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マツダ・デザインの秘密 SHINARIが見せた未来

ミラノに現れた次世代マツダのデザインキュー

非常に密度の濃い一日をベルリンで過ごした後、極東から飛んできた我々は日曜日を利用して次の目的地ミラノへと飛んだ。ベルリンでのテクノロジーフォーラムと、デザインワークショップと銘打ったミラノのイベントは基本的に別仕立てで、日本人ジャーナリスト以外は各国それぞれ異なる顔ぶれでの参加だったと聞いている。

SKYACTIVがテーマだと明らかにされていたベルリンと違って、ミラノは単にデザインワークショップと説明されただけ。ベルリンほどには前掛かりでイベントに突入する気分にはなりにくかった。久しぶりに半日のミラノ観光を楽しんだ翌朝、ワークショップ会場のVilla San Carlo Borromeoに向かうと、そこには予想もしない楽しい一日が待ち受けていたのだった。

デザインワークショップは、まず欧州マツダのPRマネジャーのスピーチに始まり、次いでステージ上の“ラウンジ”で日米欧(広島、横浜、カリフォルニア・アーバイン、フランクフルト)各拠点のデザイナーによるトークセッション風の演出で各自の個性を浮き彫りにし、最後に09年4月からマツダのデザイン本部長に就任した前田育男さんのスピーチ(全編英語)によってこれからのマツダデザインのテーマが明らかにされ、最後にまったく予想もしていなかったデザインコンセプトのアンベールが行われた。

考えてみれば、デザイナーが具体的なデザイン作品を提示せずにワークショップなど開けるはずもない。ステージのターンテーブルに置かれた魅力的な4ドアスポーツセダンは、セダン氷河期とも言われる日本の現実が頭と身体に染みついた僕にもすんなり収まった。

イタリアの片隅でそっとワールドプレミアされたクルマのタイトルは『靱(しなり)』。昨年突如パトリック・ルケマンの後を継ぐデザイン担当上級副社長としてルノーに転じたローレンス・ヴァン・デン・アッカーが、最近のマツダデザインの潮流として打ち立てた『流(NAGARE)デザイン』から一歩進めた、動きの本質に迫るアプローチがそこにある。

マツダは、1960年のR360クーペに始まる4輪乗用車メーカーとしての歴史のなかで、たびたび時代の潮流を生むエポックメーカーを世に出している。近年では、2000年以降に採用されたZoom-Zoomのブランドメッセージのもとで、アスレチックでスポーティな動きの表現を追求してきた。無駄を削ぎ落としたフォルムで思わず人を振り向かせる。そのような思想からアテンザやRX-8が生れた。メルセデスSクラスや現行クラウンなどに影響をあたえたプロミネント(張り出し)フェンダーに象徴されるように、マツダデザインは世界中のデザイナーが注目する存在となっている。最近では、水、風、砂、溶岩など自然界に存在する動きの美しさを造形に取り組むことにチャレンジ。「流(ながれ)」を表現した7台のコンセプトモデルをモーターショーごとに連作の形で発表。今年市場導入されたプレマシー(マツダ5)でそのテーマを初めて量産化させている。

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