レクサスIS試乗。日本の高級車は変わるか？

IS300h Fスポーツ

レクサス・ダイナミック・ハンドリングシステム

Fスポーツは250や300hにも用意されるが、350Fスポーツが特権的に備えるのがLDH（レクサス・ダイナミック・ハンドリングシステム）だ。ギヤ比可変ステアリング（VGRS)に加え、状況に応じて後輪操舵（DRS）を行うことで高速走行時の安定性とワインディングロードなど中速走行時の軽快なステアリングを両立した、というのが謳い文句だが、その味付けは高度に洗練されている。VGRSとDRSを組み合わせたとなると、さぞかしクイックなハンドリングだろうと思うかもしれないが、さにあらず。ISのLDHはクイック感のためではなく、ドライバーの思い通りの旋回特性を実現するために使われている。逆に言うと、付いていることをほとんど意識させないぐらいの自然さなのだ。

ではなぜ付いているのか？　そんな質問に対する古山チーフエンジニアの回答は「イメージとしては3.5LV6エンジンの重さをキャンセルする程度の味付けです」というもの。たしかに、コーナー入り口やS字カーブの切り返しでも、350Fスポーツは鼻先の重さを感じさせない。2.5LV6を積む250や2L直4ハイブリッドを積む300hと比べてみて、はじめて有り難みを理解できるデバイスだ。

3.5LV6はパワフルかつ滑らかに回る。サウンドも気持ちがいい。8速ATのシフトマナーもよく躾けられている。最新のZF社製8速ATあたりと比べてしまうと、変速スピードはもっと速めたいし、トルコンのロックアップ領域をもっと拡げたい。けれど、250の6速ATと比べれば、間違いなくエンジンの美味しさを引き出している。むしろこのパワートレーンの問題は10km/Lという燃費の悪さだろう。ほぼ同じパワースペックのBMW535iは13km/L、メルセデス・ベンツE350は12.4km/Lに達している。本来、日本車が得意とする日本の燃費モード（JC08)で惨敗を喫しているのなんとも残念な部分。2.5LV6と6速ATを組み合わせた250（11.6km/L）にも同じことが言える。ハイブリッドの開発に経営資源を集中してきた結果、ドイツ勢にエンジン開発で後れをとったツケが回ってきているのが現状だ。