最上級は、ハイブリッド 変わりゆくクラウンらしさ
掲載 更新 carview! 文:川端 由美/写真:荒川 雅臣
掲載 更新 carview! 文:川端 由美/写真:荒川 雅臣
走りの面では格段に進化したクラウン・ハイブリッドだが、実はメカニズムの解説をするときに「新開発」「新型」といった言葉は必要ない。誤解を恐れずに言えば、シャシーは先代からキャリーオーバーであり、先代の後期に追加になった296ps/37.5kgmを発揮する3.5リッターV6エンジンに200ps/28.0kgmのモーターを組み合わせるハイブリッドシステムはレクサスGS450hと同じである。
それは決して悪い意味ではない。ゼロクラウンという優れたベースを「新開発」して使いこなしきれなかった先代と比べると、今回のクラウンは「熟成」させたことによって、素性の良さを充分に生かしたクルマに仕立て上げられている。
実は、ゼロクラウンに乗ったときにも完成されたセダンだと思ったのだが、今回のクラウンでは、乗り心地のわずかな荒さや、わずかな振動といったネガがキッチリと消されている。その結果、ハイブリッドを云々する前に、“スムーズによく走るいいクルマ”に仕上がっている。
特筆すべきは、静粛性の向上。ハイブリッドではエンジンが停止して無音の状態があるがゆえに、ワイパーの作動音や風きり音など、エンジン車では気づかないような小さな音まで視野に入れて遮音しなくてはならない。13代の歴史の中で常にNVHに優れることを追求してきたクラウンなら、なおさらだ。
具体的には、フロアトンネルに吸音材を敷き、制振塗料をフロアに塗布し、プリウスでも採用されている吸音シートをウインドーに挟み込むなど、細やかな努力を積み重ねている。一番の驚きは、ハイブリッド特有のエンジンのこもり音が異例に低いことだ。クラウン・ハイブリッドにはタコメーターが備わらないため、具体的な回転数はわからないが、トヨタのハイブリッド車は3000rpm付近でエンジンのこもり音が生じるのが通例だ。ハイブリッド車では、どうしても発生してしまうノイズに対しては、逆の波形を持つノイズを作り出すことで打ち消すアクティブノイズコントロールを採用している。一方で、ボンネットやフロントサスペンションの一部にアルミ材を採用し、レーザー溶接によって構造を簡略化するなど軽量化に余念がない。
パワートレーンもGS450hと同じだが、制御系がアップデートされており、アクティブステアリング機構の「VDIM」、駆動力を制御する「DRAMS」、路面状況に応じて減衰力を変化させる「NAVI-AI-AVS」といった車両制御技術を統合して使いこなしている。クラウンのような高級車では車内で大量の情報がやり取りされている。アクセルや操舵といったドライバーの動きやセンサーからの情報が常に行き来しているが、クラウンでは情報の交通整理をしっかり行った結果、得られた情報に素早く対応してクルマの姿勢を制御することができるようになったのだ。たとえば、「VDIM」はよりスムーズで自然な姿勢制御が可能になる。GS450hでは8段階だった「NAVI-AI-AVS」も、クラウンハイブリッドでは9段階に可変の幅が広がっている。
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