ヒット作は引き算で狙え 三菱RVRにみる企画力!

「アウトランダー」－「何か」＝新型RVR？

スバリ、RVRのベースはSUVのアウトランダーだ。一見、ちょっとデカいコンパクトカーのようにも見えるが本質は違う。実にしっかりした骨太のSUVである。それは乗るとすぐに分かる。

新型RVRの素晴らしい点はまずサイズ感にある。全長4295×全幅1770×全高1615mmで、特に全長がいい。ベースのアウトランダーより35cmほど短く、このクラスでトップセールの日産X-トレイルと比べても約30cmも短い。これよる取り回し性の向上は絶大で、狭い道でも本当にラクチン。「SUVもいいけど、ちょっとデカいよなぁ…」という人にはもってこいだろう。

ただしその分、ワイルドさに欠けるのも事実で、全高はライバルのほぼ７cmダウン。ある種の威圧感に乏しい。しかし、それは価値観のチェンジというか、新しいスタイリングの良さで補っている。

新型RVRは、いわゆるトラック的なワイルドさや、ホンダCR-V的なユーティリティを前面に出したデザインではない。ある意味、塊感を強調した三菱ブランドのアイコン的デザインだ。最もユニークなのはランサーなどと共通の“ジェットファイターグリル”で、それを中心に全体をまとめ上げている。

まずグリルそのものが、今まで以上に立体的かつスタイリッシュで、それを中心に塊感のあるフォルムが実現している。そのイメージの生かし方は現代の三菱車のシンボルたるランエボよりも上手だし、実際にカッコいい。きっとこのデザインは、今の三菱デザイナーが最も主張したかったし、実現したかったカタチなのだろう。

中でも苦労が伺えるのはリアの造形で、全長を4.3m以内に抑えつつ、大人5人が十分座れる室内と419リッターの中型セダン並みのラゲッジスペースを獲得。しかもリアシートは2段階でリクライニングする上、ラゲッジにはゴルフバッグを3つも積めるそうで、担当デザイナー曰く、「途中、ホイールベースはアウトランダーと共通なまま、リアのオーバーハングを100mmも削れ」と言われて苦労したとか。実際、リアコンビランプを見ても限られた厚みの中で、苦心して立体感を演出しているのが伺え、相当な会心作と見受けた。そして担当デザイナーは「光りと影を上手に使って頑張ったんですよ（笑）」と語ってくれた。