乗り心地改善!? 広さは? CX-90に米で乗ったら新型3列SUV CX-80の姿が見えてきた
掲載 carview! 文:工藤 貴宏/写真:工藤 貴宏 68
掲載 carview! 文:工藤 貴宏/写真:工藤 貴宏 68
「CX-90」というクルマを知っている人は、よほどのクルマ通かマツダファンに違いない。
マツダが北米をメインマーケットとして開発したSUVで、4モデルある同社の「ラージ商品群」のうちの1台。ラージ商品群は、エンジンを縦置きにする後輪駆動ベースのプラットフォームを使うのが特筆すべきポイントで、参考までにラージ商品群のほかの3台は、日本で販売している「CX-60」、北米で発売予定の「CX-70」、そして日本で発売予定の「CX-80」だ。
その4モデルを分類すると、2列シートモデルが“60”と“70”で、“80”と“90”は3列シートのロングボディ。日本などをマーケットとする“60”と“80”は全幅1890mm(“80”に関しては未公表だが“60”と同等になると考えるのが妥当だろう)のナローボディなのに対し、北米向けはワイドボディで“90”では1994mmとなっている。
つまりCX-90は、北米向けのワイドかつロングボディの3列シートモデル。ラージ商品群のなかでももっとも大きなモデルである。
CX-90の日本導入予定は一切ないが、マツダ車を愛用する好事家としては、一度は乗ってみたいもの。そんな純粋な好奇心から、実車に乗るべくアメリカ・ロサンゼルスへ向かった。主な目的は「CX-60との違いを確認し、またCX-80を予測するため」だ。
ロサンゼルス空港近くで対面したCX-90の第一印象は、とにかくデカい!
全長5100mm×全幅1994mmもあるのだから当然と言えば当然なのだが、CX-60を愛車としているボクとしてもかなりのボリュームに感じられる。
いっぽうで側面はワイドボディ化のおかげで抑揚が増し、グラマラスなボディになっていることを実感。CX-60オーナーとしては悔しいけれど、車幅の制約から解放されたCX-90のほうがセクシーだ。
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同時に感じたのは、CX-90は伸びやかだということ。これは「CX-5」に対する「CX-8」も同じなのだが、ロングボディ化(ホイールベースも伸びている)した3列シートモデルのほうが、キャビンが長くボンネットとのバランスが取れているように思える。
CX-5やCX-60はいわゆる「ロングノーズ×ショートデッキ」であり、それがスポーツカーにおいては黄金比のようなものではあるけれど、SUVとなると話が違ってくる。伸びやかなほうがプロポーションとして美しいとボクは思う。おそらく、まだ見ぬ日本向け3列シートのCX-80も、CX-60に比べると大幅に伸びやかで美しいプロポーションとなることだろう。
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乗り込んで驚いたのはインテリアの作りだ。まず、ダッシュボードがCX-60と同じものを使用している。CX-90の先代に相当する「CX-9」では、CX-5やCX-8とは異なる設計のダッシュボードだったからCX-90もそうかと想像していたら違った。それはつまり、CX-9以上に、日本向けモデルとの共通設計部分が多いことに他ならない。
参考にAピラーの左右間距離やドアノブの左右間距離を測ってみたところ、CX-60と同じだった。とういことは、ワイドボディのCX-90でも室内幅はCX-60と変わらない(側面の外販パネルだけが張り出している)と考えられる。
とはいえ、実はトヨタ「カローラ」やスズキ「スイフト」などでも全幅が異なる国内仕様と国外仕様はそういう作り分け。だからそれ自体は特段驚くようなことでもないし、北米の人たちが気にするのは見た目のサイズ感であって、求めているのは室内幅ではないということなのだろう。
いっぽうで、CX-60に対してアドバンテージと思えるのは2列目の広さだ。CX-90の1列目と2列目(スライド最後部時)の距離はCX-60より160mmも広く、そのぶん2列目に座ると膝まわりがゆったりしている(CX-5に対するCX-8も同じ)。開放感や広々感はなかなかだ。
3列目に関してはCX-8と同等の着座感(ミニバンほど広くはないが大人も座れる)であり、いっぽうで3列目を畳むとCX-60よりも広いラゲッジスペースを確保できるのも魅力と感じた。
ただ、視点をCX-8オーナー目線に変えると、ひとまわり車体が大きなCX-90でも1列目から3列目までの長さはCX-8とほぼ変わらないのが興味深いところ。もちろんこれは今後登場するCX-80でも変わらないだろう。
CX-80の車体はCX-8に対して全長が伸びると予想されるが、室内(長さ方向)のスペースはほぼそのままで、エンジンルーム長が伸びることになりそうだ。
気になる走りはどうか。
CX-90のパワートレインはガソリンもしくはプラグインハイブリッド。前者は日本向けには展開のない3.3Lの直列6気筒ターボで最高出力は284psもしくは345㎰、後者はCX-60と同じ2.5L 4気筒自然吸気+大型モーターとなっている。
今回の試乗車はプラグインハイブリッドだったが、味付けはCX-60と同様で、(EVモードを除けば)モーター感はほとんどなく、パワフルなガソリンエンジンを積んでいるような感覚だった。ハイブリッドながらそれを感じさせない、トヨタ「クラウンクロスオーバーRS」やレクサス「RX」のようなフィーリングだ。
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システム出力は327psで最大トルクは500Nmと感覚的には4.0L V8自然吸気エンジンレベル。アメリカの人たちにとってもハイパワーエンジンのようなドライバビリティが好まれるということなのだろう。
今回の試乗はハイウェイを中心に1000キロほど走って、実燃費が平均11.6km/Lほどだった(バッテリーは受け取り時に約90%だったがそれ以降の外部充電なし)。
日本人の感覚では「ハイブリッドカーとしては優れた燃費ではない」となるかもしれないが、現地の人にとっては「V8自然吸気エンジン並みのパフォーマンスを考えればかなり燃費がいい」と判断するのが自然だろう。北米ではググッと加速するパフォーマンスも重要なのだ。
>>秋登場、マツダの頂点「CX-80」の完成度は北米向け「CX-90」がヒント
ハンドリングは、ワインディングロードを走るとスポーツカーかと思うほどキレッキレのCX-60に対しておおらか。とはいえ旋回時のつながりもよく、曲がるときのライントレースも正確だから気持ちよく走れる。マツダらしく、ドライバーが楽しめる味付けだ。
そんなチューニングの違いには、単にボディがサイズアップしているのみならず、北米仕様ゆえにオールシーズンタイヤを履いている事情もある。それにあわせたサスペンションの味付けとなっているのだ。
動的評価でいえば、マツダのラージ商品群といえば何かと話題の乗り心地も、CX-60より優れていた。
たしかに路面段差を通過した後には乗員にそれなりの入力があるが、CX-60と違って収束がよく車体の上下動の収まりが良好。乗員が揺さぶられる感覚は大幅に減少している。そこにCX-60との大きな違いを感じた。
これもオールシーズンタイヤにあわせたサスペンションが影響している面もあるが、このプラットフォームやサスペンション構造に対してチューニングの新しい糸口を見つけたのではないかと感じた。何が言いたいかといえば、CX-80では乗り心地が大きく改善される兆しが感じられたのは大きな収穫だった。
>>本当に硬い? CX-60の乗り心地、デビューから半年経ってユーザーはどう評価した?
というわけで今回試乗したCX-90は、将来的に日本で発売するCX-80と共通設計となる部分が多く、つまりはCX-80のヒントが多く隠されているということになる。どうやら室内の広さ(長さ方向)はCX-8と同等となり、乗り心地に関してはCX-60に対して改善されているのは間違いなさそうだ。
ちなみにCX-80の日本デビューは、噂によると当初のスケジュールよりも少し遅れて来年前半となりそうな気配だ。
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