NSX一般公道試乗。見えてきた美点と欠点、販売問題も
掲載 更新 carview! 文:岡崎 五朗/写真:望月 浩彦
掲載 更新 carview! 文:岡崎 五朗/写真:望月 浩彦
先進的なコンセプトが評価される一方で、セクシーさとかオーラとか刺激性とか、そういった感覚面での突き抜け感が足りないよね。多くの人がそう感じていたことをホンダは百も承知だったのだろう。新型NSXの本格度は、初代と比べて段違いに引き上げられた。レジェンドのパワートレーンを使うことが前提だった初代はウェットサンプのV6エンジンを横置きしていた。それに対し新型はドライサンプ式の専用3.5L V6ツインターボユニットを車体中央の低い位置に縦置きした。エンジンに次いで重いハイブリッド用バッテリーもシート背後の低い位置にレイアウト。低重心と低ヨー慣性モーメントへのこだわりはハンパじゃない。マニアならこの段階で頬が緩むに違いない。
こうした本格的レイアウトにより生みだされたのが、いかにも運動神経がよさそうに見えるエクステリアデザインだ。全体的にグッとクラウチングした姿勢は止まった状態でもスピード感を伝えてくるし、四隅で踏ん張っているタイヤは運動性能の高さを伝えてくる。ドア後方の、いかにも「よく冷えそう」な場所に置いたインタークーラーや、ボディサイド面の空気の流れを整える効果があるというフローティングピラーもカッコいい。フェラーリやランボルギーニと比べて個性がないとか上品すぎるという意見もあるようだが、あのマクラーレンでさえ最初はそう言われていた。さらに言うなら、フェラーリをはじめとするどのライバルにも似ていないのは素晴らしいことだと思う。たとえホンダのバッジがついていなくても(北米ではアキュラだが)、ホンダ車であることがわかるサラリとした佇まいは、「新時代のスーパースポーツ体験」というコンセプトを見事に表現していると感じた。
今回の試乗会の舞台は神戸周辺だったが、お洒落な街並みにNSXはとてもよく似合っていた。きっと青山や横浜でも同じ感想をもっただろう。他のスーパーカーのようなおどろおどろしさがない分、肩肘張らずカジュアルに乗りこなすことができ、それでいて“特別感”をさりげなく、しかし強くアピールするあたり、かなりのお洒落上手である。とはいえ、実際のところ街中での実用性が最悪であることは後述する。
インテリアもサラッとしている。フェラーリのように、ホーンボタンやウインカーをステアリングホイールに組み込むようなトリッキーなことをしていないから、乗り込んだ瞬間からほとんどの機能を直感的に操作できる。ボタン式シフトセレクターも最初は戸惑うが、慣れてしまえば問題なしだ。とはいえ、さすがにステアリングホイールのデザインにはもう一ひねり欲しいなと思った。形状や操舵感に不満はない。組み込んだスイッチ類の操作性も上々だ。それだけに、黒一色ではなく、たとえばシート色とコーディネートしたバージョンを選べるようにすれば、上質感や色気のアピール度はグンと上がるだろう。
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