性能は日本車に劣らず価格は安め! 日本に再上陸する韓国ヒョンデはデジタル世代に刺さる魅力を備えた実力派だ
掲載 更新 carview! 文:山本 晋也 906
掲載 更新 carview! 文:山本 晋也 906
今年1月に現代自動車ジャパンが「ヒョンデ モビリティ ジャパン」に改名したことで噂から確信に変わっていましたが、ついに新生「ヒョンデ」の日本上陸が始まります。
日本ではなじみの薄い「ヒョンデ」ブランドですが、その母体となる現代自動車は、販売台数では世界第6位のビッグメーカー。ちなみに、現代自動車より上位となるのはトヨタ、VWグループ、ルノー日産三菱アライアンス、ステランティス、ゼネラルモーターズというビッグメーカーのみ。各メーカーとも傘下には複数のブランドを有していますが、現代自動車のブランドはヒョンデ、キア、ジェネシスの3つだけなので、世界の人々のイメージは、ヒョンデはもっと上位のブランドだと思われているかもしれません。
そんな世界で売れているヒョンデが2022年5月から日本で販売するのは電気自動車の「アイオニック5」と、燃料電池車の「ネッソ」だけ。ディーラー網は整備せず、オンライン販売に絞り、デジタルネイティブ世代に刺さるゼロエミッション車に限定したブランディングを展開することになります。
メディア向け試乗会ではそれぞれのモデルに3時間ほど乗ることができたので、印象をお伝えしようと思います。
電気自動車の「アイオニック5(IONIQ 5)」はデジタルネイティブ世代に受けそうなポリゴン風のルックス。日本では20~30代のヤングファミリー層をメインターゲットに定めているとのこと。
ホイールベースは3000mmもあって後席スペースは広大。試乗したクルマにはガラスサンルーフも備わり、開放感も抜群です。4名乗車で考えればミニバン的な広さをもった電気自動車に仕上がっています。
その走りはひと言で表現すると「見た目通りの走り味」でしょうか。アイオニック5には58.0kWhと72.6kWhという2種類のバッテリーが用意され、リア駆動を基本にフロントにモーターを追加した4WDモデルも設定されています。試乗したのは72.6kWhバッテリー+リア駆動のグレード。モーターの最高出力は160kW、最大トルクは350Nmです。
第一印象はステアリングからのフィードバックが希薄だな…という、あまりパッとしないものでした。前輪が駆動していないことで純度の高いハンドリングを期待したくなりますが、アクセルのオンオフ操作でフロント荷重が増す感触や、ステアリングを切り込んだときのグリップ変化などがわかりづらいと感じたのです。
それはエコ/ノーマル/スポーツと3タイプ用意されるドライブモードのどれを選んでも共通で、スポーツモードにするとパワーステアリングが重く感じるようにアシストが変化しますが、あくまで重いだけでフィードバック感が増えるわけではありません。
しかし、ハンドル操作に対する車両の動き自体には応答遅れは感じません。重量のあるバッテリーを積む電気自動車には共通した話ですが、高速道路インターチェンジの大きなコーナーでも、低重心なのでコーナリング姿勢は安定、ロールも最小限に抑えられています。
印象が良くなってきたのをいいことに、雪の残る箱根のワインディングに連れ出すと、全幅1890mm、最小回転半径5.99mというアイオニック5は、すれ違いにも気を使うようなタイトなワインディングで驚くべき顔を見せてくれました。
目の前のコーナーに合わせてハンドル操作をしていると、思い通りのラインでコーナーをクリアしていき、だんだん気持ちよくなってきます。フィードバックが希薄なのは変わりませんが、ゲームの中でクルマを走らせているような錯覚を覚えるほど、クルマの動きがデジタル的で俊敏です。
慣れてくると、完全にクルマを操れているようなフィーリングが楽しくなってくるから不思議なものです。今回は公道試乗だったので限界域での性能についてはわかりませんが、日常域での走りの満足度は十分に高いことが確認できました。デジタルっぽさのあるスタイリングとハンドリング特性は非常にマッチしていると感じます。
アイオニック5はADAS(先進運転支援システム)も充実しています。高速道路での渋滞追従機能付きACC(アダプティブクルーズコントロール)や車線中央維持機能は当然のように搭載されていますが、試乗会ではその機能を市街地でも使ってみてほしいというリクエストも出ました。
渋滞時と似たような環境なので市街地でもしっかり機能するのは当然ですが、高速道路以外のシーンでもADASを積極的に活用できるのは、オンラインでクルマを購入するようなデジタルネイティブ層にとっても評価ポイントではないでしょうか。
もちろん欠点がないわけではなく、床下にバッテリーを積んだパッケージの影響で乗降時にはフロアの高さを感じるし、高速道路でのレーンキープ機能はステアリング修正の頻度が多く落ち着きが感じられないという点は気になりました。大きな液晶が並んだメーターは、一部がステアリングに隠れて見えづらいと感じるかもしれません。
しかし、総じていえば国産EVと同じ土俵で比べることができる仕上がりと感じます。479万円~589万円の価格レンジで最大80万円の補助金が見込めるということを考えると、ライバルは輸入車でなく、国産のSUVスタイルの電気自動車(「日産 アリア」「トヨタ bZ4X」「スバル ソルテラ」など)でしょう。オンライン販売と、アフターフォローが上手くいけば、かなりの数が売れてもおかしくないと思える仕上がりになっていました。
さらに驚かされたのは燃料電池車の「ネッソ」です。航続距離はWLTCモードで820km、価格は776万8300円、補助金は210万5000円が見込まれるので、実質的な価格でいうとトヨタ MIRAI(価格帯:710~860万円・補助金:140万3000円)より安価です。
乗っても、単に手の届きやすいだけの燃料電池車でないことがわかります。
ネッソの駆動モーターはフロントで、最高出力120kW、最大トルク395Nmというスペックですが、燃料電池を含めてとにかく静かなので、スペック以上にパワフルにスムースに加速していく印象があります。フル加速ではインバータの音が目立つアイオニック5よりもずっと静か。その意味では高級感があります。
ハンドリングもアイオニック5とは異なり、アクセル操作による荷重移動を感じながらステアリングを切っていく、クルマと対話が楽しめるタイプ。古き良きFFスポーツのセッティングとも言えますが、だからこそ中高速コーナーでは思い通りのラインに乗せていくファントゥドライブな走りが味わえるのです。
ネッソの運転を楽しんでいる時、ふと「もしクラウンがSUVになったら、こんな走り味なのかもしれない」と思い浮かんだほど。ヒョンデの2モデルはいずれも右ハンドルで、ウインカーレバーも右に配置された完全日本仕様ですが、その走り味も日本人好みにセッティングされているのかもしれません。
あらためてドライビングポジションを確認してみると、ステアリングとシート、ペダル類が非常にうまく配置されていて、右ハンドル仕様としてかなり作り込まれた感じがあります。現代自動車は日本にもR&Dセンターを置き続けていますし、ネッソはずいぶん前から日本の公道で試験しているのが確認されていましたが、ここまで日本向けローカライズが高いレベルで実現しているのは驚かされました。
最後に、そんなヒョンデの本気ぶりを示すエピソードを紹介しましょう。
今回のメディア向け試乗会は箱根エリアで開催されました。その選定の狙いを聞くと「本国からの強いリクエストで、日本で試乗会をやるのであれば箱根だろうというのです」と答えてくれました。
勝手な理解かもしれませんが箱根は試乗のメッカであり、ロケ地の定番。試乗会の選定ひとつとってもハズシの選択肢として日本に上陸するのではなく、あくまでも市場のど真ん中を狙った王道ブランドとして認知されようとしているのだと感じます。
オンライン販売がスムースにいくか、ユーザーとの接点をどれだけ確保できるかとった課題はありますが、ヒョンデのモデルがもつ価格と性能のバランスでいえば、明確に国産メーカーと勝負できる実力があるというのが、今回試乗した偽らざる感想です。うかうかしていると国産メーカーが狙うゼロエミッションビークルの市場のかなりの部分がヒョンデに奪われてしまうかもしれません。
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