「AMG」ってどんなブランド？ 最新「GT63S」で思い出す名車中の名車「190E3.2」はなぜ世界を魅了したのか

AMG歴代モデル

190EにEクラスの3.2L直6ユニットを搭載

日本では1988年にAMGジャパンが正式に発足し、AMGコンプリートカーおよび各種アイテムの正式供給が開始された。

最初にリリースされたAMG 190E3.2は、エンジン本体はもちろん、エクステリア、インテリア、シャシーに至るまでAMG流儀で仕上げたスペシャルなメルセデス・ベンツだった。

当時すでに「190E」には、ツーリングカー参戦を前提としたスポーツモデル「2.3-16」が存在し、AMGもワークスチームとしてDTM（ドイツ・ツーリングカー選手権）に参戦していた。

しかし190E3.2は、サーキットでの勝利を目指した2.3-16とは異なる存在だった。大排気量による圧倒的なパワーを武器に、ストリートユースの王者を目指していたのである。

コンパクトかつ軽量な190Eのボディに、ふたクラス上の3.2L直列6気筒エンジンを搭載した190E3.2の速さは鮮烈だった。このパワートレインは「300E」用3.0L直列6気筒エンジンをベースにボアアップして排気量を拡大したもので、各部を完全調律し、最高出力234ps／最大トルク317Nmを発生していた。

発進時から6000rpm超まで一切の淀みがなく、まさに生粋のスポーツユニット。ドライバーの右足に忠実に反応し、意のまま、いや期待以上の速さを見せた。

このパワーを受け止めるサスペンションやブレーキも秀逸で、高速道路でもワインディングロードでも、まさに無敵といえる痛快な走りを実現していた。しかも神経質なところがまったくない。

オリジナルの美点はそのままに、圧倒的なパフォーマンスをプラスしたキャラクターは、まさに異色。プライスタグは1170万円。

当時、ポルシェ「911カレラ」を大きく上回るその価格にも痺れたが、それ以上に「走り」に痺れた逸品だった。現在のAMGの原点といえる存在である。

（終わり）

（写真：koensha、メルセデス・ベンツ、メルセデスAMG）