4月1日付で新たに三部敏宏氏が社長に就任したホンダ。新社長で今後どう変わるのか? 注目されるが、現状ホンダで特に心配されるのが国内販売の落ち込み具合だろう。2020年の国内販売台数はスズキに抜かれ、2位から3位へとブランド別の販売順位を落とした。
さらに気になるのが軽自動車のN-BOXばかりが売れている今の売れ方。ホンダの国内販売はこのままでいいのか? 間もなく新型ヴェセルが登場するといったプラス材料もあるが、ホンダの売れゆきは今のところ軽自動車以外に好調さが見られない。
ところが、モータージャーナリストの御堀直嗣氏は次のように考察するという。
文/御堀直嗣、写真/HONDA、ベストカー編集部
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■軽やコンパクトカーへの依存はそれほど深刻には感じない
2020年度の軽四輪車・新車販売台数でN-BOXシリーズ(N-BOX+とN-BOXスラッシュを含む)が1位を獲得するなど、相変わらず販売好調なN-BOX(N-BOX+とN-BOXスラッシュは既に販売を終了)
ホンダが、新車販売実績で、軽自動車やコンパクトカーに依存している様子を見て、心配する声があるようだ。しかし、私はそのことをそれほど深刻には感じていない。
軽自動車ではホンダはN-BOX人気が盤石で、今日もなお圧倒的差(2月で3000台差以上)でスズキ スペーシアやダイハツ タントを凌いでいる。
一般社団法人全国軽自動車協会連合会の通称名別新車販売確報による2月の順位で、N-BOXが1万8591台で1位、スペーシアは1万5328台、タントは1万3876台、日産 ルークスが1万973台で、2~4位と続く。
その後、ベスト15位までのメーカー名で、ホンダは12位のN-WGNまで車名が出てこないのでN-BOX依存は鮮明だが、その2台を合計すると、約2万3000台強の販売台数になる。
全国軽自動車協会連合会による2021年3月の販売台数は7302台で11位のN-WGN。2万7164台で1位のN-BOXとは約2万台の開きがある
スズキはスペーシアに次いでハスラーが6位と健闘しているが、2台を合わせた販売台数はやはり約2万3000台強だ。ダイハツは、ムーヴが5位と上位につけるが、タントと合わせた台数は同じく約2万3000台なのだ。これら3社に次いで、ルークスと7位のデイズを合わせた日産は、約1万7000台となる。
一見したところ、N-BOX以外のホンダ車は低迷し、ホンダの軽自動車販売は好調なN-BOXだけなのかと思いがちだが、販売実数を各社の成績2番手と合算してみると、必ずしも他社に比べホンダ車が少なすぎるということはなさそうだ。
■販売面で目立つのはN-BOXだが、その他のクラスでも比較的堅調
2020年2月に発売されたフィットは、約1ヵ月後の時点で3万1000台を受注するなど好調だったが、2021年の月販台数は6000台弱に落ち着いている
登録車では、昨年ベスト5位以内にあったフィットが、今年に入って1月の10位、2月の12位と大きく順位を下げている。昨年と今年の明暗の差には、やはり懸念を覚える印象がある。だがその販売台数は、1月に5889台、2月に5782台と比較的安定している。
だが1位を快走するトヨタのヤリスに比べ半分以下であり、ヤリス人気にフィットが負けはじめたのではないかとの印象もあるだろう。
しかし、その中身をみると、たとえば1月のヤリスの1万8516台のうち、コンパクトハッチのヤリスの台数は約8180台で、残りはコンパクトSUV(スポーツ多目的車)であるヤリスクロスの約9350台とスポーツモデルであるGRヤリスの約980台という内訳になる。
いわゆるコンパクトハッチバック車のヤリスの販売台数は、ヤリスシリーズとして合計されている統計に出てくる数の44%ほどであるのだ。
そのうえで、トヨタの販売店数は5000店を超えるが、ホンダの販売店は2000店強と半分に満たない。その店舗数で頑張ったフィットの数字が5800台前後なのである。これを2倍すれば、1万1600台になる。
また、2月の販売台数ランキングではフィットより上の順位にフリードがあり、新型フィットとの相乗効果で、5年前にモデルチェンジしたコンパクトワゴン車が健闘しているのだ。この2台を合わせると1万1710台となり、2位のルーミーに迫る。
こうした数字合わせが、正当な比較になるかどうかは議論の余地はある。けれども、販売店の売り上げという視点で新車販売台数を追うなら、ホンダは健闘していると思うのだ。
2021年4月22日に発表の新型ヴェゼル。初代ヴェゼルはモデル末期の時期でも、販売は堅調だった
さらに、新型が4月22日発表したコンパクトSUVのヴェゼルは、モデル末期の2月でも2568台(25位)とけっこう売れている。これは、30位のトヨタCH-Rを上回っている。CH-Rより先に売り出したヴェゼルの底堅さも伝わる。
2020年11月にマイナーチェンジしたオデッセイ。押し出し感のあるフロントマスクなど外観デザインを刷新。機能向上なども含め、商品力を高めている
ミニバンでは、トヨタ ヴォクシーや日産 セレナにはおよばないが、ステップワゴンも4713台売れているし、競合車がすべて消えたオデッセイが、マイナーチェンジによってそれまでの3桁から4桁へ、多少なりとも台数を伸ばしている。
目立つのは軽自動車のN-BOXばかりで偏っているのは事実だが、数字を、以上のように読み解いてゆけば、ホンダの危機を疑うような低迷ぶりではないというのが、私の考えだ。
■創業以来、いつの時代も心が弾むような話題を提供してくれた
アメリカで施行された大気清浄法を大幅に修正した厳しい規制内容のマスキー法を、ホンダは他メーカーに先駆けてCVCCエンジンを開発してクリア。このエンジンを1973年発売した4ドアのシビックに初搭載。(写真はシビック CVCC 1500 3ドア)
それでも、ホンダに対する心配や懸念の気持ちが浮かぶのは、ほかの自動車メーカーとは違うと感じるホンダへの大きな期待があるからではないか。
過去を振り返ると、1948年に創業(本田技術研究所は1946年に設立)したホンダは11年後に英国のマン島TTレースに出場し、1961年に勝利する。続いてF1グランプリにも挑戦し、1965年に初優勝した。
1960年代に四輪事業へ進出した際は、T360とS500という、軽トラックとスポーツカーであった。1970年代には、世界で最初に排出ガス規制をCVCC(複合渦流調整燃焼方式)で達成し、世界の自動車メーカーが提携や技術供与を依頼してきた。
1980年代には、日本の自動車メーカーとして最初に米国に現地工場を設けた。その布石は、1959年にスーパーカブで米国市場進出をはかったことにはじまる。
1994年10月に発売された初代オデッセイ。それまでのワンボックススタイルのクルマにはなかった乗用車感覚の乗り心地と3列シートの設定で人気となった
1990年代は、オデッセイをはじめとするクリエイティブムーバーによって国内市場を席巻した。くわえて1990年には、ミドシップスポーツカーのNSXを発売している。
ホンダを取り巻く話題は綺羅星のごとく、消費者の心を魅了してきたのだ。心を踊らす事業展開を期待するあまり、現状に満足しきれない思いもつのるのだろう。ホンダ強しという元気のいい姿を待望するうえで、今後への期待があるのは間違いない。
■次期型シビックとEVが命運を握るのではないか?
2020年11月17日に11代目となる「シビック」のプロトタイプ(4ドアセダンのみ)が北米で発表された。北米市場をメインにするのか、日本ではどのような扱いとなるのか気になるところ
カギを握るのは、シビックと電気自動車(EV)ではないかと私は考えている。
ホンダは先ごろ、媒体向けにシビック取材会を開催した。ツインリンクもてぎにあるコレクションホールで、歴代シビックの現車を見ながら時代を振り返った。また、南コースと呼ばれるショートサーキットで、現行シビックのタイプRリミテッドエディションの体験走行が実施された。
消費者にとってベーシック(基本)となるシビックは、1972年の初代以来10世代を重ね今日に至るが、8代目以降はフィットにベーシックの価値を譲り、3ナンバー化した。
9代目は国内に導入されなかった。現行の10代目も、遅れての日本導入となる。日本市場にとってシビックという価値が曖昧になった15年の歳月である。
しかし今回、あえてシビック勉強会をホンダが開催したことにより、11代目の次期型が導入される時、日本市場におけるシビックの価値が改めて明確にされることへの期待がある。
すでにフィットは、日本市場に最適なコンパクトカーとして価値が与えられ、それをグローバルコンパクトへ成長されるとして開発・導入された。新型シビックも、日本市場にとって意味ある価値を持って登場してほしい。
モーターをリアに搭載し、後輪を駆動するRRとすることで、最小回転半径は4.3mを実現したホンダe。次世代のシティコミューターとしての先駆けとなるか
EVは、ホンダeで昨年登場した。初年の国内販売はわずか1000台と少量だが、EVを市販したことで、EVを販売する意味をホンダは学んだはずだ。
世界では、EVメーカーへの動きが急となっている。英国のジャガー、米国のゼネラルモーターズ(GM)、そしてスウェーデンのボルボがEVメーカーになることを宣言した。そこでホンダも、日本のメーカーとしてEVメーカーを宣言することを私は期待する。その理由は、ふたつある。
主力の米国市場でGMがすでにEVメーカーを宣言したこと。
ふたつ目は、ホンダは、二輪・四輪・汎用による事業展開をしていることにより、EVを単に移動体としてとらえるだけでなく、暮らしの一部としての価値を意味づける素養を持つからだ。
■ホンダの独自性があれば次世代の移動と暮らしを創造できる
電力需要が少ない時間帯に充電することで電力需要を平準化し、再生可能エネルギー由来の電力使用拡大に貢献する、EV向けエネルギーマネジメントサービスをホンダeのオーナー向けに、英国で提供開始
かつて、ホンダは太陽光発電を自ら開発し、また自律型の移動体であるUNI‐CUBを開発し、それらを暮らしに取り込む実証実験を行っている。
1990年代にいくつかの形態のクルマを群れとし、クリエイティブムーバーと呼んだように、クルマや二輪車などを暮らしの一部と位置づけ、またEVであることによる自律型の電力管理を汎用事業として取り組めば、現実的かつ未来的な生活の自立を促す、デイリーライフクリエーターとなりえる。
二輪事業では、先ごろバッテリー交換の共同利用を他の二輪メーカーと結んだ。
逆説的ではあるが、世界最大のエンジンメーカーであるからこそ、あえてホンダがEVに的を絞ることで、独自性を活かせる次世代の移動と暮らしを創造できるのだ。
すぐには理解しにくいかもしれない。しかし、スマートフォンを生活の中心に置く世代であれば、10年後のホンダがそうした暮らしを創造する企業を目指すとしたら、期待は大きく膨らむのではないか。それこそ、今日のブランディングである。そこを、次の三部敏宏社長に期待する。
そして私は、ホンダは大丈夫と思うのである。
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みんなのコメント
車のデザインもMAZDAに色々と似てるし…
面白くないのよね!会社全体的に!
根本何でも中途半端過ぎる!F1もそうだしね。
貫くものを持たないと数年後には日本一売れないメーカーになると思います。