
冒頭で紹介したセリフは、マツダの専務執行役員兼CTOである廣瀬一郎氏の言葉。氏の言葉からも、マツダ自身がロータリーを愛し、誰よりもその魅力を理解しているのだから、ロータリーエンジンの未来はきっと明るいはずだ。ロータリーの復活は、現実的かつ合理的な策と言いながら、エモーショナルな要素も加味する極めてマツダらしい経営判断なのである。
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