現在位置: carview! > ニュース > 業界ニュース > 重いから? 高いから?? なぜスライドドアはもっと普及しないのか?

ここから本文です

重いから? 高いから?? なぜスライドドアはもっと普及しないのか?

掲載 73
重いから? 高いから?? なぜスライドドアはもっと普及しないのか?

 開け閉めの際にドアパンチしてしまう心配もなく、狭い場所でも乗り降りがラクで、荷物を持ったまま乗り降りができ、自動で開閉してくれるものもある、クルマのスライドドア。超絶便利なことから、後席がスライドドアタイプのモデルが多い軽のスーパーハイトワゴンやミニバンは、国内で常に人気のあるカテゴリとなっている。

 ただ、それ以外、たとえばSUVなどではスライドドア車はみかけない。人気のSUVに便利なスライドドアを搭載すれば爆売れしそうだが、現時点の国内ラインアップには存在しないし、輸入車となるとさらにスライドドアを搭載しているクルマが少なくなる。便利であるにもかかわらず、なぜスライドドアは普及しないのだろうか。

重いから? 高いから?? なぜスライドドアはもっと普及しないのか?

 (編集部注/軽ハイトワゴンの雄、ダイハツムーヴが、次期型から後席スライドドアを採用することになった。このジャンルでスライドドアの採用が始まると、一気にさまざまなジャンルへ広まる可能性もある)

文:吉川賢一
写真:TOYOTA、NISSAN、HONDA、MITSUBISHI、Mercedes-BENZ、DAIHATSU、SUZUKI

背高モデルに限られるスライドドア

 現時点、スライドドアを持つ国産車のラインアップは、ラージミニバンのトヨタ「アルファード/ヴェルファイア」や「グランエース」、日産の「エルグランド」、三菱「デリカD:5」、そしてミドルミニバンのトヨタ「ノア/ヴォクシー」、日産の「セレナ」、ホンダ「ステップワゴン」、コンパクトカーではトヨタ「シエンタ」やホンダ「フリード」、トヨタの「ルーミー」やダイハツの「トール」、スズキ「ソリオ」といったところ。軽自動車では採用例が多く、ホンダ「N-BOX」、スズキ「スペーシア」、ダイハツ「タント」、日産「ルークス」、スズキ「ワゴンRスマイル」など。そのほか商用モデルでは、スズキ「エブリィ」、トヨタ「ハイエース」、トヨタ「タウンエース」、トヨタ「JPN TAXI」、日産「キャラバン」などがスライドドアだ。

 多いようにみえるが、基本的にはミニバンと軽のハイトワゴン、そして一部の(背の高い)コンパクトカーに限られる。デリカD:5は、SUV+スライドドア」の組み合わせだが、上屋のかたちは7人乗りのミニバンそのものだ。

 こうしてみると、スライドドアは、ミニバンのような背高のモデルに限って採用されていることがわかる。もちろんドアをスライドさせるためのスライドレールを設置しやすい、ということもあるのだが、背高モデル以外のSUVやハッチバック、ステーションワゴンなどでスライドドアが広がらない理由はほかにもある。

三菱のデリカD:5。「SUV+スライドドア」の組み合わせだが、上屋のかたちは7人乗りのミニバンそのもの

後席に乗る用途が少ないSUVやハッチバックには、後席スライドドアは不要

 スライドドアを装備するモデルが限られている理由のひとつは、重量増加による燃費性能と運動性能の低下だ。スライドドアはスライド機構を持つために重量がかさむうえ、自らの重さでドアが撓まないよう、ドア内部と車体側にも補強が必要となる。両側パワースライドともなれば、さらに重量が増すことになり、燃費は悪化し、商品力としては大きなデメリットとなる。

 加えて、従来のヒンジドア車と比べて車両重心が上がるため、これまでのようなハンドリングや高速直進性は望めず、SUVやハッチバック、ワゴンの持つ「走りのよさ」は台無しとなってしまいかねない。

 そしてもうひとつが、前述した背高モデル以外では、後席を利用する多人数乗車をするケースが少ないため、スライドドアがそれほど必要とされない、ということだ。たとえばSUVには、3列シート車もあるなど、多人数乗車できるモデルもいくつかあるが、多人数で移動する用途よりも、乗員は1人か2人、後席シートを倒してレジャーなどの荷物を運ぶ、といったイメージで開発されていることが多い。逆にいえば、スライドドア搭載車は後席の居住性を他のクルマよりも重視しているため、背が高くなっている。

 後席への乗り降りを重視しないので、廉価なヒンジドアで車両コストを下げつつ、運動性能や燃費性能も向上させたほうが、圧倒的に商品力が上がる。もちろん、「スライドドアによる利便性はどうしても捨てがたい」と考える人もいるだろうが、そういった人は既存のスライドドア車の使い勝手のほうが適しているはずだ。

ラージミニバンの代表格トヨタアルファード。スライドドアはスライド機構を持つために重量がかさむうえ、自らの重さでドアが撓まないよう、ドア内部と車体側にも補強が必要となるため、クルマが重たくなる

輸入車で採用が少ないのはクルマに対する考え方の違いも ただ今後は採用例が増えてくるはず!!

 輸入車では、後席スライドドアを搭載したモデルをほとんどみかけない。日本国内で手に入るスライドドア搭載車は、ルノー「カングー」やメルセデスベンツ「Vクラス」、フォルクスワーゲン「シャラン」、プジョー「1007」など。

 自動車メーカーのミニバン開発担当者によると、日本のミニバンユーザーは、クルマを自宅のリビングの延長として使いたいという需要が強くあるという。プライベートな空間となる車内は、友達と会話をしたり、音楽を聴いたり、食事をしたり、時には車中泊をしたりと、自宅の延長として使いたいと考える人が多いが、海外では、クルマは移動手段であり、安全かつ素早く目的地へ移動することを何よりも優先しているそう。そのため、移動するという目的のためには不要なゼイタク装備は装着しない(安グレードで十分)という。

 また、かつての日本でもそうだが、欧州市場では、スライドドア車に対して、いまも商用車のイメージが強く、乗用車として使う人は圧倒的に少ない。メルセデスVクラスやルノーカングーもベースとしているのは商用車だ。仕事のクルマを乗用に使うのはカッコ悪いというイメージがあり、クルマのドアは乗員の数だけなくてはならない、という考えがあり、スライドドアは受け入れられないのだそうだ。

 ただし昨今は、中国やアジア、ロシアなどで日本のミニバンが大人気となっており、スライドドア付のミニバンの利便性と豪華さ(贅沢装備がなんでもついている)が、海外のユーザーにも認知され始めている。特に、アルファード/ヴェルファイア、レクサスLMの飛躍は、海外メーカーにとっては脅威に感じていることだろう。現時点は少ない輸入車メーカー製のスライドドア搭載車だが、昨今の流行をふまえると、今後は、海外メーカーからも登場する可能性は高い。

メルセデスのVクラス。全長4905mmの標準ボディと、全長5150mmのロングボディの仕様がある

◆      ◆     ◆

 昨今はミニバンといえば背高だが、2019年に販売終了となったトヨタ「エスティマ」は、低い全高によって走行性能を犠牲にすることなく、スライドドア搭載を実現させていた。2024年~2025年にBEVとなって復活するともいわれているエスティマ。はたして、スライドドア車が増えるきっかけとなるのか!?? 今後が楽しみだ。

【キャンペーン】第2・4 金土日はお得に給油!車検月登録でガソリン・軽油5円/L引き!(要マイカー登録)

こんな記事も読まれています

ルーミー/トール受注再開! 現行は2027年まで販売ってどうよ!? 3年も生き延びるってマジか!? ビッグマイチェンは2025年!
ルーミー/トール受注再開! 現行は2027年まで販売ってどうよ!? 3年も生き延びるってマジか!? ビッグマイチェンは2025年!
ベストカーWeb
全車[EV]化計画を撤回!? ベンツもボルボもEV化減速してるけど…[ホンダ]はどうするん? 
全車[EV]化計画を撤回!? ベンツもボルボもEV化減速してるけど…[ホンダ]はどうするん? 
ベストカーWeb
ホンダが激カッコいいSUV発表! [アキュラADX]みたいなクルマが日本にも必要だろ!
ホンダが激カッコいいSUV発表! [アキュラADX]みたいなクルマが日本にも必要だろ!
ベストカーWeb
[車検]費用が増える? 2024年10月より車検での[OBD検査]を本格運用へ
[車検]費用が増える? 2024年10月より車検での[OBD検査]を本格運用へ
ベストカーWeb
即納って不人気車なの!? なんでそんなに待たなきゃならん!? [納期]にまつわる素朴なギモン
即納って不人気車なの!? なんでそんなに待たなきゃならん!? [納期]にまつわる素朴なギモン
ベストカーWeb
いまさら人には聞けない「ベンチレーテッドディスク」と「ディスク」の違いとは? ブレーキローターの構造と利点についてわかりやすく解説します
いまさら人には聞けない「ベンチレーテッドディスク」と「ディスク」の違いとは? ブレーキローターの構造と利点についてわかりやすく解説します
Auto Messe Web
ラリージャパン2024開幕直前。豊田スタジアムやサービスパークの雰囲気をお届け/WRC写真日記
ラリージャパン2024開幕直前。豊田スタジアムやサービスパークの雰囲気をお届け/WRC写真日記
AUTOSPORT web
メルセデス・ベンツの『GLE』系と『GLS』にオンライン先行受注にて“Edition Black Stars”を設定
メルセデス・ベンツの『GLE』系と『GLS』にオンライン先行受注にて“Edition Black Stars”を設定
AUTOSPORT web
ラリージャパン2024“前夜祭”が豊田市駅前で開催。勝田貴元らが参加のサイン会とパレードランが大盛況
ラリージャパン2024“前夜祭”が豊田市駅前で開催。勝田貴元らが参加のサイン会とパレードランが大盛況
AUTOSPORT web
フランス人スター選手と一緒の気分? 歴代最強プジョー 508「PSE」 505 GTiと乗り比べ
フランス人スター選手と一緒の気分? 歴代最強プジョー 508「PSE」 505 GTiと乗り比べ
AUTOCAR JAPAN
セカオワが「愛車売ります!」CDジャケットにも使用した印象的なクルマ
セカオワが「愛車売ります!」CDジャケットにも使用した印象的なクルマ
乗りものニュース
トヨタWRCラトバラ代表、母国戦の勝田貴元に望むのは“表彰台”獲得。今季は1戦欠場の判断も「彼が本当に速いのは分かっている」
トヨタWRCラトバラ代表、母国戦の勝田貴元に望むのは“表彰台”獲得。今季は1戦欠場の判断も「彼が本当に速いのは分かっている」
motorsport.com 日本版
メルセデスAMGが待望のWEC&ル・マン参入! アイアン・リンクスと提携、2025年LMGT3に2台をエントリーへ
メルセデスAMGが待望のWEC&ル・マン参入! アイアン・リンクスと提携、2025年LMGT3に2台をエントリーへ
AUTOSPORT web
TCD、モータースポーツ事業を承継する新会社『TGR-D』を2024年12月に設立へ
TCD、モータースポーツ事業を承継する新会社『TGR-D』を2024年12月に設立へ
AUTOSPORT web
ウイリアムズとアメリカの電池メーカー『デュラセル』がパートナーシップを複数年延長
ウイリアムズとアメリカの電池メーカー『デュラセル』がパートナーシップを複数年延長
AUTOSPORT web
“650馬力”の爆速「コンパクトカー」がスゴイ! 全長4.2mボディに「W12ツインターボ」搭載! ド派手“ワイドボディ”がカッコいい史上最強の「ゴルフ」とは?
“650馬力”の爆速「コンパクトカー」がスゴイ! 全長4.2mボディに「W12ツインターボ」搭載! ド派手“ワイドボディ”がカッコいい史上最強の「ゴルフ」とは?
くるまのニュース
フェラーリ育成のシュワルツマンが陣営を離脱。2025年はプレマからインディカーに挑戦
フェラーリ育成のシュワルツマンが陣営を離脱。2025年はプレマからインディカーに挑戦
AUTOSPORT web
スバルBRZに新たな命を吹き込む 退役軍人のセカンドキャリアを支援する英国慈善団体
スバルBRZに新たな命を吹き込む 退役軍人のセカンドキャリアを支援する英国慈善団体
AUTOCAR JAPAN

みんなのコメント

73件
  • いや、十二分に普及してると思うけど?

    例えば流石にセダンやクーペでスライドドアって変でしょうし。
  • そもそも、スライドレールを組み込む必要があるため、ボディ形状に制約がある。
※コメントは個人の見解であり、記事提供社と関係はありません。

この記事に出てきたクルマ

新車価格(税込)

327.1391.6万円

新車見積りスタート

中古車本体価格

11.9590.0万円

中古車を検索
エスティマの車買取相場を調べる

査定を依頼する

メーカー
モデル
年式
走行距離

おすすめのニュース

愛車管理はマイカーページで!

登録してお得なクーポンを獲得しよう

マイカー登録をする

おすすめのニュース

おすすめをもっと見る

この記事に出てきたクルマ

新車価格(税込)

327.1391.6万円

新車見積りスタート

中古車本体価格

11.9590.0万円

中古車を検索

あなたにおすすめのサービス

メーカー
モデル
年式
走行距離

新車見積りサービス

店舗に行かずにお家でカンタン新車見積り。まずはネットで地域や希望車種を入力!

新車見積りサービス
都道府県
市区町村