豊田会長が石破首相に打診した“衝撃の提案”の真意。なぜ識者は「トヨタはトランプよりも交渉がしたたか」と語るのか
掲載 carview! 文:ピーコックブルー 70
掲載 carview! 文:ピーコックブルー 70
前出の業界関係者は「米国の自動車メーカーのクルマを、トヨタの販売店で売る」という提案について、「一見するとかなりアクロバティックな提案にも思われますが、トヨタのしたたかさが感じられる」と話します。
「もし仮に、タンドラやタコマのような米国向けのトヨタ車を輸入したとしても、実際の貿易収支に与える影響は軽微であると思われます。
そのため、場合によっては、トランプ大統領に向けた単なるパフォーマンスととらえられてしまうかもしれません。
一方、トヨタの強力な販売ネットワークを米国の自動車メーカーが間借りすることになれば、日本のユーザーのほぼすべてがターゲットとなることから、貿易収支に大きな影響を与える可能性があります。
ただ、米国の自動車メーカーのラインナップを見る限り、日本のユーザーのニーズを満たすものはほとんどありません。
というのも、米国内における『大衆車』の役割は、長らく日本メーカーのモデルが主に担っており、米国の自動車メーカーはより『米国らしいクルマ』へとシフトしてきたからです。
つまり、そうしたモデルをトヨタの販売店に並べたところで、実際にはほとんど売れないと思われます。
かといって、今期で退任することが濃厚なトランプ大統領のために、わざわざ日本向けのモデルを新規開発するとも思えません。
ようするに、トヨタの販売ネットワークを米国の自動車メーカーに開放したところで、トランプ大統領の望む結果が得られる可能性は限りなく低いということです。
一方、トヨタは日米双方の政府に恩を売ることができます。
こうした取り組みが実際におこなわれるのかは定かではありませんが、話がどのように進んだとしても、トヨタにとっては一定のメリットがあると思います。
そういった意味では、今回の提案はトヨタのしたたかさを感じるものと言えます」
「トランプ関税」により、日本の自動車産業には数兆円規模の損失が発生すると言われています。
対策のひとつとして、日本の自動車メーカーのいくつかは、米国内での生産を強化する方針を示しています。
ただ、米国の人件費は世界トップクラスであるため、米国生産を増やせば単純に利益が増えるというものでもありません。
こうした状況のなかでは、官民が一体となって対策を講じる必要があることは言うまでもありません。
トヨタによる今回の提案が、日本政府の強力な「切り札」となるのかどうかに注目が集まります。
>【北米で生産】トヨタが“逆輸入”するかもしれない人気モデルとは?
(終わり)
(写真:トヨタ)
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