航空機造りから生まれた Saab 9-3のニッチな魅力

輸入車ならではの歓びが濃厚

最近の輸入車市場は、ドイツのメジャーブランド以外、さっぱり元気が無い。フランス車もイタリア車も全般に低調だし、それ以外の国のクルマとなると、ハッキリ言ってからっきしだ。

要するに、冒険しないということである。製品としての完成度に加えて世間の目という観点でも信頼感、安心感があり、ついでに将来の下取り価格も安定しているブランドにばかり皆の目が向いている現状は、仕方無いこととは言え、ちょっと寂しい。輸入車の楽しさには、その国ごと、ブランドごとの個性を楽しむという面もあるはずなのに…。もっとも、それはある時期皆が一様にプレミアムを謳い出し、グローバル化あるいはドイツ車化して、個性を薄めてしまったことも原因ではあるのだが。

そういう意味で新しいサーブ 9-3は、輸入車ならではの歓びを濃厚に味わわせてくれる1台と言える。伝統をベースに現代的な解釈が為されたスタイリングには周囲をハッとさせる魅力があるし、その走りっぷりも、それこそドイツ車などから乗り換えても不満を感じさせない性能に、サーブならではの明快な味まで備わっていて、とても満足度が高い。ドイツ車の次の選択として候補に挙げる価値も十分ある。

何年か乗って買い替えるまでのコストパフォーマンスは未知数だが、そもそも買う時から次の買い替えや下取りを考えるクルマ選びなんて味気ないというもの。他では味わえない世界を満喫することや、ともに過ごす時間の濃密さこそを選べる人には、9-3はきっと悪くない選択になるだろう。

余計な心配はしなくても、案外こういうクルマこそ、手に入れたら結局は長く付き合うことになる気がする。この時代にコレを選び、そんな風にクルマと付き合える人は相当カッコ良いと思うし、きっと幸せに違いないはずだ。