実は親戚関係にある意外なクルマたち
ここに写るランドローバー・フリーランダー2とボルボS80の共通点とは? 見た目はまったく似ていないし、同じ屋根の下で製造されたわけでもなく、ターゲットとする顧客層もまったく異なる。その答えを見つけるには、ボディをはがす必要がある。
【画像】国も文化も違うけど実は深い関係にある2台【トヨタとBMW、フォードとフォルクスワーゲンの最新の兄弟車を写真で見る】 全63枚
実はこの2台、どちらも同じ基本構造(プラットフォーム、車台)で作られているのだ。また、第3世代のフォード・モンデオにも同じ構造が使われている。
プラットフォーム共有は自動車業界では一般的なことだ。メーカーは、自社ブランドや取引関係にある他社ブランドなど複数のブランドに投資を分散することで、増大する自動車開発コストを相殺している。今回は、意外な親戚関係にあるクルマたちを見てみよう。
プラットフォーム共有とは?
21世紀におけるプラットフォームの共有は、1960年代のように単純なものではない。共通のアーキテクチャーの上に作られた多くの車両は、フロアパンは異なるが、サブフレーム、サスペンション部品、ステアリング・アセンブリ、電気系統、安全技術などの部品を共有している。
パーツを共有することについて自動車メーカーを非難するつもりはない。現代の自動車技術がいかに柔軟になっているかを示しているのだ。
アウディTT – PQ35(第2世代、2006年~2014年)
アウディが初代TTをA3と同じプラットフォームで開発したのは、コストを抑えるためであり、決して目玉が飛び出るほど高価なスーパーカーを作るためではなかった。2代目TTも、当時の現行モデルであるA3と同じ「PQ35」プラットフォームを採用している。エンジニアたちは、このプラットフォームを先代のPQ34よりも柔軟なものにするために多大な労力を費やしたため、TTはジェッタとゴルフのような失態を演じることはなかった。
フォルクスワーゲン・ザ・ビートル – PQ35(2011年~2019年)
フォルクスワーゲンを象徴するリアエンジンのビートルの最終形態、ザ・ビートルは「PQ35」プラットフォームで製造された。デザイナーは新しい骨格を生かし、先のニュー・ビートルよりも長く、低く、ワイドで、広々としたスタイルに仕上げた。しかし、フォルクスワーゲンは現在、ビートルのさらなる後継車をリリースする予定はないとしている。もしあるとすれば、ID.3で使われているEV専用のMEBを採用する可能性が高い。
シボレー・インパラ – イプシロンII(10代目、2014年~2020年)
最終世代となるシボレー・インパラの10代目は、ゼネラルモーターズ(GM)が2008年にポートフォリオ全体に展開し始めた「イプシロンII」プラットフォームをベースに発売された。このプラットフォームの開発はオペルが主導し、ショートカーとロングカーの2つの基本バリエーションを設計した。インパラは、イプシロンIIのロングホイールベース版で製造された4台のうちの1台だ。
オペル/ヴォグゾール・インシグニア – イプシロンII(第2世代、2017年以降)
「イプシロンII」プラットフォームはオペル車の設計を強く意識したもので、オペル最大のモデルであるインシグニアに採用されていても不思議ではない。兄弟ブランドであるヴォグゾールのインシグニアや、ビュイック・リーガル、ZB世代のホールデン・コモドアもこの骨格の上に作られている。いずれも、イプシロンIIのショート版だ。
サーブ9-5 – イプシロンII(第2世代、2009~2012年)
コスト削減に必死だったサーブは、2代目9-5を「イプシロンII」のロング版で作り、基本的な足回りをビュイック・ラクロス、前述のシボレー・インパラ、キャデラックXTSと共有することにした。
この親戚関係は、2009年の発表後すぐにメディアによって取り上げられたため、サーブは9-5に使用される部品の約70%(全輪駆動システムを含む)がブランド固有のものであることを明らかにした。
フォード・フェアモント – フォックス(1977~1983年)
マーベリックの後継車として設計されたフォード・フェアモントは、幅広いモデルを支えるために1970年代に開発された「フォックス」プラットフォームが起点となった。
ベストセラーとはならなかったものの、フェアモントからはゼファーという名のマーキュリーが生まれ、また奇妙なことに、ロサンゼルスを拠点とするナショナル・コーチ・ワークスとランチェロに代わる少量生産モデルとして開発されたデュランゴというピックアップトラックも生み出された。
フォード・マスタング – フォックス(第3世代、1978~1993年)
3代目フォード・マスタングは、「フォックス」プラットフォームと最もよく結びついたモデルであり、しばしばフォックス・ボディ車と呼ばれることがある。初期のモデルはしばしば貧弱であったが、マニアはこのバージョンのマスタングがその名称と性能との結びつきを新たにしたと評価している。1984年から1986年にかけて限定生産されたSVOモデルは、2.3L 4気筒ターボチャージャーで最高出力200psを発揮し、強制吸気こそが排気量に代わる適切な手段であると反抗的に主張した。
リンカーン・コンチネンタル -フォックス(第7世代、1981~1987年)
「フォックス」プラットフォームは、当時としては異例のモジュール式だった。フォードの高級車ブランドであるリンカーンはこれを利用して、1981年に7代目コンチネンタルをデビューさせることに成功した。マスタングの構造を進化させたものを使用することで、リンカーンは1980年代初頭に米国自動車業界に押し寄せたダウンサイジングの波に上手く乗ることができた。その結果、コンチネンタルは先代よりも18インチ短く、180kgほど軽くなっている。そして以前と変わらず、クッションの効いた、ソフトなサスペンションを維持していた。
フォード・フォーカス – C1(第2世代、2004~2014年)
フォードの経営陣は、1990年代後半にグローバル・シェアード・テクノロジーズと呼ばれる戦略を打ち出したが、それは自分たちの手に余るものを抱え込んでいることに気づいたためだろう。この戦略は、開発プロセスを合理化するため、社内のアーキテクチャーとドライブトレインの数を大幅に減らすというものだった。第2世代フォーカスに採用された「C1」プラットフォームは、エコノミー志向のハッチバックから高級コンバーチブルまで、幅広い車種を作るために設計された。
このアプローチは理にかなっていたが、米国市場はその合理化キャンペーンの対象に含まれていなかった。2007年から2010年にかけて米国で販売された2代目フォーカスは、初代フォーカス(1998年)のC170プラットフォームを進化させたまったく別のクルマだった。
マツダ3 – BK(初代、2003~2014年)
フォードはフォーカスを「C1」と名付けたプラットフォームで製造し、マツダは初代3(日本名:アクセラ)を「BK」と名付けたプラットフォームで製造した。いずれも、根本的には同じものだ。フォード、マツダ、ボルボの3社は1990年代後半に手を組み、ドイツでプラットフォームを設計し、それぞれ独自の社内呼称を選んだ。ボルボでは、C30やV50などに使用するプラットフォームを「P1」と呼んでいた。
この提携は理にかなっていた。当時、フォードはマツダとボルボの株式を100%保有していたのだ。
フォード・モンデオ – EUCD(第3世代、2007~2014年)
フォードは、グローバル向けの大型車のために「EUCD」プラットフォームを開発した。3代目モンデオやミニバンのSマックスなどがこのプラットフォームで作られたが、使用したブランドはフォードだけではない。同時傘下にあったボルボをはじめとする高級車部門は、EUCDをベースにかなり多くのモデルを製造した。
ランドローバー・フリーランダー2/LR2 – EUCD(2006~2014年)
ランドローバーのフリーランダー2(米国ではLR2として販売)は、「EUCD」プラットフォームで製造された唯一のSUVだ。乗用車由来の構造だが、フリーランダーでは余裕のある地上高を確保し、平均以上のオフロード性能を与えることができた。
ボルボS80 – EUCD(第2世代、2006~2016年)
ボルボは、フォードの「EUCD」プラットフォームでどのブランドよりも多くのモデルを製造した。最初のモデルは、2006年に登場した2代目S80である。その派生モデル(XC70や中国限定のロングホイールベースS80 Lなど)もEUCDベースだ。初代XC90もEUCDベースで作られるはずだったが、ボルボはフォード傘下に入る前に設計したP2プラットフォームを採用することにした。
三菱ランサー・エボリューションX – GS(2008~2016年)
三菱は、クライスラーと共同開発した「GS」プラットフォームで、ランサー・エボリューションの最終世代となるXを作り上げた。三菱は、高性能モデルの基本構造としてふさわしいものにすべく、このプラットフォームに多数の変更を加えた。GSプラットフォームで作られた他のモデルには、2017年に発売されたエクリプスクロスや、2007年のデリカD:5バンなどがある。
ジープ・コンパス – MK(初代、2006~2016年)
クライスラーは、三菱と共同開発したプラットフォームに「MK」という名称を与えた。両社の提携は2004年に終了し、ダイムラーと合併したクライスラーは、初代ジープ・コンパスなどのモデルに使用するため、このプラットフォームに手を加えている。MKベースのコンパスとパトリオットが、ジープの他のモデルよりもオンロード志向が強い理由の一端は、あまり知られていない三菱とのつながりにある。
日産フェアレディZ- FM(2009年~)
日産は毎年何百万台もの前輪駆動車を販売しているが、高性能モデルを作るには後輪駆動のプラットフォームが必要だった。2001年に発売され、一部の市場ではインフィニティG35として販売されたV35世代のスカイラインは、日産がパワーとハンドリングを念頭に設計した「FM」プラットフォームの幕開けとなった。2009年に発売され、2023年現在も販売されているフェアレディZ(またはZ)もFMプラットフォームで作られている。
インフィニティFX – FM(初代、2003~2008年)
日産はインフィニティを創設し、所有している。そのため、両ブランドがプラットフォームやエンジン、その他のコンポーネントを共有しているのも当然だ。それよりも珍しいのは、SUVを作る土台として後輪駆動のプラットフォームを使うことだ。インフィニティFXがこれにあたる。そのプロポーションと極めてシャープなハンドリングは、370Zと密接な関係にあることを裏付けている。
2代目FX(2014年からQX70に車名変更)も「FM」ベースだ。ビッグマイナーチェンジを果たしたフェアレディZから新たにSUVが生まれるかどうかは、時が経てば明らかになるだろう。
プジョー・パートナー – PF2(2代目、2008~2018年)
汎用性の高い第2世代のプジョー・パートナーは2008年にデビューした。複数の4気筒エンジンから選ぶことができたが、一部の市場では電動パワートレインも用意。ボディは乗用タイプと貨物タイプを展開した。いずれもバリエーションも、308、3008、DS 5など多くのモデルと共有される「PF2」プラットフォームをベースに作られている。
プジョーRCZ – PF2(2010~2015年)
コンセプトカーのような形をしたプジョーRCZは、「PF2」プラットフォームで作られた唯一のクーペである。プジョーは、ハンドリングを強化するために包括的なアップデートを行い、フラッグシップモデルのRCZ Rの1.6L 4気筒ターボ(最高出力270ps)は兄弟車との関連性をまったく意識させない。AUTOCAR英国編集部は、そのパフォーマンスとハンドリングを高く評価している。RCZ Rのエンジンは、ミニのいくつかのモデルとも共有していたが、それはまた別の機会に。
サターン・オーラ – イプシロン(2006~2009年)
ゼネラルモーターズには、社内にある既存部品を使ってクルマを作るという数十年の歴史があるが、サターンはかつて、例外として注目されていた。その最初のモデルであるSシリーズは、ブランド独自のプラットフォームで作られた。しかし、すぐにコストがかかりすぎることが判明したため、後のモデルはゼネラルモーターズ傘下の他のモデルと多くの部品を共有することになる。
短命に終わったオーラは、2つのバリエーションを持つ「イプシロン」プラットフォームで作られた15台のうちの1台だ。その中にはサーブ9-3、ヴォグゾール・ベクトラ、ポンティアックG6、シボレー・マリブも含まれている。
フィアット・クロマ – イプシロン(第2世代、2005~2010年)
あまり知られていない「イプシロン」ベースのモデルの1つに、2代目フィアット・クロマがある。コンフォートワゴンとしても知られるクロマは、フィアットとゼネラルモーターズの短期間の提携から生まれた。この大失敗でデトロイトは約20億ドルの損害を受けたが、フィアットの経営陣がイプシロン・プラットフォームの使用について交渉するには十分な期間だった。
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みんなのコメント
見たとこも聞いたこともない車種で兄弟車と言われても全くピンとこないのです
日本で馴染みのある車種の話をしてくれ
初代は三菱コルトの車を共有、二代目以降はルノートゥインゴ。