法人需要もある日産 ノートも新型は全車e-POWERでガソリン車は「なし」。ハイブリッド専用車は今後増えるのか?
2020年12月に発売された日産 新型ノートの潔い割り切りが話題だ。同車を含むコンパクトカーでは、トヨタのヤリスやホンダのフィットなど、いずれもガソリンエンジン車とハイブリッド車の双方をラインナップしている。
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そんななか、新型ノートは全車ハイブリッドのe-POWERとなってデビュー。レンタカーや営業車としての需要もあり、価格競争力が問われるコンパクトカーでは極めて異例の決断といえる。トヨタにはプリウスを筆頭に、ハイブリッド専用車が黎明期から存在しているが、今後はどうなるのか?
文/渡辺陽一郎 写真/TOYOTA、NISSAN、HONDA
【画像ギャラリー】e-POWERのみとなった日産 ノート。ハイブリッド専用車の今後はどうなる?
■今や登録車の約4割が電動車! HVの王道はガソリン車との「併売」
全車ハイブリッドのe-POWERとなって登場した日産 新型ノート。潔い割り切りが話題だ
2020年に国内で販売された登録車のうち、40%弱がハイブリッド車や電気自動車などの電動車(モーター駆動を利用するクルマ)であった。
この背景には、主にハイブリッドの増加がある。トヨタは以前からハイブリッドが豊富だったが、近年では日産がノートやセレナにe-POWERを加え、ホンダもステップワゴンやCR-Vにe:HEVを設定した。スバルはXVやフォレスターにe-BOXER、三菱もエクリプスクロスにPHEVを搭載した。
これらの車種では、電動機能を使わないノーマルエンジン車とハイブリッドを、両方とも用意することが多い。以前はノーマルエンジン車のみだったが、マイナーチェンジやフルモデルチェンジの際に、ハイブリッドを加えてきた。
一方でハイブリッド専用車もある。プリウス、アクア、インサイトに加えて、ノート、アコード、カムリは、以前はノーマルエンジンも用意したが、現行型はハイブリッドのみだ。キックスも海外にはノーマルエンジン車があるが、日本仕様はe-POWER専用になる。
最も多いパターンは、セレナやステップワゴンのように、ノーマルエンジンにハイブリッドを加えるものだ。
ハイブリッドのみにすると、価格がコンパクトカーでも、ノーマルエンジンに比べて少なくとも35万円は高まる(マイルドハイブリッドを除く)。高額な車種は50万円以上の上乗せだ。これではユーザー層を狭めるので、ノーマルエンジンとハイブリッドの両方をそろえる。
■ハイブリッド専用車「2つのパターン」とガソリン車なしの理由は?
もともとハイブリッド専用車として生まれたトヨタ アクア。世界初の量産ハイブリッド車であるプリウスも同様だ
対するハイブリッドのみの車種には、2つのパターンがある。
ひとつはプリウス、アクア、インサイトなど、もともとハイブリッド専用車として生まれたクルマだ。1997年に初代プリウスが世界初の量産ハイブリッド乗用車として発売されて以降、アクアが登場する2011年頃までは、ハイブリッドはまだ目新しい技術だった。
そこでハイブリッド専用車を開発すれば、優れた環境性能が外観デザインにも表現され、遠方から見てもハイブリッドだとわかる。ユーザーの満足感を高め、環境技術を特徴とする法人からも好評だった。
取引先に出向いた時、「御社は社用車もプリウスなんですね」という反応を受けられるからだ。法人のイメージアップにも繋がった。
ハイブリッド専用車の2つ目のパターンは、ノート、アコード、レジェンドのように、以前はノーマルエンジンも用意したが、現行型はハイブリッドのみになるものだ。
この背景にはクルマ造りの効率化がある。ノートの開発者は次のように説明した。
「新型ノートは液晶メーターの採用など、先代型に比べて内装の質を高めた。これは価格が200万円を超えるe-POWERだから可能になった」
「(価格が150~160万円の)ノーマルエンジン車では、このメーターや内装はコスト的に採用できない。そうなれば2種類の内装を用意する必要がある。そして先代ノートの販売比率を見ると、e-POWERが75%前後に達したので、ノーマルエンジンは廃止した」
海外向けの大型セダンであるホンダ インサイトは国内での大量販売は望めないため、e:HEV限定となった
いわゆる選択と集中で、キックス、インサイト、アコードなどにも同様の事情がある。キックスはタイで生産される輸入車だから、グレード、メーカーオプションパーツ、パワーユニットの種類を抑えたい。
インサイトやアコードは、海外向けの比較的大柄なセダンだから、日本で大量な販売は望めない。そこでe:HEVに限定した。
このようにハイブリッドとノーマルエンジンを併用するか、それとも専用車か、という判断は、今までの流れ、開発/製造費用、国内市場の販売計画台数などに応じておこなわれる。
大量販売を積極的に狙う車種で、開発/製造費用も費やせるなら、ノーマルエンジンとハイブリッドを両方とも採用できる。しかし、開発/製造費用をあまり掛けられなかったり、ノーマルエンジンの販売規模を見込めない場合はハイブリッド専用車になる。
特にプリウス、アクア、インサイトは、ハイブリッドの普及段階で専用車として発売されたから、市場に強いインパクトを与えた。今さらノーマルエンジンは用意できない。仮にプリウスに直列4気筒2Lノーマルエンジンを搭載するグレードを加えたら、売れないだけでなくイメージダウンも招く。
■今後はクラウンや新型エクストレイルも「ハイブリッド専用化」へ!?
ハイブリッドの比率が高く、ガソリン車が廃止される可能性があるトヨタ クラウン
気になるのは今後の動向だ。まずレクサスの各車、C-HR、クラウンなどは、ハイブリッド比率が高く、少数のノーマルエンジンを廃止する可能性がある。次期ヴェゼルもe:HEVは3グレードを用意するのに、ノーマルエンジンは1グレードだ。
ヴェゼルがe:HEVを中心に据えながら、ノーマルエンジンも残した理由は、価格の安いグレードも必要になるからだ。
たとえ、最終的には高価なe:HEVを選ぶとしても、それしか用意されないと、最初の段階でユーザーがヴェゼルを高価格車と判断して諦めてしまうことも考えられる。検討してもらうには、求めやすいグレードも必要だ。
このような動向も踏まえると、現時点でハイブリッドのない売れ筋車種は、今後マイルドタイプを含めてハイブリッドを加えていく。ルーミー、ライズ、パッソ、レヴォーグなどは、これから電動機能を充実させる。
それでも車種数はあまり多くない。なぜなら、ヤリス、フィット、カローラシリーズ、ノート、アルファードなど、登録車販売ランキングの上位車種は、すでに大多数がハイブリッドをノーマルエンジンと併せて用意するからだ。
写真は北米仕様の新型ローグ。日本の新型エクストレイルはe-POWER専売に?
そうなるとハイブリッド専用車は、今後新たに発売される車種に増える。2021年に発売される車種としては、カローラクロスがハイブリッド専用になる可能性が高い。エクストレイルの次期型、次期レクサス NXなども同様だ。
2020年度燃費基準は、環境性能の水準を一気に引き上げるから、各メーカーともに、ハイブリッドを含めた電動車を増やすことは間違いない。ただしノーマルエンジン車を廃止して、ハイブリッド専用車に特化できるのは一部の車種だけだ。
■一方でガソリン車を残す車種も
国内販売総数の半分以上をノーマルエンジン車が占めるトヨタ ヤリス
例えばノートはe-POWERのみにしたが、ヤリスでは国内販売総数の54%をノーマルエンジン車が占める。ヤリスは新開発された直列3気筒1.5Lと併せて、設計の古い1.0Lも用意するからだ。
1.0Lは1.5Lに比べて価格が14万円少々安く、販売店では「1.0Lは法人だけでなく、一般のお客様にも人気が高い。長距離を移動しなければ1.0Lでもパワー不足を感じる機会は少なく、価格と自動車税が安くて割安になる」とコメントした。
また、アルファードでは、ハイブリッドの売れ筋価格帯が480万~600万円に達する。これでは高すぎるので、売れ筋が400~500万円の2.5Lノーマルエンジン車も不可欠だ。アルファードの販売比率も、80%がノーマルエンジンで占められ、トヨタ車なのにハイブリッド比率は20%と低い。
以上のように2020年度燃費基準への対応は重要課題ながら、ノーマルエンジンを廃止すると売れ行きを下げてしまう。そうなれば小さなクルマに乗り替えるユーザーが今以上に増えて、軽自動車の販売台数をさらに増やすことになりかねない。
そこでハイブリッド専用車は、ハイブリッド比率の高い車種、あるいは国内の売れゆきが低調でコストを抑えたい車種から、徐々に増えていく。しばらくはハイブリッド/ノーマルエンジンの共存が続くわけだ。それが本来の姿でもあるだろう。
クルマに限らずテクノロジーは、適材適所で使い分けるもの。排他的な取り組み方は、一見すると投資を集中できて効率的だが、可能性を幅広く検討することはできない。失敗すると大きなマイナスを生み出すリスクも伴う。
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どこ見てもライズ…
ダイハツに失礼だろ!