A3スポーツバック試乗。まさに横綱相撲

1.4TFSI

質感や走りはさすがの"アウディ味"

エクステリアでもA3はグリルやヘッドライトの内部にいたるまで、いちいち精密で鋭利な造形のディテールは、ゴルフより明らかに手間とコストがかかっている。それがさらに顕著なのがインテリアで、有機的な形状で手触りのいいダッシュボードのみならず、細かい部品がどれも複雑で凝ったもの。たとえばエアコン吹き出し口も、A3のそれは開閉と方向だけでなく、拡散指向性を調整……と、ゴルフより機能がひとつ多かったりする。そして、オーディオのノブもその他も、お馴染みのアルミ切削加工。最初に触れたときには「これで200万円台かよ!?」と驚異の質感に思えたゴルフも、A3と比較すると、やはりシンプルで大衆的に見えてしまうからさすがだ。

この精緻な内外装仕立てのアドバンテージはゴルフ比だけの話ではない。A3が本来のライバルと目するのはゴルフではなくAクラスや1シリーズ。それらに対しても内外装の高級感は明らかで、単独ではまったく不満のなかったAクラスや1シリーズのコストダウン対策が、A3と見比べるとなんとなく見えてきたりする。

乗り味も、A3とゴルフは微妙だが確実にちがう。ゴルフに対しても、サスチューンやタイヤ選択、そして微妙なトレッド変更（これが最大のキモかも）などで、A3はそこはかとないアウディ味を醸し出す。単純にいってしまうと、A3のほうがゴルフよりハッキリとステアリングの効きが強く、姿勢変化が小さい。

A3と比較すると、ゴルフはゆったりハッキリ荷重移動させてタイヤに頼らない感触で、さらにリヤサスの形式を問わず、明確に安定志向のアンダーステアにしつけられている。A3のほうがステアリングを積極的に切り込んでスパスパとスポーティに走らせやすい。まあ、Aクラスや1シリーズ、あるいはボルボV40を見ても分かるように、昨今の高級コンパクトはA3的な味つけがトレンド。この点でもアウディはしっかりとライバルにキャッチアップしている。